生存 96 日目 天候:晴れ
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(何も食べずとも力が沸いてきます)
欧月(549) は言った
欧月「見てくれて有難う。……かけがえのない感謝を、「あなた」に。」
竜斗(771) からメッセージ
竜斗「思えば、欧月さんと組んだので始まった気がしないでもないな(笑」
竜斗「とても楽しく過ごせたよ……それじゃ、またね」
アフロなみるちゃん(1407) からメッセージ
アフロなみるちゃん「きっとどこかでお会いするのです☆
みあん(1525) からメッセージ びすけっともんすたー(222) から ギフト15000 を受け取りました。 竜斗(771) から ギフト9699 を受け取りました。 かごめん(1573) から ギフト29017 を受け取りました。
銃器作製 を訓練しました。(CP- 72 ) |
叫び声が聞こえる 蚰蜒(5) のシャウト! 蚰蜒「まぁ、なんだ、最後まで悪の華にもなれず、 救世主にもなれずに…半端者で悪かったな。」
いこま(10) のシャウト!
黒野(20) のシャウト!
イシュトル(21) のシャウト!
昼寝部由乃(50) のシャウト!
サファリング(52) のシャウト!
激☆蛸愛好家(56) のシャウト!
ロイド(71) のシャウト!
ベリー(74) のシャウト!
キュレス(88) のシャウト!
レイファス(116) のシャウト!
フェリン(134) のシャウト!
ハイン(143) のシャウト!
アーティ(150) のシャウト!
“鬼角”クシラ(159) のシャウト!
蒼悟(172) のシャウト!
アザミ(203) のシャウト!
カイゼル(208) のシャウト!
リーゼントなフル(221) のシャウト!
リーク(225) のシャウト!
スティード(255) のシャウト!
准尉さん(265) のシャウト!
ニャゴ(269) のシャウト!
あど(288) のシャウト!
りんご(306) のシャウト!
アフロなラディ(347) のシャウト!
みかん06(352) のシャウト!
禍を断つ業斧(353) のシャウト!
TiA(403) のシャウト!
一人と一匹で一人前(412) のシャウト!
ゆぅ(415) のシャウト!
ラディア(449) のシャウト!
由布(481) のシャウト!
リィル(492) のシャウト!
ランス・・・?(504) のシャウト!
欧月(549) のシャウト!
ミルワ(551) のシャウト!
Rs(ライズ)(552) のシャウト!
妖精さん(577) のシャウト!
あでんこo(585) のシャウト!
風真(595) のシャウト!
サトム(601) のシャウト!
遙(612) のシャウト!
雪(627) のシャウト!
ピープー(660) のシャウト!
きぃ(702) のシャウト!
シース(718) のシャウト!
ルウ(761) のシャウト!
るんぱ(774) のシャウト!
ウィル(775) のシャウト!
カナデ(796) のシャウト!
ピュセル(805) のシャウト!
Ivy(817) のシャウト!
ハル(819) のシャウト!
テラ(820) のシャウト!
シオン(821) のシャウト!
愛謝(826) のシャウト!
エレニア(838) のシャウト!
ごま(845) のシャウト!
疾風(886) のシャウト!
桂(906) のシャウト!
天神(made羊)(918) のシャウト!
プリム(926) のシャウト!
ラフィー(1022) のシャウト!
しおりん(1034) のシャウト!
歌姫カルラ♪(1040) のシャウト!
ラウラ(1056) のシャウト!
グレイ(1123) のシャウト!
精霊使いノア(1136) のシャウト!
五月野(1160) のシャウト!
キル(1174) のシャウト!
ルピ(1175) のシャウト!
まさじ(1190) のシャウト!
スピナー(1206) のシャウト!
リアラ(1212) のシャウト!
銀(1220) のシャウト!
ちこり(1240) のシャウト!
長老(1270) のシャウト!
いりえ(1288) のシャウト!
セイハ(1307) のシャウト!
エリン(1389) のシャウト!
リヴ(1418) のシャウト!
みーか(1493) のシャウト!
フェリア(1523) のシャウト!
みあん(1525) のシャウト!
ツヴァイ(1532) のシャウト!
棗(1550) のシャウト!
ブゥ@進展美(1555) のシャウト!
かごめん(1573) のシャウト!
ナナイ(1584) のシャウト!
アレナ(1586) のシャウト!
イッシュ(1621) のシャウト!
ものかきさん(1638) のシャウト!
幽(1701) のシャウト!
風鬼(1769) のシャウト!
リン(1813) のシャウト!
野良兎らぴ(1820) のシャウト!
“永遠に咲く花”ジュディス(1849) のシャウト!
フェティ(1925) のシャウト!
ふうちゃん(1993) のシャウト!
オフロなイカちゃん(2013) のシャウト!
『虹』の射手(2014) のシャウト!
呪夢(2053) のシャウト!
リトピン@逆モヒカン(2071) のシャウト!
にゃんぷる(2077) のシャウト!
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創られた幻の島が、強い光を放ちつつ少しずつ消えていきます。 唯一残るのは島の本当の姿、小さな、ひとつの島。 そして貴方は想います、これからの自分の居場所・・・ レスタト・正門前 夢はいつだって甘美ではなかった。 けど、甘美でないものは必ず夢ではなかった。 ほら、今も全然甘美じゃない。――だから、現実。 夢はいつだって悪夢だけれど。 おー「――――っ!」 目を開いたら、綺麗な夜空が広がっていた。 おー「び…っくりしたぁっ」 変な夢を見た気がする。 夢にしては妙にリアルな、それ。未だ寝呆けている頭を振って地平線を眺めた。 腹筋の力で体を起こすとそこは見慣れた…景色。 海と空。 まだ暗い青。暖かい暗さだ。 何も変わらない高い空を見上げて状況を整理しようと頭を捻る。 ああ…そうだ。 変な光…リトルグレイっていうのと戦って、何も出来ずに負けて、……それから? 辺りの人の気配が希薄だ。それにまだ日の出には程遠い。……歩いてみよう。 それから感じて。 私を包む96日目の、朝を。 しんと静まり返る空気を。 だって…… まどろみの中で優しい声を聞いた気がした。 ――皆さんに謝罪致します。彼に広めさせた噂、宝玉の伝説は……全て偽りです。 ……宝玉伝説とか、どっちかっていうと興味無かったな。 知らない間にこの島に来て、とりあえず生きていこうって銃作ろうとして… いつからっだっけ、宝玉が側にあるのが当たり前になったのって。 遺跡の中、迷って、でも……そっか。 りゅーとさんと行動するようになってからだ。私の世界が広がったの。 銃が作れるようになって、奪われて、跪いて、たくさん泣いたっけ。 ……なんで私、過去形で考えてるんだろう。 ヤだな… 足元の石をかつん、と蹴飛ばしてまた空を見上げる。 あ、流れ星。昔…この島で同じように一人で流れ星見た日もあったっけ。懐かしいな。 ――想い描いてください、貴方の帰る先を。 この島の探索を続けるのならこの島を、そうでないのなら貴方の望む場所を。 私の…帰る先? 島の秘密には興味は無い。だから、探索する事も無い。 いや、迷う事なんて無いはずだ。 レスタトに…帰らないと。 この島にやってきたのは3ヶ月前。難破した船はどうなっただろう。 きっとみんな心配してる。 ご主人様も奥様も。……そうだ、それから、風のようなあの人…は心配してないかもしれ ないけど。 今までしていた生活に戻るだけ…戻らなくてはいけない。 私は、サフィスト・ジーンじゃない。欧月だから。 欧月である以上、私は…あの家のものだ。 ……少し躊躇っている自分が嫌になる。 東の空が少しだけ光を放ちそうだ。そうすれば日の出は一瞬で終わる。 ……そう、この島で見る最後の朝焼けだ。 思い出した。――今日は朝焼けを見る日だったんだ。 いつもいつも見ていた朝焼け。 月も星も私の手には届かない。 「あの日」にみた朝焼けを思い出す。 あの時も独りだった。…慣れてしまった? 潮の香に惹かれるように海に出た。 相変わらず希薄な空気だ。 砂を蹴る。埋め込まれる。足を引いて抜く。 単調な作業は思考が巡るから、こういうときは嫌い。 ……自分に何があるかとか、そんなことはわからない。 でもそういうのは関係ないんだと思う。 甘えてちゃだめだ。 例え、私が帰った先で欧月の名を剥奪されていようとも、それは仕方のないことだ。 私はあそこの職人で、あそこで働いている。生かしてもらっている。 その仕事を放棄しつづけたんだから…それは有り得る事だし。 でも。 でも…私は帰らなくてはいけない。 自分が帰りたくないとか、そういう風に思ってるわけじゃないけど、 天秤にかけるような事でもないんだ。 それは義務にも似ている。そんな甘いものでもないかもしれない。 いつも意識しているわけじゃない。不幸と思ったことも無い。 むしろ幸せなんだと思う。 たくさんの戦いがあって、血が流れて。 私は仕える立場なのかもしれないけれど、その中で私たちを護ってくれているお二方。 それは――誓約だ。 海の音は好きだ。 森の香も。 山に響く静寂も、騒がしいほどの平野も。 今まで意識なんかしなかった。 帰るとわかって始めて思い描く――我が家の面影。 波打ち際は変わらず静かだった。 海水は変わらず温かった。 夜が明けてしまえばこの島の…大多数の人にとっての最後の日だ。 出会いがあれば別れがあるのは当たり前で。 ――本来ならすれ違う事も無かった人たちと私はどれだけ巡りあったのだろう? 手持ち無沙汰だった。 …というより、何かしないと落ち着かない。 無意識に指が銃を形作るために木を滑り始める。 砂浜から少しあがって滑らかな木肌に刃をいれて。 そうしてどれだけの時が流れたのだろう。 気がつけば東から眩しい光。 ――夜が明けた。 ホルスターに収めて立ちあがる。 海が表情を変えていく。この風景が好き。 砂浜に視線を落として、行き当たる人影。 あれは…… 近寄ってつついてみる。 別に起こしたいわけじゃないけど。 「う……ん」 素通りできる気にはなれなかった。 「んぅ……ん?」 「あ、やっぱり起きちゃいました?」 「……ああ、欧月さん」 この人は変わらないな。 ……そうか、今までだってそうだったっけ。 意志が働くのかは知らないけれども、時空を越える術を持っているんだっけ。 「あの声がして……気づいたら、周りに皆がいなくって……」 「……そっか」 「あの場所にいた人たちはいるみたいだから皆もここにいるんだろうなって」 「で、とりあえず一人で散策?」 「そんなところですかね」 りゅーとさんの隣にマントを払って腰をおろした。 海が近い。風も。 気持ちは良いけど、訪れるのは沈黙で。 ――何かをもてあますように空を見上げる。 消えていく光。もう少し、夜でも良かったな…なんて。 「空……高いですね」 「そうだね」 「……りゅーとさん、起きて探しに来るかなって」 「うん」 「それで、待ってようかなって思ったんですけど……」 「ごめん、寝てたよ」 「見れば分かりますよ〜、まったく。……フフフ」 「んぁ?」 「初めて会った時とは全く逆ですね、あの時は私の方が遅かったのに」 言葉と共にフラッシュバック。 いつのことだろう?何年も前な気がする。 実際は…たったの3ヶ月前なのに。 思い出が過去になる瞬間。 「ああ、そうだったね。あの時は欧月さんも調子悪かったし」 「じゃあ、りゅーとさんは今調子悪いんですか?」 「いや、これが俺の普通かな。基本寝てたい」 「え〜?何か駄目な人みた〜い」 「駄目な人ですよ?」 「認めちゃダメじゃないですか!?」 「いいんだよ……その方が、自然でいられるから」 「……うん、分かったような気がします」 「何が分かったのか……なっと」 「ま、何時までも駄目な人って訳にもいかないし……ちょっと歩こうか」 「……はい!」 視界に彼がいるのはあとどれくらいの時間なのだろう? 彼が差し出してくれた手を取りながら、そんな事をふと思った。 話した内容は恐ろしくありきたりな、過去の思い出。 未来の道しるべ。 「帰ろうかな……って」 ……余りにも陳腐でありきたりな自分の思考が嫌になる。 これは作られた話じゃない。 そんなに叙情的でもセンチメンタルでも無くて、 涙を誘うような…そんな脚本なんか何処にも無いのに。 「うん、それもいいんじゃないかな」 「そうすれば動物や人狩りに脅えることもなくなる。飢えの心配もない」 「もう一つ付け加えるなら帰る所があるんなら、帰ってあげた方がいい」 ……ほら、ね。 それに。 「……帰る場所」 あれだけ、散々考えて。 どうしてまた考えるんだろう。 そんなに考え足りていなかった?……まさか。 「それに大体、ここに来たくて来たわけじゃないでしょ?」 「……そうですけど」 「だったら、そこにいる人も心配してるはずだよ」 「……そうですね」 「りゅーとさん引き止めるかなって思ったんだけど……あるわけないですよね」 ……もう、自棄になってる。 こんなところも嫌い。 でも、一度流れ始めた流れって止められないから。 ……エルフだってそれは一緒。 「結局最後まで、あまり役に立ってなかったしなぁ。迷惑かけたし」 「いや、そんなこと」 「うん、帰らなきゃ……確かに、向こうでの仕事もほっぽったままだし」 「…………」 「……そんな顔、しないでください。分かってるつもりですから」 「馬鹿だな」 「どーせ馬鹿ですよーだ」 「いや、俺がね」 「……馬鹿ですね」 この空気は、嫌いだ。 いつまで経っても慣れない。 そのくせ、いつまでも胸に刺さるから。 「か……帰るんだったら、ふれあんたちに……挨拶……しないと」 「……うん」 「さ、探さないといけないですね」 「行かないでいい(ぱしっ」 それから、……コントロールが効かない所も嫌い。 どうして、私はいつもこうなんだろう。 「離して……離してください……探して……こないと」 「直接は会わない方がいい、メッセージで済ませばいいよ」 「……どうして?」 「はぁ……今にも泣き出しそうなやつが。理由分かってて聞くなよ」 「……馬鹿ぁ」 ………ああ、もう。 本当に馬鹿で嫌になる。 感情が溢れて、そのくせ思考が冷静なのも嫌だ。 どうして上手く融合してくれない? そのくせ落ち着けばまたいろいろ考え出して、感情がラインを超えてしまう。 泣き止んでも、身支度を整えていても…気は紛れたけれど、痛い目が現実を認識させる。 暮らしていたとき、あんなに多いと思っていた荷物は思いの外少なかった。 きっと、捨てていけるものが多いからだと思う。 「……きゅぅん」 「白蓮…君はどうする?」 足にまとわりついた子犬。 遺跡で拾った私のダックスフント……彼なりに私を護ってくれた。 抱き上げるとくすぐったそうに身をよじる。 「お別れだね。…きっと、この島に居た方が良いよ」 私の我儘でこの子の生を狂わせるのは少し気が引ける。 だから…そんな目で私を見上げないで。 「……ついてくるの?」 小さな鳴き声。……そっか。 ぎゅっと抱きしめて私は彼を足元に下ろした。 ……最後の荷物として。 「さ……終わっちゃいました」 「そっか」 「…………」 「…………」 「あ、あの!」 「……ん?」 「今まで、本当に……本当にありがとうございました!」 「こちらこそ、ありがとう」 何度この台詞を言ったのかもうわからない。 何度かの別れと出会い。 ……初めて出会った時から、ずっと口に出してきた言葉だ。 「……それじゃ……本当に……」 「……待って!」 そこからは展開がめまぐるしくて、少し呆然とした中で進んだ話。 「うん、俺も……行っていいかな……な〜んて」 「いや、何となくさ……見ておきたいんだ」 「私の居た所を……ですか?」 ……見たことも無い、私の世界を? 「そ、欧月さんのいるイメージを想い描けばいけるでしょ」 行けない気がする。 ……というか、行けなかったらどうするつもりなんだろう。 私に経験が無いからわからないけど、……時空ってそんなに優しいものじゃない気がするのに。 「あ〜、もう!飛ばされて欲しくないから言ってるんですよ!」 どうしてわからないかな。 結局のところ、そこまで強い拒否は…出来ない。 意志は自由だからね。 でも…… 「知りません!もう行きますから!」 陣と祈り。 私の周りを白く焔の円陣が取り囲む。 ……ああ、黎皇か。……悪いものじゃないんだよ。 そして、眩い光。 「折角だから、一緒に行こう」 私の手を掴んで、言う事はそれだけ。 ……もう、意味わかんない。 「ゲートさえ開けばいいんだ。連れてってよ、欧月さんの世界に」 そこからは、光の奔流。 眩暈がする。 最後に小さく見えた……孤島。 サヨナラ、なんて…… この景色が私のすべてだとして どれだけ叫べば私が伝わるのだろう これほど美しくも広くも醜くも狭くも無い 私のすべてをどうしたら残せるのだろう 波は足元で砕けていくけれど 心はあの時からずっとあの海に縛り付けられたままだ 時は有限であることも 自分に鎖がついていることも 世界は外よりも輝いていることも それはすべて甘い甘い夢だった 島の輝き 流血 その全てが サヨナラといえば、消えてしまうような思い出だったら良かったのに 意識がはっきりした時、私は…帰るべき場所にいた。 巨大な屋敷の鉄の門前。…3ヶ月ぶりの我が家。 海と山々に囲まれた、広大な敷地と温もり。 「りゅーとさん、つきましたよ」 「え?」 「ここが……」 「はい、私の住んでいた世界です」 近づけばギィッと反響音と共に開いていく扉。 オート…正確には魔道による認証が行われているらしい。 当主…嵐紫様の反応式が組み込まれているらしい。 『…君には、わからないかもしれないけれどね。…欧月』 今は…わかる。 島で多少なりとも魔道の感覚が上がったから……だと隣で少しカンに触る解説が聞こえた。 後ろで再度閉まっていく門に押されるように中へと進んでいく。 森に囲まれた道。 渡る風。聞こえるぬくもりも全てが懐かしい。 そして、何も変わっていない。季節が巡って、花が咲いて。それだけだ。 森の中のコテージから漂う白煙が目に入ったわけでもないのに、 どうしてだか目を閉じたい気になってしまう。 森を抜ける。辿る道。 小川と清流のせせらぎを追うようにして…ああ、視界がぼやけそうだ。 懐かしい、シャトー。 「ここかぁ……」 「はい、ここに私のご主人様達がいらっしゃいます」 「ほぇぇ……」 「さ、中に入りましょう?」 隣で圧倒されている彼を促す。 気持ちはわかるけれどね……私もはじめてきた時は嘘だと思った。 『ここが、今日から君の家で、君の庭だよ』なんて。 感傷から抜け出して隣に目を移せば何か戸惑っているような表情。 「うん……いいや、挨拶もしてみたいけど」 「え、いいや……って」 「満足したってこと」 「ま、まさか」 「ん、戻るよ」 この人は、いつだって唐突だ。 ……ここじゃなかったら別に構わない。 けど… 思考がぐるぐる巡る中、半ば反射的に返事を返しつづける。 恥ずかしい話とか過去の話題も全て脊髄で反応させて。 思考でなんか考えていられない。――――考えられるわけ無い、あんな話題! ……困った。どうしよう…… 「今入っちゃうと、飛び出していけなくなりそうだし」 ……え……? 「欧月さん……」 「は、はい?……あ」 「ごめん、ちょっと動かないで」 「……はい」 彼の髪が頬にさらりと触れる。 「出来たら、たまに遊びに来るよ」 「……必ず来てください」 「ま、善処するさ」 「何かそんなこといって、こなさそうな予感がしますけど」 「はは……ありがとう、本当にありがとう」 「こちらこそ……ありがとうございました」 「マグノリアさんとアルエ……ノーマさんにあったらちゃんと伝えておくよ」 「な、急に何を?」 「……ちょっと、眼……瞑って?」 「え」 「いいから……」 「ありがとう、またね。サフィスト」 ……その、捨てた名前をっ……!? 「て、あれ?ちょっと…………居ない。これは……」 それを抱えたまま来た道を戻る。 ……通用門へ。正門は走るには遠すぎる。 森を突っ切って隠し扉へ。茂みをかきわけて出た先に広がる一面の草原…… 黒い人影なんて何処にも無い。 辺りが静かになる。 髪を風が揺らした。 島の……残り香が消えていく。 この瞬間、私は世界から切り離された。 時空を越える術の無い私、そしてこの世界。 それに一時だけアクセスし、繋がったあの世界が今…… 駆けるように敷地に飛び込む。 人目につかないように屋敷へ。 ああ、どうしてだか屋敷も静かに感じる。 何も変わっては居ないのに…… 誰かに逢いたかった。 あのお二方でもいい。友人でも、兄弟子でも、師匠でも、 眩しい笑顔のあの少年でもいいし、特別親しかった近衛騎士でもいい。 あの…甘い花の香の人でもいい。 …………誰か。私の居場所はここだって、安心させて――! 閉めた屋敷の扉の内側にもたれかかって荒く息をついた。 ゆるゆると首を上げる。照明がぼやけたようだった。 長く伸びる廊下。 緩く螺旋を描く階段を一気に上りきる。 顔をまっすぐに正面へと向けて歩く。 身体が覚えているシャトーの内部。 階段を上り、角を曲がり…… 懐かしい曲がり角。 左に行けば、私の部屋があるはずだ。この家に仕える専門職の人間が暮らす一角の角部屋。 窓を開ければ、木々が張り出している私の部屋だ。 きっと…住むもののいなくなった部屋は荒れに荒れてるんだろう。 右に行けば…… すれ違う人々が、驚いた顔で私を振り返るのが分かった。 でも、…私は振り返っちゃだめだ。振り返ったら… 「ねぇ、今の…」 「嘘!?だって、船は難破して、乗組員は全員死亡って…」 「でも…青みがかった黒髪に金目はあの子だけでしょ…?」 「ホントに?だって…私……」 「……良かったじゃない、あんたがあの子の部屋、今も綺麗にしたげてるってみんな知ってるよ」 「……帰ってきたのか」 「そうらしいです。姿を見た者がいるとかで、噂が…」 「……生きて、いたのか。本当に…」 「言ったでしょう、マスター。彼女は生きているって」 「迎えにいってやりなさい、ヴァトー。…きっと、滅茶苦茶にされるだろうから」 「あなたが行きたいのではないのですか?あなたは彼女にとっての剣の『師匠』でもあるでしょう」 「親方っ!帰ってきたって本当ですかっ!?」 「まぁた、煩いガキが…」 「あ、ひっでー!俺がどれだけ彼女を…」 「そんなことくらいは毎日聞いてるからわかってんだよ! 同じ島に漂流したくせに独りで帰ってきやがって…」 「俺に聞かれたって知りませんよ!…はっ、んなコトしてる場合じゃなかった! 親方ぁーっ!俺、ちょっと行って来ます――!」 「仕込みは!?ちょっと…武流っ!」 「後で3倍やりますからぁぁぁ――…」 「……おやおや、久しぶりに帰ってきてみれば懐かしい風が吹いているようだね。 相変わらず退屈から程遠いようだ…」 「――っ!お前も帰ってきたのか!」 「ああ、覚えていてくれたのかい?ディア。私は…ただの偶然だけれどね」 「…透けてるぞ?身体。わざわざ精神体で来た理由は?」 「ふふっ…ナンセンスな質問だとは思わないのかい? ――こんな面白い一日を私が見逃すはずは無いだろう。…では、またね」 「何処へ…?」 「その質問も同じだ。……サフの元へ。君も来るかい?」 出てきたときと違って荷物は何も無かった。 ほぼ、身一つ。腰の銃がとても重く感じる。 マントを外して腕に携える。 最上階の一際大きな扉の前に立つ。 側近が何も言わなくても、泣きそうな笑みと共に扉が開けてくれた。 光が零れる。 窓の向こうに、海。 部屋の奥の、懐かしい人。 綺麗な二人だと思った。 いつも、思っていた。 けど、今…強くそう思う。 「お前っ…」 「風葵。……ストップ」 驚いた顔で立ち上がり私を見る二人の前に歩み寄る。 慣れているその動作。 跪いて頭を下げた。 彼等は、私がこうやって家臣のように頭を下げる事を厭うけれど、今だけは。 床をじっと見つめる。 声が出てこない。 「………、……欧月、帰りました」 「……そうじゃないだろう」 「…………ただいま…です…嵐紫様、風葵様…」 「お帰り。……聞いても良い話かな?」 「はい……。たくさん……お話したい…事、が……っ」 暖かな光。 陰が視界に指して、ついで訪れる温もり。 抱きしめられた事が分かって、私は顔を俯かせた。 時が…動いていく。 本来あるべき時間へとねじ巻かれていくのがわかった。 けれど、それは同時にあの時間が過去になるということだ。 過去はいつか思い出になって記憶の中へと埋没されていく。 もう、何も……私の記憶と、この銃と…今覚えているだけありったけの島の温もり。 肌についた傷。少し成長した私の背。触れた掌。体の熱。 ベルトの端で揺れる空の色をした飾り。 「欧月っ!……良かった…!」 「…後で、部屋に帰って。誰のものでもないあなたの部屋に。……私たちの気持ちだよ」 あの輝きに比べれば恐ろしく小さな思い出の欠片しか私には残されていなくて、 「……お帰り、欧月」 「ヴァトーも私も…君の帰りを待っていたよ。 いつか君が必ず帰ってくると……」 もう二度と手に入る事の出来ない胸の痛みと、 もう二度と逢うことの出来ない彼等の面影を思い起こして、 「おーげっつさ〜〜んっ!」 「待て、武流――っ!」 「お久しぶりです!…それから、お帰りなさい! 落ち着いたら、俺の料理、食べて下さいね!」 「……お前はまだパンしか焼けないだろうが…… まあ、…俺も腕を振るうからよ」 何も出来なくて、 失ったものが多すぎて、 「……欧月、お帰り。 無事だったんだね、良かった。 君の帰りを誰もが待っていたよ。……勿論、俺もね」 …………理由なんてわからないほど何故か哀しくて、 「……久しぶりだね、元気だったかい? 私も今日帰ってきたよ。……懐かしい姫君が帰ってきたと聞いたものだから、ね」 私は泣くことしかできなかった。 ――すべては華胥の夢。 〜ポストスクリプト〜 皆様、ALIVE終了お疲れさまでした。 本当は長々と書きたいんですが量が足りないので少しだけ。 えー、ハッピーエンドとは少し言い難い最後、 しかもシリアス風味なMAに目を通して頂いて有難うございます。 PLがシリアスやら心情書くのが楽なんです。 久しぶりに竜斗さんのMAと合わせたんですけど、量が足らなかったんで端折りました。 彼のを見ればだいたい同じ会話してますので適当に補完して下さい(最低) や、シリアスとの融合にちょっと手間取りましたが楽しく遣らせてもらいました。 最燃萌トーナメントでも予選を通して頂いて、 素敵な感想も頂戴してとてもうれしかった事を覚えています。 たくさんの人とご一緒させて頂いたALIVE、 皆さんのおかげでとても楽しいものでした。 リアルの都合で途中から携帯での参加になり、 前振りもメッセすらも終わらせてしまい後悔が残ったりしています。 欧月に武器…特に銃を依頼してくださった方々、 MAでいじらせて頂いた数多くの方々 メッセの交換してくださった方々、 こね屋のみんな、 欧月の防具&装飾を作ってくださったレーシェルさん、カマロさん、 途中ご一緒させて頂いたユエさん、ナカルアさん、フレアさんに蓮華さん、 PKKに協力してくださり、また短かったですが護衛もして頂いた黒鉄さん、 トーナメントの相方・ティタニアさん、 プロフイラストを描いて下さった揚羽さん、 そして、最後までご迷惑をおかけし続けた… …というのもおんぶにだっこだったので申し訳ないのですがあえて… 欧月の相方の刃皇耶竜斗さん、 全ての方々に心からの感謝を。 そして画面の向こうでお会いしたすべての方々へ。 本当に有難うございました。 長くなりましたが、それではこれにて。 いつか、時の巡る空間でお会いすることがありましたらその時にまた、 あなたと素敵な物語を紡げたら望外の至福に思います。
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最後に、島内トーナメントおよびキャラクターランキングを実施します。 それらの詳細は 島内トーナメントは こちら キャラクターランキングは こちら を参照してください。
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