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十神十は、友達がいなかった。
高校に入るまでは散々な目に遭ってきた。
幻想想起、シュヴァルツ……まぁ、魔眼が悪さをしていたわけで。
本人が嘘をつくことが下手くそだから、見た記憶を全部バラして嫌われた。
自業自得と言ってしまえば、それまで。
けれどそれでいろいろなものが欠け落ちた。
高校生になって、イバラシティへと引っ越してきた。
今までの自分を嘘で塗り固めて自分は神だと言ってみたら、友達がたくさんできた。
おかげで今では神を自称しないと生きていけない、脆弱な生き物へと成り果てた。
それでも友達は気を使ってくれるから居心地は良かった。
本当に神と思っていなくても、構ってくれるだけで十分だった。
十神十は、友達が大好きだ。
十■■は、■■が■■■■。
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「あぁ、やはりお前は──」 |
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十神 「よしっ、明日は休みだ! 折角の休みだし、どこかに遊びに──」 |
平日が終わって。休みに胸を躍らせた瞬間に、"それ"は訪れた。
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突如激しい痛みに襲われ、一瞬意識が飛んだ、かに思えた。
気絶すらも許されない断続的な痛み。
胸を抑えて必死で息を吸う。吐く度に血液がごぼ、と溢れる。
何が起きたのか理解できない。がくがくと体を震わせて嘔吐を続ける。
血だまりに手をついてどうにか顔を上げた。
──目の前にいるのは、何?
時計台、白い髪の女性。化物。化物。化物。
どうして。どうして、どうしてどうして
どうしてどうして。
息が出来ない。声が出ない。
侵略戦争? 知らない。
アンジニティ? 知らない。
自分はイバラシティでずっと生きてきたんだ。
『仮の住人』って、どういうことだ。
嘘だ。嘘だ。
嘘だ。嘘だ! 嘘だ!!
こんなのありえない。でも、どうして。
どうして、こんなにも痛いのに。
死んでしまいそうなほど痛いのに、意識があるんだ。
こんな状態で生きているなんて、人間じゃない。
俯けば血だまりには"自分の姿"が映る。
頭は割れて、胸のあたりはぐずぐずに爛れていて。
ああ、それを見てすぐ理解してしまった。せざるを得なかった。
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十神 「わたしは、世界に否定された者」 |
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十神 「──そして、侵略者」 |
助けて。嫌だ。友達と離れ離れになる未来が決まっているなんて嘘だ。
一人になりたくない。一人にしないで。
どうすればいい。一人は、いやだ。
痛い。痛い。いたい。いたい、いたいいたいいたい……
いたい? そうだ、わたしは友達と一緒に居たい。
わたしを友達だと言ってくれるみんなと居たい。
──それに。
友達と一緒なら、否定された世界だって、寂しくない。
痛みをこらえてCROSS†ROSEを開く。手当たり次第にメッセージを送る。
誰でもいい。答えてくれたら、きっとわたしの友達。
わたしは嘘つきだからいつだって神を演じるのだ。
そういうメッセージを、たくさん、たくさん。
……あぁ、これはきっとあいつの。こっちは、あいつの。
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十神 「ケホッ……『無事だったら返信してください。連絡、待ってます。』 ……こんな、もの、か……ごほ、うぇ、っ……ハァ……」 |
なんとかなった、だろうか。これでいい。
我ながらナイス演技力。血反吐を吐きながらでも、出来るじゃないか。
わたしがアンジニティの住人であることは、曲げようのない事実。
でも、イバラシティのみんなの為に動けば……
みんなとはきっと友達のままでいられるし、
アンジニティの連中からは裏切者として扱われる。
そうして、侵略が成功してくれたら。
……友達もわたしも、一緒にアンジニティに行ける。
だからわたしは化物と行動を共にするんだ。
侵略行為は、きっとこいつらが全部やってくれる。
わたしは、直接手を下さない。やったとしても、それは事故だ。
一緒に堕ちよう。アンジニティへ。
侵略が成功したら、お父さんもお母さんも、クラスメイトも、部活の友達も、
先生も、街のみんなとも、ずっと一緒に居られる。
友達の中にアンジニティのやつが居たらイバラシティ側につかないか、誘ってみよう。
だって友達は多いほどいい。
でも、相手が侵略を進める気なら……応援、しなくては。
アンジニティが勝ってくれなければ、友達と一緒になれないし。
精々頑張ってもらわないと。
どうか、いつもみたいに名前を呼んでほしい。
──我は十神十。イバラシティ在住、相良伊橋高校二年生。
この前誕生日を迎えたばかりの、17歳の神様です。
見た目は気にしないで。大丈夫。いつものカッコいいコスプレだから。