
「ったく……面倒掛けさせやがって」
造り出した武器を消し一息つく。あのスライムのような存在と戦い、なんとか撃退してそこらで座り込み休憩している。
「しっかし、こうも廃墟ばっかだとテンションも下がるな」
辺り一面を見回しても、どこもかしこも廃墟の山。壊れてない物なんてないんじゃないかと思うくらいに廃墟が多い。
更に言うと、あちこちに生物かどうか疑わしい存在たちが我が物顔で彷徨いている。さっき倒したスライムのような存在たちだ。奴らは時々こっちに襲いかかって来て、その度に異能を使い排除して身の安全を確保する。
この一連の行動だけで体力を結構使うから、一向に進みやしない。本当に腹が立つ。
「まぁ、本当に厄介なのはアンジニティなんだがな。あいつらに見つからなかったらもう少しマシなんだが……」
『アンジニティ』
奴らの存在が行動を著しく遅くしている原因である。
あいつらこっちを見つけたら問答無用で襲いかかって来やがる、しかも戦闘能力は辺りにいる謎生物の比じゃないくらいに強い。正直無視してとっとと逃げ出したいがそう簡単にもいかない。
よって見つかった場合は相手の体力をある程度削ったら隙をついてトンズラしている。
幸い今の所は無事に逃げ切れている、クリエイションで煙幕なり強烈な光なりでなんとか凌いでいる状況だ。
「はぁ……住む場所間違えたかなぁこれ」
日本での自分の居場所がなくなって約一年、ようやく安住の地を見つけれたと思ったらまさかの異種族同士の戦争である。泣いてもいいくらいには酷いはず。
「異能かぁ……」
異能自体棚ぼたな能力だ、こんなの無くても生きていける。
そんな思いがイバラシティに来るまで常々あったが、これだけ長く異能と付き合っていくともう早々無くなればいいとは思えなくなった。はっきり言って便利すぎるのである。
「この力が無くなったら、はっきり言って死ぬよな。それくらいズブズブだよほんと」
ギアチェンジとクリエイション、この二つの異能自信にとって切っても切れないものになったのだ。
「さて、と」
休憩を終わり立ち上がる、そろそろ移動しないと面倒な奴らに見つかりそうだ。
「それじゃ、行くか……」
そう言い終え、廃墟の街を進み始める。
できれば数時間くらい連中と会わなければいいな、と思いながら。
しかし後々、このハザマでの一連の記憶が朧げながらも残ることをまだ知らない。
今回が初のハザマ行きだから当然であるが。