それは、ふとした瞬間に覚えた違和感。
いつも見慣れているものの欠落。
普段そこに在るはずのものが視認できないもどかしさ。
（それを見ていたのは"自分"ではないのに）

気付いてしまえば無視は出来なくて。
彼女の瞼がまだ、眠りの淵にあるのを確かめてから
その手に持つ花弁に色を籠めて
髪飾りを作った。

かの街で己ならぬ娘が贈ったように。





この戦いが終わった時に。
彼女はこの髪飾りを忘れるのだろうか？
自分は彼女のことを憶えていられるだろうか？


少女の
不器用で垢ぬけない笑顔ばかりが
いまは何故か目裏に残って。
いくつもある異形の眼球が痛んだ。

▲	右鞠 「ありゃま、お声だけ―？　んふふ。あっちでした約束があるからね。正直に行きますよ、キミとのお話はねー？」 けらけら、笑う。いつもの声。 「心配ご無用。こういうのは慣れっこちゃんだから、多分小野瀬さんよりも怪我なり何なりはしないと思うよ―♪　へへん」 得意げに、話をしながら。 「んで？　キミは結局どっちだったんだい？　所属は、こっちでも。あっち側ってのがいるのはこの間知ったもんでね。確認だ」 まぁ―― 「どっちにしろ、お話するのには変わらんよ。ねぇ、小野瀬さん。正直に教えておくんなマシ？」 じゃないと―― 「嫌いになっちゃうぞ。あぁ、あと。アッチだからって、嫌いにはならないから。これ、”本当”。ゲッシュ、する。真言ってやつだから、安心してね」 優しい声で――告げた」

▲	ウルガレス 「うわ。めっちゃキャラ変してくんじゃん。面白ぉ～。 　いいね、そういうの。俺も愉しみにしとくから、精々頑張って勝ち残ってこい。 　つーかアンタもアンジなのに無茶苦茶いってくれるねえ。 　なんで？向こうでの生活とか欲しくねえの？ 　大体のヤツはそういう系だと思ってたけど。」

	ウルガレス 「まぁ、どうでもいいんだけどさ。 　向こうでの日々ね。常日頃からメシテロされてる気分？ 　そうそう、関りねえんだよね。俺にとってはテレビ見てるようなもんさ。 　向こうのオレは頑張って生きてるみたいだけど、全部、幻みてえなものなのにな。 　俺が親機であっちは子機。 　情報欲しさに送り込んだ端末よ。その情報も要らねえのが大概だが。 　大体は。 　 　何者にもなれない、モブ以下が頑張って生きてますっての見せられてるだけだからなぁ？」

▲	「君はそちらに着くんだね。……いや、別に責めようってわけじゃない。僕には侵略に加担する理由がある、君には侵略を防ぐ理由がある。本当に、それだけなんだろう。それだけの理由で僕らの道は分かたれ、もう二度と交わらない。悲しいことだね」 言うほど残念そうでもない態度。 「良い戦争の後には成果が残り、勝者がそれを手に入れる。悪い戦争の後には恨みが残り、敗者がそれを手に入れる。……せめて良い戦争ができればいいな」

	「あ、そうだ、もう一件。ミーラさんのこと、守ってやってくれるかい。彼女、酷く傷付いてるだろうから。……その原因の一つがこんなこと言うの、白々しいにも程があるけど」

▲	J.J. 「小野瀬閣下、つながっているでおじゃるか？ 　えぇ……ハザマで十村さんと連絡を取ったのでおじゃるが……」

	J.J. 「アンジニティってマジでおじゃるかー？ 　ハハハ！ 隠し立てせずともよい、よい。 　しかして、どちらによって立つのかな？」

▲	透 「――――………――――……ﾌｰﾝ♪　ﾌﾝﾌ」 ダメもとで何度も何度もかけなおし続けた。 通話状態になったのを見逃すことはなく。 「あっ」

	透 「グッイブニン小野瀬ちゃん！」 「私私、私だよ！　鮎喰です。そっちは大丈夫？」

	透 「なんだかいろいろ大変だねー。こんな悪夢ってある？ 歩けば疲れるし、お腹が減ったりもするんだよ」

	透 「腹ペコ健康優良児の私にはゆゆしき問題！ なので、ここはひとつお役立ち情報をあげようと思います」

	透 「えっとね、果物を拾ったんだよ。大丈夫、腐ってないの。 洋ナシみたいな形をしてて、パッションフルーツみたいな匂いがあるんだけど」

	透 「すっっっごい美味しそうなの！！！」

	透 「食べてみて無事だったら食レポするね。 ダメそうだったら私のこと―――時々でいいので思い出してほしいです」

	透 「それだけ。また連絡するから、君もがんばって！ この街のどこかで会えたら、その時は――――……」

	透 「―――――――……」 最後まで言い切る前に切れちゃった。 でも私、そんなに心配してないんだよね。 「小野瀬ちゃんなら大丈夫。君はしっかりものだからさ」

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