※ ハ ザ マ の 記 憶 ※


～ about.剣野モロバ ～







剣野モロバ。

奴と出会ったのは去年の11月頃だったか。



ガラス工房Galléの店主が倒れ、あの街の俺がその代理として店を始めた時、
最初に来た客が剣野モロバだった。

大魔導師を名乗るその男を、イバラシティの俺は随分と高く評価していた。



その読みは正しかった。

奴は平和な世界では滅多にお目にかかれぬ強者だった。

侍とは違うが、同じように張り詰めた精神性を持つ、異文化の戦士。


今ならば分かる。

あの心胆は異能格闘で育てたものではない。

奴の眼差しや言葉の節々からは、強靭に叩き上げられた鋼の匂いがする。



このハザマでの戦いが終われば、奴とは二度と相見えぬだろう。

ならば、真柄の望みはこの36時間の中にある。





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ここは橋頭堡。

奴は必ずここを通る。



先刻のルネとの戦いでは、心が欠けるような哀と弔を感じた。

魂の底に沈めた仄かな嘆きを、静かに受け入れた。



此度のモロバには、心が煮え立つような喜びと猛りを感じる。

生涯をかけて磨いた武を、あの強者へ叩きつけろと魂が叫ぶ。









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「あいかわらず」


「派手な登場じゃのう、モロバ」






― ハザマ時刻 3:00～4:00 ―

ENo.392 魔人王モロバの日記に続く

▲	サクマ 「あらぁ。そ～だったかしら？ 　ンフフフ、身持ちが固いわねぇ。 　そうでなくっちゃラブを贈る甲斐がないわ♪」

	サクマ 「ええ、ちゃーんと『イバラシティを侵略する立場』ダヨ。 　良いお姉さんは悪いお姉さんになって、 　み～んなペロリといただいちゃうんだ。」

	サクマ 「そういうワケだからぁ 　このゆるーい協定はちゃあんと守るよ。 　ホントのホントに、味方には手を出さないからサ。 　……味見させてくれるなら別腹だけどね？」

	サクマ 「真柄君は侵略に成功したら何かやりたいことある～？ 　私はねぇ、もう一度飴屋さんをやりたいなーって思ってるよ♪ 　真柄君もガラス細工屋さんやるのー？」

▲	モロバ 「……どうあっても侵略行為に乗る意思は変わらねぇみたいだな」

	モロバ 「俺の傍にも、イバラシティで過ごす日をずっと待ち望んでいた奴がいる。 　ガキ以下の頃から、何年も不自由な体だった奴が、 　ようやく今まともに外を歩けてる」

	モロバ 「だからお前らの意思は分からないでもない。 　だからこそ、アイツを咎人に堕とさせるわけにもいかない」

	モロバ 「……聞きたいことは聞けた。 　お前が友を斬れるというのなら、その前に俺がお前の牙を折る。 　――勝負だ、真柄 牛鬼丸 信繁」

▲	――対面した後。 何事もなかったかのようにメッセージが送られてくる。

	「え～ん先輩ったら可愛い後輩予定を何のためらいもなくあんな……ひどいですよぉ～～～」 訂正、若干恨みがましいメッセージが送られてくる。

	「まあ、四の五の言っても仕方ありません。 　次会った時にはきっとやり返してみせますね！」

▲	ヒバリ 真柄の話す間、下を向いたままじっと黙り込んでいる。 やがて、苛立ったような口調でぽつりと漏らす。 ヒバリ 「他人事みたいな言い方、しやがって… 　演技じゃなかったなら…なんで平然とそんなこと喋ってるんスか。」 ヒバリ 「いっしょに戦って…今のまま、いっしょに戻れる方法、探せばいいじゃんっ…。 　お前はそのくらい言い出すし！やってのけるヤツじゃんかっ！！！」 ヒバリ 「お前…一体誰なんスかっ。 　それならっ…あいつが偽物ならっ！！ 　お前が、真柄信の思い出を語るなよっ！！ 　クソ野郎っ！！！」

▲	ライオンハート 「誰が猫バスじゃ！ 　ジブリがドロップス缶持って 　殴りかかってくるレベルだわ！」

	ライオンハート 「つーか、心残り、ねぇ…？ 　あんな幻の記憶に未練みたいなのあんの？ 　まぁ俺サマとしちゃあ有難ェけど」

	ライオンハート 「どいつもこいつも可愛いこねこちゃんに 　やさしいお言葉かけてくれるもんでなぁ。 　やり易いっちゃあありゃしねぇ。 　お前も精々利用すればいいさ。 　折角向こうと同じ姿を持ってるワケだし？ 　不意打ちとかやりやすそーじゃん」

	ライオンハート 「……………………。 　なぁ。」

	ライオンハート 「ライオンハート繋がりで 　ハウルとか貰っちゃダメ？」

▲	貴方の話を一通り聞き終えた後、深いため息を吐く。 「侍…報恩、富と幸福か……。 　自分のためだけに戦ってるわけじゃないんだな。 　…何ていうか、お前らしい。」

	我孫子 「あーあ、こんなの聞かされたら侵略辞めろなんて余計言えないな。 …でもさ、お前が言ったようにイバラシティには”幸福”がある。当たり前に家族がいて、友達がいて、戦争なんて…このワールドスワップに巻き込まれるまで考えたことも無かった。 そんな些細な日常がさ。」

	我孫子 「…だから、僕も手放しで明け渡すなんて事、出来ない。」 ……しばらくの沈黙の後、再び大きな溜息を吐いた。 「…………。 　……お前さぁ、僕と会ったら戦うつもりで連絡してきだんだろ？」

	我孫子 「あぁもう、ほんっと…！取り乱しそう！侍みたいな肝の座り方して！侍だけど！ でもなぁ、お前も知ってると思うけど僕の異能バリアだからな！お互いケガ無しで逃げ切ってやる！ アンジニティ一人にそんなことしても意味無いって、色々破綻してるってわかってるけどな！」

▲	隼田院 「あの街のままというか、あの街の私が私のままなのさ。 　サラウンドいいだろ？音圧と重厚感に酔いしれろ！ 　てかキミはいいよなぁ、変わりなくのびのびやれそうな見た目をしていてさ。」

	隼田院 「おっと！別にキミに治療を頼みたくて言ったわけじゃあないよ。すまない。 　私には主治医の卵がついてるし。」 　ぶよぶよにふくらんだ手らしきものをネトネト振った。 「おや、どうしたよ！滅入ってるのか～！？ 　人にはそれぞれスキルってやつがある。君には武功で役立ってもらうじゃん？ 　すると私はイバラシティに行くじゃん？ 　すると私はカワイくなってるかもしれないじゃん？」 　それからはたとする。 「思えば君の方はマジで役に立たん仲間を持ったな！？」

	隼田院 「これは異なことを！エロい感じになって私は面白かったが！？ 　無論向こうの私もね。におい特効てこっちでも刺さるん？」

	隼田院 「ところで真柄さん！早速役に立ってもらいたいんだけどさあ！ 　チェックポイントってやつ嫌な予感がするんだけどさあ！ 　どうか！どうか友達の顔に免じて！私達を守ってくれよお！！！！」

▲	産姫 「そういう事言うの止めてもらって良い？」

	産姫 「しかし…――なるほど。 　果ての勝利より暮れの闘争を望む、か。 　よもや、人の身のままで否定の幽世まで落ちて来る者があるとは思わなんだが、 　どうやら思い違いではないらしい。 　…其方、最初から荊街の住人ではないな？」

	産姫 「――まぁ、其方には悪いが、此方はどちらかに付くつもりはない。 　此方の役目は”既に済んだ”。 　ここを訪れた時点でな。 　故に、どちらが勝ったとて知りはせぬ。 　陣取り合戦なら好きにすれば良い。 　此方にとっては只の消化試合、歩くのに邪魔な狭間の畜生を蹴散らしているだけに 　過ぎない。 　それを”肩入れ”と呼ぶならそうなのであろうが、 　此方としては最終的に否定されればそれで構わぬ。」

▲	しばらく、思考が停止したように間をおいて。

	一抹 「あ、案内人……？し、知らない知らない！ ボクはそんなヤツ、知らないぞぉ！」

	一抹 「だって……さ……ありえないじゃん……」

	一抹 「ありえないありえない！ 痛いことするって、普段から痛いことはされてるし、してる間柄だろぉ～！ あっ、もしかして前にハンマーで殴ったコト 気にしてんのか～？もぉ～！別にボク、そんなの気にしてないから！」

	一抹 「……」

	一抹 「ねぇ 全部、ウソなんでしょ？！ アンジニティとか、ワールドスワップとか！！！」

	一抹 「ウソだ……ウソだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだ！！！」

	一抹 「……ぅう……ひっく…… ねぇ……っ、ウソだと言ってよぉ……っ」

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牛鬼丸 ENo.94 真柄

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