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[進行値 3+2+3+2+3=13]
[次回イベント発生値:18]
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【夜明けと黄昏の記録-狭間の章-その一】
――もし、この記録が現実に戻った時にも残っているならば、この事象は本当にあったという証明になる。
故に僕はこの記録を残すことにした。
これは決して、埋もれたままにしておくべきではないと思ったから。
イバラシティに訪れてから三ヶ月が経過したその日、あの脳内に響いた男の声が語っていたように侵略が始まった。
真っ暗な空間に時計と扉と男だけがいる場所に飛ばされて改めて説明を受ける。
とはいえ、簡単な概要に過ぎないもので後は自分たちで手探りで探せということらしい。
――戦争にしては雑が過ぎるのではないかと思った。
強いて言うなら、殺さずとも気絶させればこちら側の勝ちとなる可能性があることについては希望的観測ができるというところだろうか。
流石に今まで仲の良い知り合いやクラスメート、同級生として過ごしていた人たちと本気で殺し合うのは心が痛む……
そう言っておきながらも、必要な時がきたならばきっと僕は全部の感情を殺して手を下しているのだろう。
そう思うと皮肉にも程があって笑い話にもなりそうな気もしたが、これでいいとも考える。
こういった汚れ役は自分のように感情を殺すことのできる者がやれば良いのだから。
目の前に現れた異形を二人で見るも無惨な肉塊に変えておきながら言えることでもないのかもしれないけれど。
「……必ずしもこうしなきゃいけないってワケじゃねえんだよな、きっと」
《黄昏の射手》の呟きに、僕はどう返せばいいのか戸惑った。
きっと大丈夫ですよ――そう返してあげられるのならそれが一番いいのだろう。
だが現時点ではあくまで"可能性"に過ぎず、希望を抱かせすぎては崩れてしまった時に大きな傷となる。
彼の精神的状態を鑑みるならそれは決して避けなければならない。
優しい彼のことだから、きっと崩れてしまった時にもう立ち上がれなくなってしまう。
その優しさが僕は好きだ。好きだからこそ、彼の心が痛むようなことはさせたくない。
「そうしなければならなくなった時は、僕が全部引き受けますよ」
「バカ言うなよ、親友だけに全部やらせられるかっての。……俺だって"チルドレン"だ、覚悟はできてる」
一人で背負おうとするな、そう言って彼は僕の額を小突いてくる。
そう言う癖に一人で背負い込むのはどこの誰だというのか――とは、敢えて返さなかった。
彼は"気づいている"。
気づいていても、その現実を受け入れるだけの余裕がないだけ。そして、今かけてくれた言葉を現実にすることだけは
できる。全く、本当にどうしようもない人だ……
いや、僕に言われたらおしまいか。僕が一番どうしようもない人間なのだから。
「……とりあえず、行こうぜ。まずはどうする?」
「全員が全員戦いに慣れている、あるいはそれに適した力を持っているとは限りません。
まずは知り合いを始め皆の無事を確認しましょう。それから、できることなら団体行動を取れるようにして……」
「そうだな……みんな無事だといいんだけど」
「ええ、そうですね……」
こうして僕たちは扉に手をかけた。
……戦争だとするなら、力を全力で使わなければこちらが殺られる。
僕の体がどこまで持つか――それを懸念しながら、戦場へと向かった。