――これは、かつてあった世界の過去を、一人の天使が語るお話
語り部の天使
遠い遠い世界の果てで、過去を語り紡ぐ天使。
いつかきっとたどり着く、一人の少女の成れの果て。
暗いくらい闇の底、時間も、空間も、概念もない、ただ存在だけがあるその場所に、私は”あった”。
ときおりなにやら…今の感覚で言うのであれば生あたたかく、そしてひどく新鮮で、そして活きのよい…とても絶望に溢れた何かが、私のどこかに放りこまれる以外には、そこには何の変化もなく。ただただ私はそこにあり、そしてときおり捧げられた、”供物”をただただ飲み込んでいた。
―だからこそ、あの日あの時あの場所のあの光景を、私が見て、そして知って、そうして産まれ出でたのは、まさしく奇跡だったのだろう。
あの時のことを、私は絶対に忘れ得ない。数億年…数十億年…数えるのも億劫なほどに生きた私が、今でも鮮明に思い出せる、あの日の光景。…そして生涯忘れ得ない…私の罪のその記憶を。
―だからまず、そこへ至るまでの道筋を、想起する―
…はじめはいつもの”供物”だった。多くの供物がその時は捧げられ…そのうちの一人にある少年が居た。
緑髪で赤眼の麗しい少年。彼は、多くの人々よりも少しだけヒーローの事が好きで、産まれの性と心の性が少しだけ食い違ってしまっただけの少年で、素直な優しい少年だった。
彼は供物として捧げられたそのときでも、『きっとヒーローが助けてくれる』と信じていて…だから”私の欠片”を前にしても、まだ諦めては居なかった。その右腕を齧られ…悲鳴をあげ…それでもまだ、彼は諦める事だけはしていなかったのだ。
―そして、実際、その願いは届いたのだ。ヒーローは来てくれた。助けに駆けつけてくれたのだ!
逃げ惑う供物たちを確かにヒーローは守り抜き…そして救い上げたのだ。
けれども…その中で、少年だけは、失意し、絶望し…そして”私”へ捧げられた。
…それはただ、本当にヒーローを求めていた少年を、見捨てるしかなかっただけのことだ。
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『……よくある。そう、よくある哀しいお話です。 これに至る前のかつて…そしてこの先…まだまだ続くはずのこれからも…私が幾度となく目にした光景。…けれど、きっとこれがなければ…私はなかったのです。』 |
語り部の天使は、そこで一息、言葉を止める。
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『…すこし、語りすぎましたね。 一旦、このお話はここまでにしましょう。今はしばしの休息を。』 |
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『……もとよりこれはそもそも余談。真に語るべきはあの夢の中でのことなのですから。 けれども、それは私の役目ではありませんね。…それは、夢を見ているあの子自身が語るべきものです。』 |
そうして天使は大きく大きく立ち上がり…あまねく世界へ届くようなりりしい声で、その言葉を紡いでいく。
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『では、貴方をその夢の世界へご案内いたしましょう。』 |
されどもその表情にはどこか多少の邪気を混ぜて…
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『ご安心ください。あなたは少し、一時の眠りを得るだけですから。』 |
そうして天使は指を鳴らす。
…あとは、まどろみに墜ちる、数多の意思の空欠たちが、そこへと残る、それだけだ。
――いつかどこかの夢の中で
夢見る少女
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『…わかっていますね?コレよりの戦いは、どう終わろうと、貴女を苦しめるものになることは。』 |
私にしか聞こえない、私にだけ聞こえる…いや、もしかしたら、あの子には聞こえているかもしれないし、他にも聞こえる人はきっといる。…けれどもきっと、私にしか聞こえない今のこの声を…私はただ、夢の中で聞いていた。
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『それでも、貴女があの子を…あの子が住む世界を守りたいと言うのであれば、戦うしかありません。』 |
私のようで、私のようでない、その厳かな声は、ただ悠然と、事実だけを私に伝えて…。
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『己の生存が掛かっている以上、アンジニティの住人は、決してこの機会を逃しはしないでしょう。』 |
わかっている。わかっているとも。
どんなに全てを受け入れたくとも、どんなに全てを愛したくとも…守れるのは
”どちらか一方の世界だけ”。
だからこそ―
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『「私はこの世界を守りましょう。」』 |
それは、私が定めた私の誓い。私が決めた私だけの誓い。
―いつか来るべきその時に、きっと何かを残す為に。
次元タクシーに乗り『
チナミ区 E-5:出発地』に転送されました!
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25)
リンネ(168) をパーティに勧誘しようとしましたが、相手が近くにいませんでした。
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