素晴らしい。
私が、この荒廃した世界にたどり着いてすぐに頭に浮かんだ言葉はそれだった。
学生時代、私はこう思っていた『この世界は平凡すぎる』と。
どうせならもっと非現実的な世界だったらいいのに、なんて思っていた。
魔法を試す敵さえいれば、あの子達を傷つけることなく実験を行える。
悪い敵さえいれば、私は苦しむことなく実験を行える。
そう思っていた。
今もその考えは変わらない。
まずは、この世界でアンジニティを探し出し、たらふく薬を飲ませてやろう。
命乞いしたぐらいでは許しはしない。
何度でも、何度でも、毒薬を飲ませてやる。
死んだら、異能で時を巻き戻し今度は私の魔法で火炙りにしてやる。
……、しかしひとつだけ私には気がかりがある。
『榊』とかいう男は確かにこう言った。
"既にアンジニティの住人はこの世界に紛れ込んでいます。この世界の一部を改変し、辻褄を合わせ、ごく自然に、巧妙に……"
つまりだ、イバラシティの世界にいる誰かがアンジニティということもありうるということだ。
改変、がどういった点を改変してるかはわらかんが、万が一アンジニティの記憶すら改変していたとすれば……?
アンジニティは自身が侵略者であることすら気づかずに、すごしていた可能性も十二分にある。
そうなってくれば、イバラシティに住む住人全てが侵略者となりえるわけだ……。
……嫌な予感がする。
かりん、右鞠ちゃん……親しい人やお店の客がもし侵略者だとしたら、どうしたものか……。
私は先程言ったとおりのことを、その子達に出来るのだろうか?
とにもかくにも、その子達の安否の確認も急いだ方がいいだろう。
まあ、不幸中の幸いか。
側にゾード君と前にお店に来た客が数名発見済みだ。
……まさかとは思うが、ゾード君とかも侵略者ということはなかろうな?
いや、それは話してから考えよう。開幕からアンジニティだと決めつけて接するのはあまり良い選択とはいえない。
万が一、本当にイバラシティの住人だったことを考えると後々の行動に問題が発生しかねない。
極力友好なフリをしていくのがいいだろう、多少の警戒は必要だろうが。
あと、食料の確保もしていかないとね。
私の異能でしばらくの間はみんなの栄養補給はなんとか出来るかもしれないが、時間の問題だ。
飲水の確保と、食える食材を探しておかないとな。
……この世界に美味しい食材があるとは到底思えないが、まあそれも非現実的世界ならではの楽しみかもしれない、どんなゲテモノ料理が出来るか楽しみだ。
今日のメニューは、あの赤いスライムのゼラチン固めかな、先が思いやられる。
チョコで味付けしたらいけるか?……出来れば食いたくないぞ。