吸血鬼
雪のように白い髪と白い肌、不気味なほどに妖しく輝く深紅の瞳。
荒れ果てた世界に、ぽつんと一人
少女のような容姿をした『化物』は立っていた。
―――化物はゆっくりと口を開く。
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吸血鬼 「…。 …夢を、見ていた…。 とても暖かくて…だけど、どこか悲しい …そんな夢を。 ボク、は… それを物語を読むように見てて…。」 |
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吸血鬼 「…『あの子』は毎日楽しそうに笑っていたな…。 不安に押しつぶされそうになりながらも… 勉強に、部活に… その部活は毎日毎日大騒ぎ… だけど、皆を愛しく思ってた…。 そんな少女の物語…。」 |
手元には何故か、その少女が書いていた日記が握られている。
12月20日 晴れ
日記なんて付けた事ないからさっぱり分からないけど
なんとなくつける事にした
んーと…とりあえず今日見た不思議な夢…?の事でも書こうかな――――
1月1日
新年早々、ソーランでイノカクの大会が開催された
お姉ちゃんが審判や運営に関わってたから友達と一緒に
遊びに行ったよ。 ―――
1月25日
同じ部活仲間の■■さんが私の体質改善の為にとお守りをくれた
なんでも赤い石に魔術的を施したとかなんとか…
以前なら魔法とかは今一信用しなかっただろうけど
周りに本物の魔法使いがいるから自然と信じる事が出来た。―――
2月11日
化物でも受け入れてくれる人
化物でも友達だと言ってくれる人
そんな私を人間だと言ってくれた人も居た…。
…私は、恵まれてるなぁー・・。
2月13日
バレンタイン前日
手作りチョコをお姉ちゃんと一緒に作った
結構美味しく出来た…と思いたい…。
■■■君と■■君達は喜んでくれるかなぁ…
日記のいくつかを読み返し、化け物は小さく笑う。
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吸血鬼 「…ふふ、懐かしいな… 私はそれを俯瞰視点で見ていただけだが…。」 |
―――化物は辺りをぼんやりと見渡す。
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吸血鬼 「ああ…。 だが、始まってしまったのか…。 この悪趣味な催しが…。」 |
―――化物は大きく翼を広げる。
…辺りにはどこからともなく蝙蝠の群れも現れ――――
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吸血鬼 「―――ならば 守るとしよう ボクのせいで歪めてしまった彼女の代わりに 彼女が守りたかった者を…。 …ククッ ボクも随分と甘い夢に毒されてしまったな…。」 |
自嘲気味に化物は嗤い、高らかな声を上げる。
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メイル 「…我が名はメイル! メイル・クローフィ!! このクソつまらぬ催しに、反旗を翻す者だ…」 |
―――そして化物は、どこかへと飛び去って行った…。