獣は食べるために狩りをする。

人間も、食べるために狩りをすることはある。
それは分かっていても、考え出すと、よく分からなくなることがある。

きっと大抵の人は、何も考えてないのかもしれない。
気にしすぎなのかもしれない。・・・けれど。



　　　　　　　◇◇◇



秋のお祭り会場は夏以上ににぎやかで、
どこからこんなに出てきたんだろうというくらいの人の山、そして料理の山。

いたるところで、収穫した野菜や果物、狩りの獲物、
それらをたくさん使った料理が振舞われていたり。
お構いなしに歌ったり飲んだり騒いだりしている人で、すごい熱気。

一揆に参加している人も、そうでない人も、一緒になって、
実りの秋の喜びを全身で表しているようだった。

ちょっとうるさすぎるくらいだけれど。
・・・こういううるささは、きらいじゃなく、むしろ心地いいくらい。


私はというと、ブドウ踏みで疲れてたのもあって、
一緒になって騒ぐ体力もなく。
踊りでも見ながら、ゆっくり料理をいただこうかと思ったのだけど。


なんかニヤニヤ笑いながら誰か近づいてきた。
・・・誰かくらいは分かるけど。

なんか上機嫌なのかなんなのか知らないけど私に聞くな近寄るなあっちいけ。

・・・反射で答えちゃった。
飲んだことなんてもちろんない。あんなもの、匂いからしてやだっての──


あれ？　ブドウの香りが心地いい？
お酒って、こんな香り、したっけ？




※No.215の日記へ続いてるかも！　[HARVESTFES]

小さく、隣の人に聞えるかどうか、といったそんな声。
震える手をぎゅ、と握り締めれば獲物を構え。
不安げな表情を無理やり内へと押し込めれば、顔を上げた。

刃を構えるのをやめれば、はああ、と深く息を吐いた。
自分が無事なことに、仲間にも致命傷がないことに心底安堵をする。

倒れた相手に近寄れば、傷の度合いを知るために声をかけようとして――
問いかけは、途中で止めた。

ふるり。首を横に振る。
そのまま、結局何も言わずにその場を去った。