気付くのが、遅すぎたとあの子は笑うだろうか


ああ、でも


「まったく、やっぱりのんびり屋な姉さんには私が居ないと駄目ね」


なんて、抱きしめてくれるのならば　それもいいかもしれない






『不良娘』だなんて


あの子はただ、私を覆い隠してくれていたんだ




人一倍優しくて


人一倍世話焼きで


世界中の誰より愛しいあの子



それを隠したがっていたあの子の愛用品で気付くだなんて



そう思えば、どこか愉快な気持ちになった





ああ、きっと今日は『良い夢』が見られるはずだ




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そのストゥーラが示すものは


信仰


信じるものに、祈り、願う。


「かみさま　おねがいします」


そのストゥーラが示すものは


生贄


必要とされる、願いの対価


「わたしのこの『気持ち』をけしてください」




―――キンッ




願いは捧げられた

対価は魂
記憶と心

因果は歪み
世界を騙す

此処に開かれしは黄金の庭

奇蹟の欠片
世界の歪

儀礼の焔が立ち昇る



「―――ぁ　あ　ア　ア　ァ　ア　ア　ア　ァ　aaaAAA !!!!!」



凶気は灼かれ

鎖は解き放たれた

ただ、一つ少女が考えたり無かった事といえば

残った『灰』の使い道だった






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「――――」



手元に、『十字』のメルンストゥーラが乗っている



覚醒は二度目だった



一度目は独りで


きっと、もう独りじゃないという事なのだろう



「　ただいま、リヴィア　」



その瞳には、真紅の燐光が光り輝いていた。








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○ベルフォード氏族惨殺事件　別名『ベルフォードの悪魔事件』○

その事件はヴォレアを震撼させた。
「ヴォレアの開拓者」の氏族の一つであるベルフォード。
その一家が一夜にして皆殺しにされていたからである。

推定死者17名、生存者0名、行方不明者2名。
死亡者（男性、音順）：アベラルド＝ベルフォード（以下姓省略）、バグダティオ、チリアーノ、エラルド、ファデーレ
ジョナタ、ナルチーゾ、セヴェリーノ、ヴァレリオ　（以下女性、音順）アレッシア＝ベルフォード（以下姓省略）、ブリジッタ、チェレッセ、
エズメラルダ、フランチェスカ、フルヴィア、オデッタ、オフィーリア


行方不明者(名称不明)：リレッタ・ベルフォード(姉　当時12)　リヴィア・ベルフォード(妹　当時10)

まるで嵐が吹き荒れたかのような現場は辺り一面に血痕と見られる跡が残り、
時折その存在が確認されていた『大岩熊(ジャイアントロックベア)』による物ではないか、との声が挙がっている。

主な根拠として巨大な生物爪によるものと思われる裂傷が多く見られたことや
何かに叩き潰された様な痕が確認された事が大きい。
大岩熊の気性はとても荒く、その生態を知る知識人は皆納得した。

しかし、裂傷は一部鈍い刃物の様な物で絶ち切られたかのような痕も混在されている事から疑問が持たれている。

発見者は近隣区域の住民で、明朝にカラスやハゲワシが大量にベルフォード家に向かっていったのを確認し、
不審に思い見に行ったところで発覚した。
また、彼らの証言によれば事件発覚の数日前の間ですら、家畜の挙動含め一切の異変等はなかったそうだ。

事件発覚からさらに数日後、巨大な大岩熊が現場から10キロほど離れた地点で発見され、数日掛りで討伐された。
この時、人々はこれで事件の解決だと誰しもが安堵したが、
大岩熊を解体した結果、消化器官は冬眠直後の如く空となっており事情を知る狩人達は首を傾げるばかりだったという。


やがて、疑念は畏怖を呼び正体の解らぬ犯人は『ベルフォードの悪魔』と銘打たれ、ヴォレアでの怪事件として今も語り草である。