「ねえ、何泣いてんのよ」
相手の羞恥の記憶ばかりを見てしまう魔眼のせいで、いじめられてばかりいたあの日。
ほんの少しだけ、悲しみを忘れさせてくれる存在ができた。
side 10
「だったら人の顔なんか見なきゃいーじゃない。
顔色伺ってばかりだとつまんないでしょ?」
彼女がそう言うから、足元を見るようにした。
彼女の周りはいつも賑やかで、わたしもそんな彼女に気に入られたくてみんなの真似をした。
小学校卒業間近になると、彼女の周りは男の子ばかりになっていた。
それでもわたしは彼女の傍にいたくてみんなの真似をした。
彼女だけは、そんなわたしを煙たがらずにそばに置いてくれた。
魔眼のことなど気にせず、話したり、遊んだりしてくれる彼女が好きだった。
「私ね、十神くんのことけっこー好きだよ?」
俺もだよ、とわたしは答えた。もちろん、友達として。
中学に上がって、制服姿の彼女を見つけて駆け寄った。
同じクラスになるのは初めてで、これから毎日彼女と話ができることに胸を躍らせていた。
彼女はわたしに、汚いものを見るような目を向けた。
「騙してたの?」「男のフリまでして」「最低」
「私から男子を取ろうとしてたんでしょ」「気持ち悪い」
どうして、と目を合わせて想起した記憶は──彼女の恥じらいの感情と紐づいた記憶。
『私ね、十神くんのことけっこー好きだよ?』
『うん、俺もだよ』
ただ彼女と一緒にいたくてしていた周りの真似……
つまり、男の子の真似が彼女を勘違いさせていたことに、このとき初めて気がついた。
彼女は泣き出すとそのまま走り去ってしまって、謝ることすらできなかった。
その後、謝ろうとして彼女の家へ向かった、その後のことは……思い出せない。
彼女の兄だろうか 年上の男が数人 こいつが妹を虐めたのかと
違いますと言っても無理矢理服を剥がされて 本当に女だと笑われて
嘘を吐いた罰だと 子供が出来たら面倒だ そんな言葉が聞こえて
息が出来ない 体の中に異物が入ってくる感覚 酷い 吐き気
苦しい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい……
父や母は前々からわたしに『神様なんだからあなたは心配しなくてもいい』、そう言って慰めてくれていた。
だから高校に入ってからは、神を名乗ることにした。
陰気なままでは、ひとりぼっちになってしまうから……
それは寂しいので、少しだけ偉そうに振舞うことにして。
最初から神であると言っておけばこんなことはもう起きない、そんな浅はかな考え。
騙していることに変わりはないのに、目を逸らし続けた。
だから、バレてしまった時……全部、失くしてしまうと思った。
けど、皆はそんなわたしを……我を受け入れてくれた。
もう何も怖くない。わたしは、わたしだ。
隠すことは、きっとあの子のためにも良くない。
あの子……あぁ、名前……忘れてしまった。
わたしの大切な弟。素直じゃないところが、そっくりな弟。
わたしのせいで、異能のせいで、今も苦しみ続けている彼を……
十神十として世界に繋ぎとめるのではなく、家族の一員として、手を取るためにも。
もう、わたしは逃げない。
だから、いつもみたいに名前を呼んでほしい。
──我は十神十。イバラシティ在住、相良伊橋高校三年生。
やっと前を向いて歩けるようになったばかりの、18歳の女の子です。
言葉遣いは気にしないで。癖になってるんだ、神様みたいな喋り方!

[816 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[370 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[367 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[104 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[147 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
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エディアン 「・・・・・・・・」 |
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
チャット画面にふたりの姿が映る。
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
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エディアン 「・・・・・・・・」 |
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白南海 「・・・怖いだろうがよ。」 |
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エディアン 「・・・勘弁してくれませんか。」 |
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白南海 「ナレハテってあの!アレだろォッ!!?ドッロドロしてんじゃねーっすか!! なんすかあれキッモいのッ!!うげぇぇぇぇうげえええぇぇぇ!!!!!!」 |
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エディアン 「私だって嫌ですよあんなの・・・・・ ・・・え、案内役って影響力どういう扱いに・・・??私達は関係ないですよね・・・????」 |
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白南海 「あんたアンジニティならそーゆーの平気じゃねーんすか? 何かアンジニティってそういう、変な、キモいの多いんじゃ?」 |
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エディアン 「こんな麗しき乙女を前に、ド偏見を撒き散らさないでくれます? 貴方こそ、アレな業界の人間なら似たようなの見慣れてるでしょうに。」 |
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白南海 「あいにくウチはキレイなお仕事しかしてないもんで。えぇ、本当にキレイなもんで。」 |
ドライバーさんから伝えられた内容に動揺している様子のふたり。
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白南海 「・・・っつーか、あれ本当にドライバーのオヤジっすか?何か雰囲気違くねぇ・・・??」 |
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エディアン 「まぁ別の何か、でしょうね。 雰囲気も言ってることも別人みたいでしたし。普通に、スワップ発動者さん?・・・うーん。」 |
ザザッ――
チャットに雑音が混じる・・・
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エディアン 「・・・・・?なんでしょう、何か変な雑音が。」 |
ザザッ――
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白南海 「ただの故障じゃねーっすか。」 |
ザザッ――
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声 「――・・・レーション、ヒノデコーポレーション。 襲撃に・・・・・・・・いる・・・ 大量・・・・・こ・・・・・・死体・・・・・・ゾ・・・・・・」 |
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声 「・・・・・ゾンビだッ!!!!助け――」 |
ザザッ――
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
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エディアン 「・・・・・・・・・」 |
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白南海 「ホラーはぁぁ――ッ!!!!
やぁぁめろォォ―――ッ!!!!」 |
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エディアン 「勘弁してください勘弁してくださいマジ勘弁してください。 ホラーはプレイしないんですコメ付き実況でしか見れないんですやめてください。」 |
チャットが閉じられる――