
「”xxxxx”」
誰かを、誰かを呼ぶ声がする。
 |
青年 「今行く」 |
青年は不愛想に答えながら、けだるげに裾を摺りながら歩いていく。
旧い作りの屋敷の長い廊下へ出ると、
夜の帳がおりて、夕景を少しずつ飲み込んでいた。
青年は目をすがめてそれを見送ると、
声のした方へ行く。
「今日はね、自信作なんだよ」
食卓へ並ぶ料理は、見るからに赤い。
青年は僅かに口の端に笑みを載せて、
「まーた辛い奴か。 かー、ワンパだねーこいつは」
「そんなに言うなら食べなくていいけど」
「いやいや、頂く、頂く。飯抜きよりいいよ」
「素直に美味しそうってたまには言っていいんですけど!」
はは、と青年が笑った。
「コゲが0になったら考えてやろう。じゃあ」
「ま、また見つけたの?私もわかんなかったのに……はーい」
二人で両手を合わせる。
「いただきます」
「いただきます!」
……………
自分がどのように世間で言われているかは知っている。
偏執的な拝金主義者。
銭ゲバ。
ダボハゼ。
ハゲタカ。
まあ、そういわれても仕方ない。
身寄りのない二人から、よくここまで来れたものだ。
金がないのは、命がないのと同じだ。
衣食足りて礼節を知る、というが、それは強ち間違いではない。
金がなければ、矜持を失う。
矜持の無い人間はなんでもやる。
何でもだ。
「あの親父、金は返せたか?」
「返せるわきゃありませんよ! 機械、職人にぶっ壊させましたからねえ」
「滅多なことを言うんじゃねえよ」
爪を綺麗に研ぎながら、部下を諫める。
身形は綺麗に。 亡くなった母の遺言だ。
ま、何度も汚れた手先を磨いてどうするのだと思うが。
「ギャンブル依存症っつうんすかね?恐ろしいっすわ。職場であそこまでやるんだから」
「人間じゃない」
「え?」
ふっと息を吐いて、爪の粉を払う。
「人間じゃねえから出来るんだよ。 金が無いのは食えねえこと。寝れねえこと。
繕えないんだよ、動物が、ヒトのフリすんのにも限度がある」
「あ~……あー、なるほど! 流石っス。んであの土地、どうします?」
「欲しがる奴は別に腐るほどいる。一番高い値をつけた奴にやんな。俺帰るわ」
「はいはい! ……あ、今日でしたっけ」
「そうだよ。 ケーキはあれがいいだの何だの……。面倒臭え。お前も仕事終わらせて早く帰れよ」
「は~~~~い」
社会は別に生きていけないほど過酷ではない。
ただ、いくらでも傷つくことはできる。
親。学校。友人、料理、綺麗な衣服、祝い事。
絆。
当たり前がなかった。
それだけが不足していた。
皆当たり前にそれをもっているので、
誰もその得方も、作り方も疑うこともない。
俺達にはないのに。
それがあったら、きっと”アイツ”はもっと幸福になれていただろうに。
「だが」
ハンドルを握る手に力が入っているのに気づいて息を吐く。
金だ。
金はある。
金が無いのは、矜持がない。
金を貸す。
この契約は至上だ。
何をしなくても金は増えて戻ってくる。
工夫をさせれば、金の代わりにもっと素晴らしいものも手に入る。
忌まわしく俺達を支配していた金は、
今や俺に支配されている。
その時の俺は、あの夜まで、簡単な事に気が付かなかった。
金が無いのは矜持がない。
だが、金を得られても、
別に矜持が戻ってくることはない。
失われた当たり前は、遥かとおく過去に失われたままだ。
遠く、どこかに明るい光が灯っている。
「火事か? 物騒だな」
早く家に帰ろう。
妹が待っている。

[816 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[370 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[367 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[104 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[147 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
 |
白南海 「・・・・・・・・・」 |
 |
エディアン 「・・・・・・・・」 |
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
チャット画面にふたりの姿が映る。
 |
白南海 「・・・・・・・・・」 |
 |
エディアン 「・・・・・・・・」 |
 |
白南海 「・・・怖いだろうがよ。」 |
 |
エディアン 「・・・勘弁してくれませんか。」 |
 |
白南海 「ナレハテってあの!アレだろォッ!!?ドッロドロしてんじゃねーっすか!! なんすかあれキッモいのッ!!うげぇぇぇぇうげえええぇぇぇ!!!!!!」 |
 |
エディアン 「私だって嫌ですよあんなの・・・・・ ・・・え、案内役って影響力どういう扱いに・・・??私達は関係ないですよね・・・????」 |
 |
白南海 「あんたアンジニティならそーゆーの平気じゃねーんすか? 何かアンジニティってそういう、変な、キモいの多いんじゃ?」 |
 |
エディアン 「こんな麗しき乙女を前に、ド偏見を撒き散らさないでくれます? 貴方こそ、アレな業界の人間なら似たようなの見慣れてるでしょうに。」 |
 |
白南海 「あいにくウチはキレイなお仕事しかしてないもんで。えぇ、本当にキレイなもんで。」 |
ドライバーさんから伝えられた内容に動揺している様子のふたり。
 |
白南海 「・・・っつーか、あれ本当にドライバーのオヤジっすか?何か雰囲気違くねぇ・・・??」 |
 |
エディアン 「まぁ別の何か、でしょうね。 雰囲気も言ってることも別人みたいでしたし。普通に、スワップ発動者さん?・・・うーん。」 |
ザザッ――
チャットに雑音が混じる・・・
 |
エディアン 「・・・・・?なんでしょう、何か変な雑音が。」 |
ザザッ――
 |
白南海 「ただの故障じゃねーっすか。」 |
ザザッ――
 |
声 「――・・・レーション、ヒノデコーポレーション。 襲撃に・・・・・・・・いる・・・ 大量・・・・・こ・・・・・・死体・・・・・・ゾ・・・・・・」 |
 |
声 「・・・・・ゾンビだッ!!!!助け――」 |
ザザッ――
 |
白南海 「・・・・・・・・・」 |
 |
エディアン 「・・・・・・・・・」 |
 |
白南海 「ホラーはぁぁ――ッ!!!!
やぁぁめろォォ―――ッ!!!!」 |
 |
エディアン 「勘弁してください勘弁してくださいマジ勘弁してください。 ホラーはプレイしないんですコメ付き実況でしか見れないんですやめてください。」 |
チャットが閉じられる――