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[2nd Trigger ON]
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【夜明けと黄昏の記録-狭間の章-其の二】
この記録、本当に俺たちが現実に戻った頃にもあるんだろうか。そう疑問になるけど日明と同じく俺もこの記録は残しておこうと思う。
でも、残らないなら、残らないで。それはきっと――"幸せ"なことなのかもしれない。
侵略が始まってから二時間ぐらいかな。
扉の向こうには俺たちの知り合いもたくさん巻き込まれてた。
まずはその人たちの無事を確認するところから始まって……同じチルドレンの子と合流ができたから、
その子と他に二人程で団体行動をすることになった。
その中で、様々な姿をした人――アンジニティ側の人だった、イバラシティで知り合った人たちとも出会った。
ぶっちゃけめちゃくちゃ驚いた。
だってちっちゃいわんこがその辺りうろちょろしてて心配だから声かけたらそれが友達の女の子だったなんて
普通思わねえじゃん!?
イバラシティだとふっつーの女の子だった子がさハザマにきたらこんなちっこくて可愛いわんこになるんだぜ!?
びっくりじゃん!!!!
見たところすっごい人間嫌いそうなんだなってオーラは出てるけど、俺たち――イバラシティ側についてくれるのは確かみたいで。
色々思うところあるんだろうけど本人も悩んだ結果だろうから、俺はそれを尊重したい。
人間を滅ぼしたいって気持ちもどっかにあるんだろうけど……
それでも護ろうとしてくれてるのはそうなるきっかけがあったと思うから。
それから、日明が最近仲良くなったっていうそらこー生の男の子。
夕焼け色の髪が綺麗ですっげー身長の高い子がいるんだけど、その子はますます姿がおっきくなってたっつーかドラゴンだった。
俺たち二人どころかちょっと向こうに見える山まで覆っちまいそうなぐらいでかいドラゴンが、その子の声で俺たちに声をかけてくれた。怪我はないかって……
この子もアンジニティなのにイバラシティを助けてくれるみたいだった。
もしかしたらそう言って油断させることも――と考えなかったと言うと嘘になる。
「……よかった。
貴方は、"こちら側"なんですね」
でもそう言って、日明が心底嬉しそうに笑ったから。
ああ、本当にそうなんだって思って俺も疑う気はなくなった。
あんなに嬉しそうに笑うの、久しぶりだったんだ。知り合ってからもう6年にはなるけど……
最初に会った頃と比べてあいつの笑顔は減ってたから。
その笑顔をあの子のおかげで見られたんだって思うと、凄い嬉しかったんだ。
でも。
でも、輪ちゃんもリオネルも、アンジニティ側の存在ってことで。
アンジニティ側の存在ってことは。もし、イバラシティが勝ったら、二人共……
「それが彼らの選択です。僕たちが口を挟むことじゃない」
それを言ったら、日明はこう返した。……こう返すって、わかってた。
誰よりも"チルドレン"としての任務に忠実で、誰よりも人を護る為に一生懸命で……
任務の為に感情を文字通り"殺して"きたんだから。
でも……でも、日明があんなに嬉しそうに笑ったのは久しぶりだったんだ。
リオネルと出会ってから見違えるぐらい笑う回数が増えて、毎日楽しそうにしてて……
俺やりっちゃんたち以外に友達ができて、あんなに心を開いてる姿が見られるなんて思わなかったんだよ。
輪ちゃんにだって、あんなに一生懸命になってあの子の環境を何とかしてやりたいからってわざと嫌われ役なんてやり出すのだって外の世界じゃ考えられなかったんだ。
毎日何か異能について何かないかって寝る間も惜しんで調べ続けて、それぐらいあの子を気にかけて……
日明は、人に関わることを"諦め"ちまってる。
《蠱毒》のせいでほとんどの場合孤独を強いられざるを得なかったから。
だから、自分の気持ちを表に出すことは外の世界じゃ俺やりっちゃんたちがいなきゃ絶対にやんなかったんだ、
それぐらいあの二人があいつにとって大事な友達だってことなんだよ!
なのにこの戦争が終わったら離れ離れになっちまうってことなんだろ!?
あいつにとっての大事な繋がりがなくなっちまうってことなんだろ!!?
そんなの……そんなの、俺は嫌だ。嫌だよ……
何でこんな侵略戦争なんか始まっちまったんだよ。
ここにこなきゃ記憶はないのかもしれないけど、イバラシティとかアンジニティとか関係なしに仲良くなれる人たちだっているってことじゃんかよ。
神様、いるなら何とかしてくれよ。
酷いよ。何で、どうして日明から繋がりを奪おうとしていくんだよ。
苦しむのなんて、辛い想いをするなんて、全部、全部俺だけでいいんだよ……!!
母さんを犠牲にして生き残っちまった人殺しなんだ、苦しみや痛みは受けて当然の存在なんだ、
だからこんなもんは全部俺に与えてくれよ!!
誰かの生命の為に一生懸命になれる親友を苦しめる前に、俺に罰を与える方が先だろ!?
なのに何で俺を放ってあいつを苦しめ続けるんだよ……ッ!!!!
「……なあ、神様。いるなら聞いてくれよ。これ以上、日明が苦しまないで済むようにしてくれよ。……お願いだから……!!」
そうやっているかもわからない神様に祈るぐらいしかできない俺自身を、俺は憎まずにはいられなかった。
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【****】
――某日、カナリヤラボ。所長室。
「こちら《求道者》。何用だ」
『おお、繋がった繋がった。突然すまないな、私は《咲き誇る光華》と申す』
「……え、まさか」
『かなり急だが早くて明日遅くて一週間後にはそっちに世話になる!よろしく頼む!!』
「ちょっまっ流石にそれはいきなりすぎるんだが――っておい待て切るんじゃねえ!!!?
…………はあ。日明に何て説明すればいいんだこれ」
「……へっくし!」
「どったよ日明。風邪引いたか?」
「いえ、何か誰かが噂しているような感じですねこれは……」
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[進行値 26+3+3+3+2+1+3=41]
[次回イベント発生値:60]
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