
―― ウォン side――
静まりきった教会で――
ソレは静かに歌っていた。
誰かにつれてこられた、祭壇の上で。
ずっとずっと、与えられるものを享受しながら。
歌わされていた。
それは、宗教の象徴であり、畏怖の象徴であり。
また――”信者”の掃き溜めとなる。
誰かが、こんなのは可笑しいと告げていても。
これは、神、天使の遣い。そう口にするのが可笑しいと処分されてしまった。
歌を歌い続ける、コレは、そんな扱いを受け続けた。
もう――歌にしか価値がないからと――誰かに贖罪するように。
誰かを許すように、誰かを、誰かを誰かを――
自分のために、誰かを思い、歌い続ける。
そうして出来上がった、宗教は。何十、何百と――続いて――
長命である”エルフ”であったコレは――ずっとずっと。
扱いが娼婦になっても、扱いが■■となっても――
どんな扱いと成っても、象徴であり続け歌い続けた。
そう――
「その格好で?さっむいのに……戻ってこればって、家ドコよ。
この辺で見かけたことねーよ、アンタ。
まぁちょっとこっち来なよ、ここ、邪魔だから。」
その教会を、宗教を。
潰した少女に、出会うまでは――
そう、これは――
歌だけが残った鶯が
翼を取り戻す、物語
【過去編 END】
―― 右鞠 side――
死ぬ、というのは残念ながら■■■■に見つかったときから
手段としては消されていて。そうなるためにはルールを守らないといけなかった。
私にある、この”焦がれ”。
コレをくれたことに感謝している。
彼女は、満ちていきたいと思っている。
満ちていきたいのに、満ちていきたいから――”空っぽ”になっていく。
あぁ、なんて羨ましい。
だから、アタシも、そうなりたい。なりたいから――
”ルール”がある。乗っ取らないといけない。
そのために、私はアタシを定義する。
――人に頼られるようにした。
”その方が効率的”
――明るい、ほうが良いか
”接触が楽”
――アクセサリー、服もそれなりに
”女の子らしいほうが、ぽい”
――全部見様見真似だ
”それでも十分。詰めるのは得意”
――やること、できることは多く
”必要にしてもらったほうが都合がいい”
会には悟られないように
”過剰な接触、馴れ合いは不要”
ポジションは、上にも、下にも使われる立ち位置が良い
”すれば、合法的にできる”
…………――
………――
……――
…――
「およ……?」
寒さも強くなってきた時期――
暖房のついた部屋。今日の髪型はサイドポニー
赤と黒のチェックのフレアロングスカート。黒のもこもことしたセーターで。
食パンをくわえたところに、聞こえた”声”に。
間抜けな顔を晒してしまう。今日は”休日(オフ)”
だから、ぼんやりと。今日は何して時間潰すカーなんて考えながら
少し、時間を一緒にすることが多くなった同僚と朝食していたときに不意に来たもんだから
本当に、アホ面だったと思う
「――あー……」
”死を招く”、”胸を捧げろ”という大仰な言い方の後に
”お気をつけて”という優しい言葉。ズルいよなぁとか勝手に思いながら
「だそうだよ。友の前でもだってさ」
軽口をたたきながら、食べ進める。異動に関しては特に抵抗はない。
ないが、まぁそれなりに長くいた場所だ。離れる前に、思い出づくりくらいはしておくか
なんて――勝手に、同僚を道連れにするプランを考えながら――
「まぁ、そうなってもお互い、案外ケロッとしてそうな気はするよね」
同僚はあんまり頓着はないような気もするが
一応同じタイミング、同じ場所からの異動。手伝ってあげるのが世の情というべきか――
「そんなわけで、出かけるよ、サマリん」
いや、どちらかといえば。これから連れ回すお駄賃というべきか
「――いいからいいから。ほらほられっつらごー」
さてさて――何が起こるのか。気をつけてどうにかなるなら
「――とっても都合が、いいな」
そのつぶやきは、ぎゃーぎゃーと言い合った音や、寒さに澄んだ空に、消えていった。
そして、”アタシ”はイバラシティへと、足を踏み入れたんだ。
私の、異能の代償は――”中身”。
そう、これは――
”アタシ―右鞠―”が、満ちていくようで
”私―真理―”が、空っぽになる物語
【過去編 END】

[770 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[336 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[145 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[31 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
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白南海 「うんうん、順調じゃねーっすか。 あとやっぱうるせーのは居ねぇほうが断然いいっすね。」 |
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白南海 「いいから早くこれ終わって若に会いたいっすねぇまったく。 もう世界がどうなろうと一緒に歩んでいきやしょうワカァァ――」 |
カオリ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、橙色の着物の少女。
カグハと瓜二つの顔をしている。
カグハ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、桃色の着物の少女。
カオリと瓜二つの顔をしている。
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カグハ 「・・・わ、変なひとだ。」 |
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カオリ 「ちぃーっす!!」 |
チャット画面に映し出されるふたり。
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白南海 「――ん、んんッ・・・・・ ・・・なんすか。 お前らは・・・あぁ、梅楽園の団子むすめっこか。」 |
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カオリ 「チャットにいたからお邪魔してみようかなって!ごあいさつ!!」 |
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カグハ 「ちぃーっす。」 |
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白南海 「勝手に人の部屋に入るもんじゃねぇぞ、ガキンチョ。」 |
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カオリ 「勝手って、みんなに発信してるじゃんこのチャット。」 |
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カグハ 「・・・寂しがりや?」 |
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白南海 「・・・そ、操作ミスってたのか。クソ。・・・クソ。」 |
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白南海 「そういや、お前らは・・・・・ロストじゃねぇんよなぁ?」 |
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カグハ 「違うよー。」 |
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カオリ 「私はイバラシティ生まれのイバラシティ育ち!」 |
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白南海 「・・・・・は?なんだこっち側かよ。 だったらアンジニティ側に団子渡すなっての。イバラシティがどうなってもいいのか?」 |
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カオリ 「あ、・・・・・んー、・・・それがそれが。カグハちゃんは、アンジニティ側なの。」 |
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カグハ 「・・・・・」 |
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白南海 「なんだそりゃ。ガキのくせに、破滅願望でもあんのか?」 |
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カグハ 「・・・・・その・・・」 |
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カオリ 「うーあーやめやめ!帰ろうカグハちゃん!!」 |
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カオリ 「とにかく私たちは能力を使ってお団子を作ることにしたの! ロストのことは偶然そうなっただけだしっ!!」 |
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カグハ 「・・・カオリちゃん、やっぱり私――」 |
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カオリ 「そ、それじゃーね!バイビーン!!」 |
チャットから消えるふたり。
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白南海 「・・・・・ま、別にいいんすけどね。事情はそれぞれ、あるわな。」 |
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白南海 「でも何も、あんな子供を巻き込むことぁねぇだろ。なぁ主催者さんよ・・・」 |
チャットが閉じられる――