
【九頭竜坂漆刃】
──アヤシバ宅に居候してから数日後
傷も治ってきて、だいぶ動けるようになってきた
アイツはというと、寝る時は別室なので
それ以外は様子を見に来てくれる、という感じ。
俺が動けるようになったので朝昼晩の料理では交代制が導入された。
……俺が料理作れるのを意外そうな目で見てきたのは許さんが。
「もうしばらくしたら学校もいけそうだ。
感謝してんだぞ、これでも。」
夕飯の準備をしつつ、風呂上りのアヤシバへ声を掛けた
流石に、服は着るようになった……なったはず。
とりあえず今日のところは着てるようである。
「感謝とかは別にいらねーよ。
それより晩飯。
何つくってんだ?」
「肉じゃがと味噌汁。あとはサラダ。
身体を直すにはバランスよく食うのが一番だからな。」
まだ湿り気のある髪を
タオルで挟むようにして乾かしながら
後ろから覗き込んでくるのを
調理中は邪魔だから下がれ。
と手で払うようにしてキッチンから追い出す。
じと、と後ろから睨まれたような気がするが
包丁取り扱い中なので無視しておいた。
「っの……
あ。そーいや滅茶苦茶にシャンプー減ってたが?
おめーどんだけ人のシャンプー使ってんだよ?」
邪見にされた腹いせか
何かしら文句を付けなければ気が済まなかったのだろう
後方からきゃんきゃんと喚く声が聞こえた
「仕方ねえだろ、髪の毛なげーーんだからさ。
まぁ……明日買い出しの時、買いたしておくわ。」
緊急だったから、となぁなぁで使わせてもらってたのは事実であるし
居候の身であるならば、あまり強くは出られない。
とりあえず、同じもの買っておけばまぁ文句はあるまい。
案の定、向こうもそれ以上は言及してこない。
やれやれ、だのしゃーねーなーだの言いながら大人しく席に着いた。
こちらも、包丁の手を止めて、サラダを盛り付ける。
きゅうり、ニンジン、大根の千切りサラダ。彩にプチトマトも載せておいた。
烏時代、姉のように慕っていたシラハさん直伝の肉じゃがも
いい具合に沁み込んだ頃合いだろう。
ご飯と味噌汁も器に盛りつけてテーブルへと運んだ。
「ほら、出来たぞ。
早く食べようぜ。」
傷を癒す為、敵から身を隠す為。
色々事情はあった。
しかし、何というのだろうか
こうして、一つの食卓を囲んだり
共同で暮らしを行っていると
悪くはないな、という気持ちになる
「烏」でも兵部時代は仲間と共に寝食をしてきた
男女問わずだったので
共に行動することに違和感がないのは
その為だろうと思っていたのだが
どうだろうか、今は──
顔を合わせれば
なんでも事あるごとに
喧嘩ばかりではあるが
──今は、楽しいと感じている
この時間が少しでも長く──
「おっ、うまそうじゃねーか。
そんじゃ、いただきまーす
んまっ、ほんと意外と上手いな料理だけは」
「
意外とは余計なんだよなァ!?あと料理だけってなんだよッッ!??」
肉じゃがに手を付け
けたけたと楽しそうに笑う姿を見て
少しでも長く、続けば、などと考えてしまっていた
その考えを払い改めるのだった
俺は、
俺の身は、戦いの運命に飲み込まれ切っている
自分の身をいつまでもこんな
暖かい日差しが届くような所に置いておくわけにはいかないのだ
既に友人に頼んで、結界を施した新拠点は用意してもらっている
ただ、気がかりなのは。
彼女が見る悪夢。
自身は問題ない、と言っていたが──
俺は、俺がそうしたいから。
多分、初めて
だれか、他人を
自分の手で助けたいと、思ったから。
ここを出ていく前に、それへと挑もうと決心をした──
「おい。何ぼーっとしてんだ。いらねーんなら、お前の肉も貰ってくぞ?」
ひょいひょいと器用に
人の皿の中から
にくじゃがの肉が抜かれていく
「
アッッッ!!!ふっざけんなオメーーーーーッ!?
もうこれ、「肉じゃが」じゃなくて、ただの「じゃが」じゃねーかッ!!!!」
その日もまだ、アヤシバ宅では
わいわいと賑やかに叫ぶ声が続いていったという

[770 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[336 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[145 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[31 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
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エディアン 「・・・おや。チェックポイントによる新たな影響があるようですねぇ。」 |
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エディアン 「今度のは・・・・・割と分かりやすい?そういうことよね、多分。」 |
映し出される言葉を見て、腕を組む。
カオリ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、橙色の着物の少女。
カグハと瓜二つの顔をしている。
カグハ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、桃色の着物の少女。
カオリと瓜二つの顔をしている。
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カオリ 「ちぃーっす!!」 |
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カグハ 「ちぃーっす。」 |
チャット画面に映し出されるふたり。
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エディアン 「あら!梅楽園の、カオリちゃんとカグハちゃん?いらっしゃい!」 |
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カグハ 「おじゃまさまー。」 |
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カオリ 「へぇー、アンジニティの案内人さんやっぱり美人さん!」 |
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エディアン 「あ、ありがとー。褒めても何も出ませんよー?」 |
少し照れ臭そうにするエディアン。
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エディアン 「間接的だけど、お団子見ましたよ。美味しそうねぇあれ!」 |
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カオリ 「あー、チャットじゃなくて持ってくれば良かったー!」 |
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カグハ 「でも、危ないから・・・」 |
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エディアン 「えぇ、危ないからいいですよ。私が今度お邪魔しますから!」 |
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エディアン 「お団子、どうやって作ってるんです?」 |
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カオリ 「異能だよー!!私があれをこうすると具を作れてー。」 |
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カグハ 「お団子は私。」 |
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カオリ 「サイキョーコンビなのですっ!!」 |
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カグハ 「なのです。」 |
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エディアン 「すごーい・・・・・料理系の異能って便利そうねぇ。」 |
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カオリ 「お姉さんはどんな能力なの?」 |
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エディアン 「私は・・・アンジニティにいるだけあって、結構危ない能力・・・・・かなー。」 |
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カグハ 「危ない・・・・・」 |
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カオリ 「そっか、お姉さんアンジニティだもんね。なんか、そんな感じしないけど。」 |
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エディアン 「こう見えて凶悪なんですよぉー??ゲヘヘヘヘ・・・」 |
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カオリ 「それじゃ!梅楽園で待ってるねー!!」 |
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カグハ 「お姉さん用のスペシャルお団子、用意しとく。」 |
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エディアン 「わぁうれしい!!絶対行きますねーっ!!!!」 |
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エディアン 「ここじゃ甘いものなんて滅多に食べれなさそうだものねっ」 |
チャットが閉じられる――