
…
……
………
…………4時間目。
「……こんな景色は━━━━━━だ、私の居たかっ━━━━━━"あの世界"しかな━━━━のに……。
………もう響奏も否定も…━━━━━━━━、勝っても負けても……ワー━━━━━━━━倒しても私が奪わ━━━━━━ない。」
「…私の━━━配、ねぇ。
心配かける━━━━━━━━━━━━方なんだけどな、何も知らないと暢気で━━━━━━━━━はこっちの私も同じだっけ。」
「……おっけー、━━━━じゃ"交代"。
……思うんだけど、別の━━━━━━━━━━━━━━ら協力するべきだと思うけどね、私と"そっ━━━━━━━━━━━━━━別人だけどこんなに協力してる━━━━━━━━━━━━━━?"夏海"。
…でしょー?そう思うよね、まぁそれ━━━━━━━━━━━━━━行こう?響奏側…で少し━━━━━━━するか。」
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夏鈴 「━━━━ッ!?」 |
20日分の記憶…と言うにはあまりに膨大な、まるで数人分の記憶の奔流に思わず片膝をつく。
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夏鈴 「……何今の……?どっか知らない人間と混線でもした…?」 |
身の覚えの無い銀の鍵を手で弄びつつ、誰かと会話しながら行動する人影だけが脳裏に焼き付き、暫し呆然とするが…すぐに立ち上がり、記憶を脳内で整理する。
……合宿の事は置いておこう、楽しいって感じられる思い出だけど……今ここでそれに浸るのは場所と状況が許してくれそうにない、それでも……例え"夏鈴"としての思い出じゃなくても、別の世界線で経験したモノと似た記憶にほんの少しだけ表情が緩む。
でも……その分自分を縛り上げて、みんなにも何かしらの遺恨を残しそうで正直怖かった。
私は既に一度……いや、何度も経験してるからソレを知ってる。
そもそも『否定の住人』だから救われないというのは間違いだ、例え世界から拒絶されても受け入れてくれる人間を私は知ってる。
ソレと同時に………『否定の住人』故に意図せず奪ったり裏切ってしまった思い出や想いがある事を……。
『響奏の住人』のほとんどはきっと知らない、『否定の住人』の中にもその立場故に苦しんで葛藤してる人間が居る事を。
『否定の住人』のほとんどはきっと知らない、『響奏の住人』の中にも自分達を理解し、否定せずに受け入れてくれる人間が居ることを。
『響奏の住人』も『否定の住人』もきっとほとんど知らない
両者の世界に敵対して恨まれる事になっても本当に救いたい人達の為に歩くハザマの人間を。
━━━━この世界はとても優しくて━━━限りなく残酷だ━━━━。
次は……まぁ……こうなるよね、"冬鐘 夏海"って人間がイレギュラーが重なって出来上がっただけのモノだとしても、『人格と意思』が無い訳じゃない、それは…別の世界線の"雪瀬 かりん"って人物の事で嫌って程身に染みてる。
……向こう側はどう答えを出すやら、きっかけを作ったのは私だけど、答えを出すのは━━━……。
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夏鈴 「なんだかこれじゃあ私が悪者みたい…っていうか、悪者なんだよね…はぁ…。」 |
勿論こんな事をしたのにはきちんと理由がある、こっちでシエルには言ったけど……確かに"冬鐘 夏海"という人物は存在しないし、ただの作り物だ。
そんな作り物でも……誰かが必要とするならこっちが一方的に消すのは罪悪感が無い訳じゃない、だから選択する機会を作った…ただそれだけの事。
そしてもう一つ━━━━。
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夏鈴 「《並行事象記録再生機》 事象記録再生日:20--/--/--/対象:《"雪瀬 夏鈴"》」 |
1時間前から……ずっと気になってた『侵略戦争が終わった後の日付』を対象に異能を発動させる。
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《Error》 |
『存在しないもの』はこの異能でも再生できない、つまり………今の状態だと"そういう事"なんだろう。
自分の命が惜しくないと言えば勿論嘘になるけど…奇妙な話だけど別の世界線で何度も死んでる記憶があると、「あぁ、また死ぬのか」と、どこか楽観的に思えるから不思議なもんだ。
でも実際に━━━自分が一番欲しかった光景は二度と見れないし、本当はもう侵略の勝ち負けもソレを裏で操ってる相手の事もどうでもいいのかもしれない。
それでも足掻いてるのは……向こうの思い出が今でも大事なのと、多分小さい頃…『玲瓏の世界』でまだただの人間だった頃に知らない誰かとした約束のせいだろう。
もう内容もほとんど覚えてないけどそれでも━━━
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夏鈴 「…………手を差し伸べよ、か。続きの言葉もあったはずだけど……なんだったかな…。」 |
自分でもどうしてそんな言葉に従って無駄な事をしてるのか分からないけど、その約束自体はとても大事だった気がして……諦めれないでいる。
………なんか無性に自分の事が嫌いになった。
……後は…そうだ、1時間前に……モロバ君を巻き込んだら悪いって思ってたはずなのに、まさかあそこで第三者が顔出してくるとは思ってなくて反射的に口を滑らせちゃったけど大丈夫かな……?
彼は強いけど……身体も心も無敵な訳じゃない、つい忘れがちになっちゃうのは…別の世界線の癖が自分に残ってるからだ。
……だから忘れないようにしよう、『今の自分は響奏と否定の両世界の敵で、どっち付かずの人間だ』って事を…。
そして少なくても自分達"アンジニティ"はきっかけはどうあれ被害者ではなくて加害者なんだって事を…。
ハザマの記憶
━━━10時間目(4時間目)
決着の刻まで後
━━━33時間