
…
……
………
一瞬だけど……"普通の人間だった頃"の出来事を思い出した…。
「私の名前?んっと……夏鈴。
……ううーん…?お父さんとお母さんは多分死んじゃった、"寂しくないの?"って?ちょっと寂しいけど…お話出来る人多いから大丈夫!
……"パンは好き?"って……うぅ~ん…普通!
………妹がいるんだ?いいなぁ……、ところでその背中の羽触っても良い?」
あの頃の私は今以上に何も持ってなかったし、いつからか名前も知らない話し相手の一人の声も姿も見れなくなったけど……きっと幸せだったと思う、楽しそうに話してたから。
……3時間目。
七夏ちゃんが来たのは良いとして……
私の神経を逆撫でした挙句、シエルが庇って連れて行ったあれは何?
ちょっと本気で別行動も視野に入れないとダメな気がしてきた。
挑発的な言動と行動からこっちの敵として認識するのも難しくなかったし、次あんな事があればその時はどうなるか分からないけど……同じアンジニティ側からそういう事される辺り、やっぱり何処にも味方が居ないなって思う。
もっともそんな事は元から期待もしてない…と言ったら嘘になるけど、それでも自分の覚悟は本物のはず。
………愚痴はこれくらいにしておこう。
とりあえず現状の整理から。
鳴ちゃんの方は……相変わらずだったけど少々興味深い答えが返ってきた、てっきりメイルさんの事を把握してるのかと思ったらそんな感じでもない、かと言ってメイルさんの方は鳴ちゃんの事を知ってるし……これは一体どういう事なんだろう……?
次にセツナさん、実際にこちら側で会ったのは予想外だったけど……穏便に話が済んで良かったと思う半面、あまり頼りっぱなしも危ない気がするから自制しないと…。
あくまで向こうは響奏の世界の人間であって否定の世界の人間じゃないし、もし私なんかと話してるところが見つかって有らぬ疑いが掛かったら目も当てられない。
最後にモロバ君、なんていうか………彼は本当に相変わらずだなって思った。
恐らく別の世界線の記憶も保持してると見て間違いなさそうだけど……私が否定の世界の方に改めて戻ったのを確認し、それでも話を聞いてくれるというのは自分にとっては救いだけど…もし私が下手な事言って例のワールドスワップを起こした"第三者"に目を付けられるような事になれば後悔しても仕切れない。
それに…別の世界線の記憶があるって事はきっとこの世界線で居ない人間の事も覚えてるはず……
だから私はもう"大事な友達"の名前を彼の前で出すのはやめよう…。
………それにしても、迷ってるつもりも甘いつもりも無いけど………他から見たらやっぱそう見えるのかな……。
ハザマの記憶━━━
9時間目(3時間目)
決着の刻まで後━━━
34時間
━━━━ふと気づいた事がある。
私は今、別の複数の世界線の記憶を持っているけど……もしこの世界線で私が死んだらどうなるんだろう……?
そもそも私は……本当に……いや…やめとこう。
考えれば考えるほど不安に駆られるが……勿論答えなんて出ない、それでも分かってる事もある。
一つは『次は』なんてモノは無いし、勝っても負けてもこれが最後という事。
二つ目は………自分が一番欲しかったあの景色はもう二度と見れないという事…。
「でもやっぱり…………普通の人間として……生きたかったな……。」
侵略があったから…あの景色が見れたのに、侵略のせいでそれに手が届かないのは……否定の世界に堕ちた自分には相応しい罰なのかもしれない、だって━━━━
そんな言葉が…聞こえた気がした。