やっほー!
蟻塚カゲロウの日記だと思った?
残念、ミドリ・ハタオリだよ!
ひょんなことからカゲロウの家に居候することになった、
快楽殺人鬼さ!
殺しのジャンルは「犯罪歴持ち」!
過去に悪いことしていた奴らをめちゃくちゃにして
殺すのが趣味なんだ!よろしくね!
ん?一つ屋根の下で暮らしているから…カゲロウと恋人なのかって?
まっさかぁ〜wナイナイ!カゲロウと恋人になるなんて、
余程の変人に決まってるよ、僕は無理無理ww
ちなみにカゲロウは殺し仲間ではない。
家に住まわせてくれる、気前の良い愉快なお友だち。
彼も僕のことをそう思ってるんじゃないかな?
じゃなきゃ、とっくの昔にお縄についてるんだと思うよ。
だってアイツ、そーゆー奴だから。
…とまぁ、今でこそこんなに仲良しだけど、
ホントはね、初めて会った時は殺そうと思ったんだよ!
なのに、いつの間にか仲良くなっちゃった。
僕もびっくりしてるんだよ。今でも。
そんな殺人鬼の僕が、どうして彼の家に居候することになったのか。
カゲロウは僕の殺しの現場に偶然通りかかっただけの一般人だった。
普段は異能の透過で上手く隠れながら殺しているんだけど、
その時はテンションが上がって、調子に乗って透過を解いてしまった。
そこに、カゲロウが運悪く通りかかったんだ。
さっきも言った通り、殺そうかと思ったよね!
だって死人に口無し、現場を見られたんだし。
ここで目撃者を逃すほど阿保ではなかったし、まだまだ殺したりなかったし。
生かしておく理由はなかったからさ。
地面に押し倒されて殺人鬼(僕)にマウントを取られて、
どんな怯えた顔をしてるのかと思ったら、
カゲロウってば静かな顔をしてるんだ。
怯えているわけでもない、静かに僕を見据えてるんだ。
彼の頭に銃を突きつけながら、思わず聞いちゃったよね。
「何を考えてるの?」
そしたらカゲロウ、僕に手を差し出した。
何て答えたと思う?
『助けてくれ』でも『見逃してくれ』
でもなかった。
ただ、
「俺の家に来い」
だよ!?
普通殺人鬼を己の家に入れようとするかね!?
僕は恋人じゃないし、ましてや出会いたてほやほやの赤の他人なんだよ!
これって、
『平々凡々な生活をしていたのに、突如イケメンに出会って一目惚れされる展開』
かな!?
えぇ、僕ってば少女マンガの見過ぎじゃない!?
それにそれに!隙を見て通報するよね、普通!
(殺人鬼が言うのもなんだが)常識的に考えて、
殺人鬼を己の生活スペースに招き入れるなんて、
到底信じられるわけがない!
…と、思うはずなのだけれど。
何でだろう。
いつの間にか、僕は彼の手を握っていた。
彼の手が、あたたかいことに安心した。
死がすぐ隣にあるっていうのに、表情ひとつかえない。
不気味だけど面白いって思ったのかもしれないね。
けれど…不思議だね、その手を信じて良いと思っちゃったんだ。
後に知った事だけど、カゲロウはアンダーグラウンドで
知る人ぞ知る”死体アーティスト”だった。
人の死をデザインする彼が、死体に驚かないのは当然のことだった。
教師の癖に夜には死体に触れ、闇の住人に守られて生きる色男。
ああ、もうめちゃめちゃだ。
こんな出鱈目なやつ、見たことがないよ!
頭が痛い。ああ、本当に変なヤツ!
そう思った時点で、僕も彼に惹きこまれていたんだろうな。
この、蟻塚カゲロウという男に。
こうして、殺人鬼と死体アーティストの
奇妙な暮らしが始まったんだ。
それがこの世界での、僕らの出会い。
grasshopper
快楽殺人鬼。
最近、スーパーの安売りで買ってきた卵(増量パック)が無残にも散らばっている現場を発見した。悲しい。
…どうしてこんなことに。
悪人連合で遊んだ帰り道だった。
コンビニで僕の分のデザートと、カゲロウのウ⚫︎ダーインゼリーを買って街灯の下を歩いていた時。
ぐにゃりと世界が歪む感覚がした。
びっくりして、思わず目を瞑った。
不気味な感覚が過ぎて、次に目を開けた時には。
世界は荒廃していた。
同時に、ここは自分の居た世界でないことに気づく。
が、それを考える程の余裕は、僕にはなくて。
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ミドリ・ハタオリ 「…!カゲロウ!!!」 |
果たして、隣人は無事だろうか?
-0:00~1:00-
カゲロウがアンジニティなのは割とすんなり納得できたよ。
ああ、やっぱり。って感じ。
皆もそう思ってたでしょう?僕もだよ。
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阿闍砂陽炎 「…答えられないか。鬼が怖いのならさっさと消えるが良い。俺の気が変わらぬ内にな」 |
何者か?
そんなの、快楽殺人鬼、僕はミドリ・ハタオリ以外の何者でもない!
<Blood is thicker than water.>
けれど、カゲロウのこの反応。
これは明らかに、”逃げ”の姿勢だ。
どうして僕から逃げる必要があるんだ?カゲロウ。
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ミドリ・ハタオリ 「…なぁ、尻尾巻いて逃げるのかよ?真の悪から」 |
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阿闍砂陽炎 「…なんだと?」 |
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ミドリ・ハタオリ 「”泣く子も黙る殺人鬼が、真の悪を見ただけで臆してしまったのか? 情けないなァ!”」 |
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阿闍砂陽炎 「…」 |
息が止まる。
風を切る音が聞こえると同時に、腹に重い衝撃を受ける。
木の葉のように舞う身体。
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ミドリ・ハタオリ 「かっ…、は…ッ」 |
分かりやすいなあ。
怒るとホントに、おっかないんだから。
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阿闍砂陽炎 「”音速”ですら動けない、今の貴様に用はない」 |
音速?…はは、なにそれ。
そんな動きができたら、人間じゃないっしょ…。
あ、そうか。カゲロウはもう人間じゃないんだ。
虫のように地面に叩きつけられる。
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阿闍砂陽炎 「…………」 |
這いつくばる僕を横目に、怪物になった隣人は去っていく。
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ミドリ・ハタオリ 「くっ、うう……」 |
カゲロウが、本当にイバラシティとの侵略戦争に勝利したいのであれば、
きっと僕を殺すべきだった。
多勢に無勢という言葉通り、戦うのならば
ひとりでもイバラシティに味方するヤツの数は少ない方が良いだろう。
なら、僕を殺さずに置いたのは何故?
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ミドリ・ハタオリ 「…、カゲロー…。僕は、」 |
改めて、君のことが知りたいと。
そう思ったよ。
いや、知らなくてはならない。
そんな気がするんだ。
彼と相対するか。
それとも彼の思い通りになるか。
僕はカゲロウのー… 【 1d2:1 】
阿闍砂陽炎
卵パックを割ったのがバレてしまった。
俺は悪くない。だって、蓋が空いていたんだもん。