化物たちに囲まれたけど、何とか協力してくれる人…人?達が見つかって、どうにかなった。
Cross+Roseでの声を聞く限りだと、ティーナちゃんやリンネちゃん…他の教団の皆も、何とか無事みたい。
合流できたのは…まず、鈴さん。たしか、創藍高校の人。
それからソラコーの、ミクル先輩と、鳴ちゃん…なんだけど。
いつもの知っている姿じゃなかった。これがアンジニティって人達なのかな。
身近な人がもしもアンジニティだったら…なんて事、何度も考えたりはしたけど。
……やっぱりいきなりそんな真実を突きつけられても、頭の整理、つかないよ。
でも、例えアンジニティだとしても、うちは、友達なら一緒にいたい。
侵略に加担するでもなく、うちらに力も貸してくれるって言うし、信じて良いんだよね。
ふとみんなの方を振り返って、思った事が一つ。
うちは死神憑きの半死体。一緒に戦ってくれる皆は、獣の耳が生えた女の子と、吸血鬼と、ドラゴン。
……集まったメンバー、何気に凄い事になってない?
浸食率:[|||||||||||||||| ]
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◇ある魔女の記憶①
・〇月×日
私は捨てられた。魔女として弱すぎる、何の役にも立たない存在だったから。
同族からも、親からも見捨てられて、一人になった。
いっそこのまま朽ちてしまった方が楽だったかもしれないが…私は生きたかった。
復讐とか考えたつもりはなかったが…弱いからという理由でこんな所で何もしないまま終わるのが、あまりに癪だった。
・〇月〇日
腹が減った。ずっと何も食べてない。ここは元々不毛の地だったし、喰える植物も殆どなかった。
歩いていたら、目の前に鴉の死骸があった。ふと、ある考えが頭を過る。私は力がないから、誰かから力を奪って生きることができない。だが、誰かが仕留めた死骸からなら…効率は悪いが、得られるんじゃないか。
――この日から、私は屍肉を漁るようになった。
・〇月△日
あれから色々な死骸を喰らった。動物も、人間も、魔物も。人間や魔物を喰らった時は得られる力が多かった。同時に、何かから外れていく感覚もあったけど。今更だ、こうでもしなければ生きられない。
私の住処に、一人の人間の少女が迷い込んできた。
なんでわざわざこんな所に、しかも人間からは忌み嫌われる〝魔女〟の元にきたのか…。
――話を聞けば、彼女も生まれつき体が弱く、同族から呪われた子として迫害され、ここまで逃げて来たらしい。…私は住処に住まわせることにした。その子に自分と同じ物を感じて、放っておけなかったのもある。それに彼女は…自分が弱っていっている身にも関わらず、私に良くしてくれた。
何故そうするのか聞いた。返って来た答えは以外な物だった。
『魔女だとか人だとか関係ない。苦しんでいるなら助け合いたいから』。
その感情をすぐには理解できなかったが…その日私は初めて、自分以外の誰かを信じてみようと思った。
・×月×日
暫くの時を■■■と過ごした。その時間はとても楽しかった。
でも、あの子はやはり長い命では無かった。目の前には横たわり、死を待つだけの少女。
あの子は最後に私に願った。
『貴女は長く生きられるでしょう。私を喰らって生き延びて。そして、できるなら…いつか、生まれ変わった私を探しに来て。その時はまた、一緒に居ましょう。』
その言葉を最後に■■■は動かなくなった。私は泣き叫びながら、■■■を喰った。
・△月△日
あれからどれだけの月日が流れただろう。獣を喰った。人を喰った。魔物も喰った。悪魔も喰った。
――私は、誰だ。かつて私を捨てた奴らを見返してやれるほどの力は得られたけど、その代償だろうか。色々喰らいすぎて、自分が誰だか分からなくなっていた。〝屍食の魔女〟なんて呼ぶやつもいたっけ。
・△月〇日
私の前に神を名乗る存在があらわれた。何でも、魔女、いや、生きる物としての範疇を超える力を得過ぎてしまったため、その罪に罰を下したいらしい。気が付けば死にたくても死ねないような存在になった私にどんな罰を下すのかと思えば…それは決して消せない不死の呪縛。
そしてそれをもってして、〝冥翼の使者〟を名乗って死神の手伝いをしろと来た。それで罰になるのかとも思ったが、まともな精神ではなかなかこなせない仕事らしい。
――なるほど、精神の壊れた私にはおあつらえ向きじゃないか。逆らう事も出来ず、とりあえずその罰に従う事にした。
・◇月□日
死神の仕事中に現世に降りて来ていたら、まさかのあの世に戻れなくなった。事故か、あるいは誰か私を利用しようとした奴の罠か…。私に恨みや嫉妬を抱く者は少なくなかったし、こういう事をされる可能性も十分にあった。…それに、ただのお手伝いみたいな身だ、切り捨ててもそこまで支障のない身だろう。死神としてもまだ力が弱く、戻る事も、明確な身体を持つことも出来ない私は、この世を彷徨う事にした。
――ここは確か、日本、だっただろうか。
周りには田畑だらけ。しかしそのほとんどが不作で苦しんでいる様で。
だけれどそこで何とか生き延びようとする人間達に、昔のどん底でも生きようとしていた自分やあの子が重なってしまい…気まぐれだが、助けた。
……感謝されたが、面倒な事に祀られてしまった。私は堅苦しいのは嫌いだし、そもそも死神なんだけど。
・2008年10月31日
いつもの様に、顕現出来ない見えない体で村を見回っていたら、声が聞こえた。
死に瀕した少女の、苦痛の叫び声。収穫中のトラクターに巻き込まれ、身体が半壊する程の重傷だ、どうあがいても助からないだろう。せめて真っ直ぐあの世に行けるよう祈ってやろう、そう思ったが、その魂を見て気が変わった。
――この娘に眠る力、私と相性が良いらしい。魂の契約を結べばきっと私にも多少の力が得られるだろう。
……それに、見間違えるはずがない。■■■、あの子とそっくりの魂だった。
治療は出来ないが、死を迎えぬ様、魂を留めさせることはできる。私欲半分、あの子との約束半分で、瀕死の少女に呼びかけた。
『――まだその命を手放したくないのであれば、我が依代となり、共に生きよ。』
少女はそれでも生きたい、と受け入れた。私はその願いに応じ、魂を結び付けた。
……今思うと、これで正しかったのか、私には分からない。
私にとっては良い出来事だったが、半分死んだままのような身体で息を吹き返したあの娘にとっては…これからが地獄だったのだから。