状況は最悪の状態となった。
かりん、鳴の2人がアンジニティである可能性が高まった。
かりんは自身で名乗ってきた以上確定だろうが、鳴に関しては謎だ。
これは、メイルと名乗る女性に色々と問いただす必要がありそうだな。
不幸中の幸いなのは、2人共、こちら側の味方であると思われる点。
まあ、コレに関しても鳴……いやメイルは不明なんだが。
対応の仕方からして、敵ではないと思いたい。
……まいったね、出来る限り明るく元気に探索を進めて、心の穴への負担を減らしていきたいんだが。
正直、今こうして日記を書いてるだけでも辛い、今すぐ甘いお菓子をたらふく食べたい。
でもそれは出来ない、万が一のことを考えればここでむやみに異能の使用回数を減らすのは危険だろう。
今の所、1時間ぐらいでイバラシティに帰還出来てるようだが、いつまでそれが続くかはわからない。
いざという時にみんなが食糧難で動けなくなっては困るのだよ。
――だからこそ、今ここで穴をふさぐために甘いものを食べるわけにはいかない。
右鞠ちゃんがこういう時にそばにいてくれれば心強かったが。
彼女はどうもこの世界に招かれてないらしい、本来なら喜ばしいことだが……。
許されるなら、彼女に会いたいと願ってしまう。
他の子達にも頼るわけにもいかないしな、おそらく、他の子達も知り合いや家族、友達がアンジニティだったと知り、かなり疲弊してるはずだ……。
むしろ大人である私がしっかりしないといけないだろう。
《右鞠》
今私が出来ることはひとつ、彼女に出会えるまで、イバラシティに帰還するまでの間、この心の穴が広がりすぎて再起不能にならないように気をつけること……。
《かりん・鳴》
極力あの子達の前でも明るくいけるように努めていこう、穏便に、平穏に……。
正直、出来る自身がない、泣きじゃくりそう。
それは避けたいなあ……。
兎にも角にも、あまり悲観しすぎるのは心の穴のためにもよくない。
そうさ、なにも悪い知らせばかりではない。
結乃ちゃん、ミロワール君、くろさんの安否が確認出来た。
ゾード達とも無事合流出来たし、そこらへんは素直に喜びたい。
それと、私も今の所アンジニティではないのは確かだ。
これでくろさんに辛い思いをさせることもないだろう。
よかった、本当によかった……。
もし私までアンジニティだったら……いや、それは考えたくない。
だって、今までみんなとの出会いが全部偽りのモノになるんだろう?
かりんと出会って、鳴やいろんなお客さんと出会って。
ゾード君や結乃ちゃんがバイトに来てくれて……
右鞠ちゃんに恋をしたことも。
今もなお、彼女のことを想い続けているこの心が、全部偽物の記憶だったとしたら……。
――ダメだ、今日はどうも思考回路がマイナスの方向にいってしまう。
日記はここらへんにしておいて探索に出かけよう、何かしらの手がかりがつかめればいいが……。