第三話 花園機構とミリー・ブロッサム
「こうなってしまったのは私のせい、あくまでも私のせいなんです。世界花は悪くないのです」
ネイキッドブレイブは基本的に5人の小隊からなる部隊で構成されているのですが、P-BLOODはその特性上得意とする能力分野があったりします。
今私が話をしているのは「花園機構」と呼ばれる、植物に関する能力者が集まり、「植物の育成バランスを崩さない」ということを目的として動いています。
そのメンバーは第二部隊第三席の私、ミリー・ブロッサムを筆頭とし、第三部隊第四席に属し、私の妹であるフロワラ・ブロッサム、第五部隊副隊長リリィ・クインス、第六部隊副隊長エンテ・マジラル、第七部隊第三席ナナカ・リンドウの5名で構成されています。
「まあ、現在の状態は仕方ないと言えるでしょう。人は誰しも失敗するものです。
P-BLOODとなってしまった私たちを人として扱っていいかは別として、ですが」
メンバーの中で最も落ち着いているエンテさんはこのような意見でした。
「というかミリーちゃんも世界花も悪くないよー!だってそもそも、この『花園機構』での話し合いの結果、植物のバランス自体には問題ない、って事だったでしょう?」
「植物のバランス自体は現状も問題ないですわ。ただし、植物ではなく、この世界のバランスが危うくなっている、というのが笑えない話なのですけれど」
「リリィさんはミリーちゃんに何か恨みでもあるの!?そんなふうに言うことないじゃん!!」
リリィさんとナナカさんはこのような言い争いになっていたりします。
「ねえ、ミリーお姉ちゃん。この『花園機構』では、世界花を枯らす派は『私』『リリィ』『エンテ』、枯らさない派は『お姉ちゃん』『ナナカ』…人数的には枯らした方がいいという結論になるのだけど」
フロワラは10歳にして状況をよく見る力がついています、これはおそらく第三部隊の教育によるものなのでしょう。
「うん、それでも育てたのはお姉ちゃんだから、最終権限はお姉ちゃんにあるの。
そもそもこの『花園機構』のリーダーはお姉ちゃんなの」
ええ、ですから…
「すみません皆さん、多数決において枯らすべき、というのは分かっています。
しかし、私は自分の子供を殺すようなことはできないのです」
枯らす派の方々も積極的な人と、消極的な人がいます。
積極的に枯らす派は『リリィ』と『エンテ』、フロワラだけが「消極的な賛成」なのです。
「んー。フロワラちゃん、私から提案があるんだけど」
ナナカさんからの提案が、最終的な結論になりました。
「ミリーちゃん、多分止まらないと思うんだ。そしてあたしは『柚子島雄太』の言ったことが全て真実とは思っていない。
枯らせばOK、確かにそうかもしれない。
でも、枯れた植物って最終的には肥料になるじゃない?
……というのは、ミリーちゃんのところのグラスタ君とも話した結果の受け売りなんだけども。
むしろ枯らされることで、世界花の能力が取り返しのつかないことになる、その可能性も私は見ている。
だから、ミリーちゃん達に行かせてあげて。
もし、戻れなかったら最終手段として枯らしていいから」
この結論が出た後、部屋には私、フロワラ、ナナカさんの3人が残りました。
「フロワラ。ナナカさん、本当にありがとう…」
「まー、あの二人はミリーちゃんより年上だからね。それに、リリィさんとミリーちゃんは主にガイさんの関係で仲は悪い方だし」
「エンテさんは第六部隊が元々海賊団だった時に副船長とメイドを同時に務めた冷静な方なの。ゆえにより効率的な判断を下すだけなの。…そういう意味では、ナナカお姉ちゃんとグラスタお兄ちゃんに感謝すべきなの、お姉ちゃん」
私は感極まってフロワラを抱きしめる。
「わ、お姉ちゃん、いたいのー!いたいの!!」
「頑張るからね、フロワラ。お姉ちゃん、頑張ってくるから……」
「お願い。世界樹を守って……」
それからの私は必死に仲間になってくれそうな方々を探しました。
アンジニティにおいてアンジニティを裏切るという提案はかなり無茶なものがありましたが、何人かは話が通って無事協力を得て…。
今も多分、世界花のお世話はフロワラとナナカさんがやってくれています。
私は、私のやれる範囲で頑張って、この戦いに勝利しなければ……!
これは。私のわがままなのだから。