第四話 叡智の書庫とグランバスタ・ダブルシザース
「……なるほど。やはりそうだったか」
俺はグランバスタ・ダブルシザース。
俺たちの現状の問題である「世界花」……。
その真実を知るために、俺は自分なりに各種書物をあさっていた。
そしてこの書物がある部屋…部屋と言っていいのだろうか。
俺たちのいた世界だともはや驚きもない話だが、「柚子島雄太」から譲り受けた鍵。
その鍵で向かった小さな小さな世界。そしてその世界は実質、図書館そのものというだけの場所であった。
ほとんど体の時間が流れるという概念がないからだろうか、お腹は空かない。
ただ、知識だけを貯めこむことができる。
結果、分かったのはこのような内容だった。
・P-BLOODには正数血と虚数血がある
・その分類はP-BLOODにかかる前の生き方にあるらしい
・理由は後に記すが、うちのギルドのネイキッドブレイブには「正数血」しかいないという幸いな結果であった
・正数血の特徴として、病の発症後の超常能力は「死亡時には解除される」
・虚数血の特徴として、病の発症後の超常能力は「同じ世界に生まれ変わった時には形を変えて残り続ける」
・虚数血がいないという幸いな結果、それは虚数血を持つ運命にある者は全ての次元、時間において3名しか存在しないから。確率的には当たらないのがほぼ当然と言わんばかりの数だが
「……ここまでは理解できただろうか。いや、理解できなかったとしても。ラクベル達に伝えるべきはこの後の内容だ」
・サーディが殺した一国の姫が「虚数血」の持ち主である
・最初の能力は「予知能力」、世界花になった時の能力は「アンジニティを呼び寄せる能力」
・世界花を枯らす…つまり殺す選択肢を取った場合に発動してしまう能力は「即座に俺たちの世界、エルタ・ブレイア分離世界番号106689が壊滅するという能力」
「つまり、ミリーが植えてしまった時点で、いや、種子が生まれた時点で、現状では詰んでいるのだ…
今俺たちにできることは……」
とにかく、アンジニティの戦力を削ぐことだけだ。
後はこの事実を踏まえたうえで、無理やりにでも花園機構のメンバーの誰かにミリーの味方をしてもらわねば。
……しかし、誰がいい……?
そう思いながら、図書館を出て考えていると、俺たちがいた世界のギルドの寮、俺の部屋にいた時にチャイムが鳴る。
「誰だ?」
「ネイキッドブレイブ第七部隊第三席、ナナカ・リンドウです。ミリーちゃんが思い詰めてたから助けたいのだけど、知識で頼りになりそうな人が真っ先に思い浮かんだのが貴方だったので……」
運がよかった。この子ならおそらくミリーを信頼し、上手い方向に話を持って行けるだろう。
その結果は、前回見てのとおりである。
問題は、「ますます負けられなくなった」という事だが。