❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
❖某日/イバラシティ某区/ 真月姫家 邸宅 西棟❖
 |
柘榴 「 ……確かなのですか?」 |
 |
狗神 「 ええ。"その筋"の清掃業者を何件かあたって、裏を取りました。 マガサ区センチュリーコーポA、304号室。 女1人と女子1人の遺体跡をそれぞれ清掃。遺体は身元不明の行旅死亡人として火葬されています。」 |
 |
狗神 「 身体的特徴からいって、まぁ……まず間違いでしょう。」 |
 |
黒咲 「 ……」 |
洒落たロングテーブルの上に、狗神所長が何枚かのスケッチを広げてみせた。
鼻筋のホクロが特徴的な女性と八重歯の少女、それぞれの似顔絵が写実的なタッチで描かれている。
所長が清掃人の"記憶に潜って"目撃した、2人のデスマスクだ。
依頼された探し人の顔写真と特徴が一致している。
つまり、真月姫家 現当主の妾とその娘というわけだ。
本妻である依頼人、真月姫 柘榴 (まがつひ ざくろ)。
今、ロングテーブルをはさんで向かい合う、この女性の胸中はいかなるものか。
異能封じが施されているこの応接間では、その感情を読み取ることはできない。
丁寧な物腰から滲む威圧感と鋭い目つきに晒されていると、
やましいことがなくとも胃がキリキリと痛んでくる。
血統至上主義である真月姫家にとって、妾は容認された制度らしい。
現当主もたぶんにもれず、複数の妾と子供を設けているそうだ。
それだけの家族を養う経済力はさすがの華族といったところだが、
そのうち8世帯が失踪してしまい、行方がようとして知れなくなった。
その捜索依頼が舞い込んできたのが、去年の暮れごろから。
当初は、所長が個人的な依頼として受けていたものを、
人手が欲しいと私まで引っ張り込まれてしまった。
正直、これ以上この家の人間とかかわりあうのは勘弁してほしいところだが、
この蛇の巣に所長1人を放り込むわけにもいかない。
特別手当に焼肉食べ放題で手を打ち、しぶしぶながら助手を買って出たのだった。
 |
柘榴 「 転居届は提出されているのですよ?」 |
 |
狗神 「 提出日は、清掃日時よりも後。 つまり、二人の死後、何者かによって提出されたことになりますな。」 |
 |
柘榴 「 ……」 |
 |
狗神 「 今のところ、裏が取れているケースはこの1世帯だけですが。 おそらく、他の2世帯、6人も……。」 |
 |
柘榴 「 ……考えてを聞かせていただいても?」 |
 |
狗神 「 まだ憶測の域をでませんがね。死を隠蔽するならまだしも、転居届の工作も行っている。 彼らに、この街で消えてもらっては困る。そのような意思が働いているんでしょうな」 |
 |
狗神 「 たとえば、そう……スキャンダルを避けたい、だとか。」 |
妾の失踪と、その揉み消し。
スキャンダルを恐れての工作だとすれば、それはもう、
あんたの家のだれかが関わってますよ、と告げているようなものだ。
 |
柘榴 「 はっきりと仰るのですね。」 |
 |
狗神 「 奥様もお人が悪い。ここまでは察しがついていらしたでしょうに」 |
つまり、証人に仕立てるために、私たちを利用するつもりなのだ。
 |
柘榴 「 ……調査を続けていただけますね?」 |
 |
狗神 「 ご依頼というのであれば。ですが、この先……なにが出てくることやら。 奥様のご都合の悪い結果になったとしても、責任は負いかねますね。」 |
大方、現当主の弱みを握って、家業の覇権を握りたいといったところだろう。
 |
柘榴 「 構いません。一族の者が悪事に手を染めているとしたら、それを剪定するのも一族の務めです。 ひいては我が家の未来――そしてなにより、瑠璃子の将来ためにもなるのです。」 |
 |
黒咲 「 ……」 |
たぬきババアめ。

[787 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[347 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[301 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[75 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
ザザッ――
画面の情報が揺らぎ消えたかと思うと突然チャットが開かれ、
時計台の前にいるドライバーさんが映し出された。
ドライバーさん
次元タクシーの運転手。
イメージされる「タクシー運転手」を合わせて整えたような容姿。初老くらいに見える。
 |
ドライバーさん 「・・・こんにちは皆さん。ハザマでの暮らしは充実していますか?」 |
 |
ドライバーさん 「私も今回の試合には大変愉しませていただいております。 こうして様子を見に来るくらいに・・・ですね。ありがとうございます。」 |
 |
ドライバーさん 「さて、皆さんに今後についてお伝えすることがございまして。 あとで驚かれてもと思い、参りました。」 |
 |
ドライバーさん 「まず、影響力の低い方々に向けて。 影響力が低い状態が続きますと、皆さんの形状に徐々に変化が現れます。」 |
 |
ドライバーさん 「ナレハテ――最初に皆さんが戦った相手ですね。 多くは最終的にはあのように、または別の形に変化する者もいるでしょう。」 |
 |
ドライバーさん 「そして試合に関しまして。 ある条件を満たすことで、決闘を避ける手段が一斉に失われます。避けている皆さんは、ご注意を。」 |
 |
ドライバーさん 「手短に、用件だけで申し訳ありませんが。皆さんに幸あらんことを――」 |
チャットが閉じられる――