森から離脱した後。
なんとなく足を運んだ先には、きれいな庭園があった。
それは自然ではないんだけど。
ちゃんと見れば、丁寧に手が加えられていることが伝わってくるような。

「……何を求める若造……」

僕が求めるもの？
マスターからの依頼を達成するなら、エンブリオとか一揆成功とかだけど。
僕は――

「その意志が無駄……悟らせて……っ！！」
「……ろーうっ！！」

――僕の意志？
このまま、僕が続けていいのかな……？


そこからのことは、あまり覚えてない。
ほら、ずっと考えててさ。
フラフラしてただけなんじゃないかって、思う。

そう。僕がしっかりしないとダメなんだ。
だって。
メイもヒエンも、ずっと僕のサポートしてくれるわけじゃないんだから。
先日みたいに体調悪かったり、用事があったりするかもしれない。
だから。

僕は、ひとりじゃない。
ひとりだったら、とっくに呼び戻されてたんじゃないかな。
ただ、それでも。
ひとりでもやれるんだって。
僕に任せても大丈夫だって。
ちゃんとできるんだよって、示したかったんだ……。

"紅"く？
何だろう。どこか懐かしいような。
何かわからないけど。大事なものが、そこにあった気がするんだ。
だから、探さなきゃ。
……そうだ、森で見かけたあれも紅かった。
誰か拾ってないかな。


ハミとの交換で手に入れた。
紅葉。
紅き、モミジの葉。
その形はまるで、ヒトの手のような。
あるいは、何かの翼のような？
……翼？何だよそれ。口にしてたらメイたちに笑われるって。
危ないところだった。うん。

よし、決めた。
これを使って杖を作ろう。
手元においておけば、何かが浮かんできそうだし。

あとは、ヒエンのために用意しないと……。
どんなの食べてたっけ？
こういう時って何でもいいわけじゃなさそうだし。
森でとれるものから作ってもらおうかな。

そうして、僕たちは水辺に向かうこととなった。
ブリギットというエンブリオを探して。



『ちゅーんたー。』
「マスター、今は忙しいの。」
『かーこちゃんに大事な話があるんだけど、呼んできてくれないかな？』
「ダメですの。マスターであっても、今は面会謝絶ですの。
　きっと、考えて答えを探しているところですの。」
『ちょっとだけ、ね？ちょっとだけだから！』
「ダメ！ですの！！
　大事な話なら尚更、日を改めて欲しいですの。話は以上ですの。」

【ただいま、飛燕は食事中です。】

　矛先を虚空へ向け構えた槍を、
　　袈裟懸けに振り下ろしては、返すように振り上げる。
　　　多数の節から成る柄はその度に撓り、鞭の如き軌跡を描き。
　　　　節が擦れ合う連続した金属音を上げ、最後にはまた槍の形へと戻った。