城内には近ごろレプラコーンと呼ばれる敵が現れるらしい

僕はメルンテーゼでは出会ったことはないが、噂ではこのところよく襲ってくるそうだ。
僕の知るレプラコーン(世界によってはレプラホーンとも)は、靴作りの得意な温厚な妖精である。たまにいたずらされることはあっても、彼らの根は誠実勤勉で、戦うことは好まないはずだった。
実家の妖精屋にもお抱えのレプラコーンはたくさんいて、特に彼らはよく働いてくれるため、稼ぎ頭の一つになっていた。レプラコーンの行動原理は金貨らしく、金貨さえつめば厳しい依頼にも答えてくれた。
普段の彼らは1日あたり1人で片足分の靴を作るぐらいのペースだ。一度お偉い様からに急な依頼で翌日までに10倍の靴を作らなければいけないことあったが、金貨を積むことでしぶしぶながら受けてくれたこともあった(金貨は100倍積まなければならなかったが)。
そんなに金貨を溜め込んで何に使うのかは定かではないが、どうやら溜め込む行為そのものが楽しいらしい。

そんな彼らがメルンテーゼでは襲いかかってくる、ということは王政府から多額の給金をもらっているのかもしれない。もちろん、この世界でレプラコーンと呼ばれる存在が、僕の知るレプラコーンと同等の性質を持っているとは限らないが、一度会って話してみたいものだ。

何やら過剰な期待をしていたようです。

一度にたくさん質問されて、少し戸惑っているようです。

頭頂の一房ぴょこんと跳ねた髪が、するりと長く伸びます。

大事なことなので二回言いました。

じっと見られて、矢継ぎ早に質問されると、すぐに耐え切れなくなって、アムルはもう一度フードをかぶります。

あとは、見ての通りです、と説明を終えて息を吐いて。

もう一度、ごそごそとフードを脱ぐと、触角を見せました。
蜘蛛の触肢に似ている二対の細長い触角で、全体がふわふわした細い毛で覆われています。

触ってみると、それは小猫の手のようにふわふわで柔らかく、
触れて撫でてみると、びくびくと本人がなにか耐えている様子になるのでした。

クレーデレのその発言には、少しばかり驚かされたようだった。
呼び出されたシルウィアというエンブリオを、興味深げに見遣る。

だから、驚かされてばかりだ、と息を吐いて。