その日は酷い嵐の日だった。

ワハブの大きな身体はそう吹き飛ばされるものではないし、
雨風のなか雨具を使わずに居ることだって慣れていた。
彼の一族はそれだけ血の気がありあまって、また文明的にも栄えてはいなかった。

しかし、その彼の植えた蔦までがそこまで強靭かといえば、そうではない。
太く長く繁ってきた蔦の、その先の葉は風が吹くたびに揺れ、
いくつかは蔦から離れ地に落ちてしまっていた。

そしてまた強い風が吹き付ける。
ワハブの長い髪はごうごうと揺れ、
身体に少しの痛みと鬱陶しさを感じていた。
いっぽうの蔦は、支えの木ごと揺れ、僅かに軋んだ音を立てた気がした。

だとしたらどうしようもないな、と呟くワハブ。
とはいえ、この手の面倒はみたことがない。
嵐のときに他のものに気を遣った記憶など殆どない。
今もただ目の前の蔦を見つめるばかり。

またひとつ、突風が吹きつける。
蔦が風に揺れる。

ゆれてゆれて、大きくゆれて

折れそうなところで突然、揺り戻される。
揺り戻された蔦に、ふわりと何かがかかったように見えた。

それは徐々に覆いとしての形を見せ、激しい雨風から蔦を護るのだった。

（ぽそりと小さく呟きつつグラスの中の氷をかちりと揺らす）

（判りやすいげんなりした顔に小さく笑いつつ）

――昨日探索を終えてからの話

ふうわりと掌の上で輝く白い球体にニッコリ頬を緩めると
首を傾けて軽い一礼を。

シュガーは怨霊と会話をしています…