「くっ……」

瞬く間に決着は着いた。
矢を一本食らわせたが、目の前にいるイカにとっては、
蚊程も効きはしなかったらしい。
しかも、その傷すら、既に塞がり始めている。

一方、レフの方はといえば、イカの攻撃により満身創痍。
たった二発ほど殴られただけだというのに、
戦えるような体力は、既に無い。

（逃げないと……）

それでも、手足と翼に力を込めて、
その場を離脱しようとする。

しかし、その考えを察知したのか、あるいは本能なのか。
イカの触手が素早く動き、羽ばたこうとした翼を絡めるように掴む。

「っ！？」

翼の動きを急に阻害され、動揺したところに、
更に複数の触手が手足にまとわりつく。
振り払おうとした時には既に遅く、手足と、
そして翼を拘束された状態になった。

「い、嫌っ…放して…！」

目の前にいる生物が、人語を理解できないと思われることは
明確なのだが、あまりの恐怖の為か、そんなことは彼女の思考の外だった。

そして、拘束されたままゆっくりと、
気持ち悪いぐらいにゆっくりと、宙に持ち上げられる。
眼前には、何を思考しているのか読み取ることも出来ない、
濁ったイカの目がある。

それが、彼女の恐怖を更に増長させた。

「う…うぅ…やだ……たすけて……だれか……」

涙を溢れさせながら、か細い声で助けを求める。
だが、その声を聞いてくれる者は、今、この場に誰もいなかった。
何とか脱出しようともがいてみるが、元々彼女は非力である上、
先の戦闘で打ちのめされている状態では、
全く拘束を解くには至らない。

そんな彼女の様子に、何ら抵抗を受けた様子もなく、
イカは残りの触手を彼女の身体に這わせる。

そして、「それ」が邪魔だと思ったのだろうか。





彼女の着ている服の襟元に触手を引っ掛け、勢いよく、