「…………あーもう、つっかれたー」

野営地に戻ってきた私は開口一番、情けない声を上げた。慣れない応急手当の真似事、エンブリオの複数行使に長時間の同調と、今日の私は少々働きすぎたと思う。今日はもう何もしないと、心に決めたいほどに。
今は私とナビしかいない。ヘイアンの様子がアレだったからミモザと共に置いて、早々に戻ってきたのだ。今の私はフリー。つまるところ素敵に無敵！

「ようやく好き勝手出来るよ、全く」

私の手元には、鹵獲したガーゴイルがいる。どういう原理で動いているのか、ちょちょっとシィルに手伝ってもらって調べるのだ。あわよくば重要な情報が引き出せれば万々歳。無いだろうけど。

…………と、まあ、そういう算段だったのに。
動きやがらねえのだ、このガーゴイル。あれだけイマドキノワカモノのようにがんがん喋っていたのに、ぴくりとも動きやがらねえのだ。

『残念だったな、倒れた時点で動力か何かが切れたらしい。今のそいつはただの石像だ』

「マジで」

とはいえ、動かしていた跡くらいは残るはず。再現さえ出来れば後は研究して自分なりに動かすだけだ。
出来ることなら自分で作って動かしたいが、その辺りは取れる情報次第だろう。この世界の者が作れて、私に作れない道理はないはず。

「いつ戻ってくるかもわかんないし、ちゃっちゃと調べよう」

そう声をかけて取り掛かった。後方から、ナビの呆れたような視線が突き刺さる気がしたけれど、そんなことは気にしない。
しばらく時間をかけて行う必要がある、山登りの最中には完了しないだろうけれども。

「…………」

ミモザは、大丈夫だろうか。そういえば、ヘイアンも様子がおかしかったような。

「いやまあ、何とかなるっしょ」


何ともならないな、と気付いたのは、二人が揃って帰ってきてからの話。

していなかったらしい。悪びれもせず言葉を続ける。

たとえ冗談でも当たったらかなり痛そうだ。
……特に防御の薄い自分は。プロテクターでもつけていれば別だが。

そうも言ってられないのが使いっぱしりの辛い所である。