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社長の日記１０日目

我らがアラビアンナイツのお頭、シエラ(1009)ちゃんが農場送りになった。

厳密に言うと、農場送りになったことは別に良い。
遅かれ早かれの問題だと思っていた。

「彼女ならもしかしたら……」という思いが無かったと言ったら嘘になるが、その期待もせいぜい２割程度。可能性として起こりうる８割のほうが起きた。それは全くもって当然のことで、ただそれだけのことである。


では何が問題かというと……

と、いう点である。

彼女の戦い方は見事だった。ミスらしいミスもなく、終始相手を圧倒していた。
傍目から見てても「負けはない」と思ったほどだ。

しかし、彼女は負けた。
敗因は必殺技がハズレた事。運が悪かったと言ってしまえばそれまでだ。
多くの者もそう言っている。

だが、真の敗因は別にあると見ている。
必殺技が外れたあとも勝ちの目が無かったわけではないからだ。
彼女は、途中回復に回ってしまったが、あのまま攻撃に専念していれた勝てた勝負だった。

つまり、『限界ギリギリまでシビアな戦術を立てれなかったこと』こそが彼女の敗因だとわしは考えている。
もっとも、それは結果をみた今だから言えることであり、実際にそのように戦術を建てるのは恐ろしく難しい。
しかし、それが出来ねばソロPKとして生き残れないと感じた。

どうやら、この道は思った以上に狭いようだ。
もっと楽な道だと思っていた。
『獲物はザクザク、賞金稼ぎはTOP層の少数だけ』という夢を見ていたが、
どうやら本当に夢だったと認識するべきだろう。
『獲物はそこそこ、どこに実力者が潜んでいるか分からない』というのが正しい認識のようだ。
本当に、今の今まで、様子を見ていたのは本当に正解だったと思う。

一度も負けないソロPKとして、最後まで歩き続けられる確率は１％も無いんじゃないだろうか。
少なくても「PKになってからどう立ち回るか考える」という発想ではやっていけないのは間違いない。

わしにこの道を歩めるのだろうか……ハッキリ言って、諦めるべきだとも思っている。
しかしどこかに、「この確率を跳ね上げるワンチャンスがあるんじゃないか」という気も漠然としている。

とにかく、今できる事は地力を付けること、そしてこの世界についてもっと知ることだ。
そう、シビアなまでに知らなければ成らない。それが必須条件なのは間違いないのだから。

社長は「ガハハ！」と笑いながらぬるい挨拶を終えた

ピアンタ・ディペントーラは料理ができない。
しかし彼女は長い人生の中でおにぎりを作る為の裏技を身につけていた。

お茶碗にご飯を盛る。もうひとつのお茶碗を逆さにして、蓋のように密着させる。

それをしっかり手で押さえると、そのまま上下に振る！
あけると中にはおにぎりが！

まんまるのおにぎりを小皿に乗せると、社長の元に運ぶ。