肌が痛い。戦いで傷付けられた肌が。
手が痛い。戦いで傷付けた手が。
耳が痛い。悲鳴と呻きに突き刺された耳が。
目が痛い。血と暴力に灼かれた目が。
歯が痛い。抗い難い運命を前に、軋ませる事しかできない歯が。
脚が痛い。自ら進むと決めた荊の道に、突き刺された脚が。
そして、何より。
心が、痛い。
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チホ 「……きっつ。一気に色々ありすぎだっつーの。」 |
起こってしまった、知己との決闘。
あの悲痛な感触が、未だに手に残っていた。
そんな皆藤達がいるのは、チナミ区とカミセイ区の境目。
その紅い光景に恨み言をぶつける。
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チホ 「………」 |
衝撃を受けたのはそれだけではない。
先程流れてきた、タクシードライバーの言葉を思い出す。
ナレハテは元は人?じゃあ初めてナレハテを潰したあの感覚は人を殺した感覚?
影響力が低いとナレハテになる?いつから?どれだけ低いと?
いずれ決闘が避けられなくなる?なら戦えない人間は?
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チホ 「……や、今はあれこれ考えてても仕方ないか。 それより、ウチがやらなきゃいけないコトは…」 |
CROSS+ROSEを開き、届いたチャットを開く。
『皆藤先輩!今、タクシードライバーのおじさんが…!』
『きゃ、キャプテン…!私たち、どうすれば…!』
『か、カナ、あんなドロドロになるのなんかヤダ…!』
届いていたのは、皆藤同様ハザマに飛ばされていた女子バスケットボール部の部員、その中でも戦闘に向かない異能や性格の者達からの声。
彼女達には決着が着くまでベースキャンプから出ないよう、皆藤が忠告していたのだった。
だがあの情報が流され、状況が変わった以上そうも言っていられない。
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チホ 「……… 大丈夫大丈夫。落ち着いて。今から影響力上げてけばセーフなハズだから。 タクシー乗って、道路にいるヤツらを狙って。あいつらなら大した事ないから、皆でも倒せる。 ここに来るときに持ってた武器みたいなの、捨ててないっしょ?」 |
ベースキャンプに残っていた部員に、とにかく安全に影響力を稼ぐ様指示を出す。
狼狽する彼女らを落ち着け、安心させる言葉掛けも忘れない。
一人ひとり。探索に出ている部員にも。
クオン「えない異能を持ってる部員は、ナレハテにならない様に、スタート地点近くの道路で影響力を稼ぐ。
……よく分かりました。了解です、皆藤先輩。
…ふふっ。」

[822 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[375 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[396 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[117 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[185 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
アンドリュウ
紫の瞳、金髪ドレッドヘア。
体格の良い気さくなお兄さん。
料理好き、エプロン姿が何か似合っている。
ロジエッタ
水色の瞳、菫色の長髪。
大人しそうな小さな女の子。
黒いドレスを身につけ、男の子の人形を大事そうに抱えている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
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アンドリュウ 「ヘーイ!皆さんオゲンキですかー!!」 |
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ロジエッタ 「チャット・・・・・できた。・・・ん、あれ・・・?」 |
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エディアン 「あらあら賑やかですねぇ!!」 |
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白南海 「・・・ンだこりゃ。既に退室してぇんだが、おい。」 |
チャット画面に映る、4人の姿。
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ロジエッタ 「ぁ・・・ぅ・・・・・初めまして。」 |
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アンドリュウ 「はーじめまして!!アンドウリュウいいまーすっ!!」 |
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エディアン 「はーじめまして!エディアンカーグいいまーすっ!!」 |
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白南海 「ロストのおふたりですか。いきなり何用です?」 |
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アンドリュウ 「用・・・用・・・・・そうですねー・・・」 |
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アンドリュウ 「・・・特にないでーす!!」 |
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ロジエッタ 「私も別に・・・・・ ・・・ ・・・暇だったから。」 |
少しの間、無音となる。
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エディアン 「えぇえぇ!暇ですよねー!!いいんですよーそれでー。」 |
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ロジエッタ 「・・・・・なんか、いい匂いする。」 |
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エディアン 「ん・・・?そういえばほんのりと甘い香りがしますねぇ。」 |
くんくんと匂いを嗅ぐふたり。
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アンドリュウ 「それはわたくしでございますなぁ! さっきまで少しCookingしていたのです!」 |
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エディアン 「・・・!!もしかして甘いものですかーっ!!?」 |
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アンドリュウ 「Yes!ほおぼねとろけるスイーツ!!」 |
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ロジエッタ 「貴方が・・・?美味しく作れるのかしら。」 |
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アンドリュウ 「自信はございまーす!お店、出したいくらいですよー?」 |
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ロジエッタ 「プロじゃないのね・・・素人の作るものなんて自己満足レベルでしょう?」 |
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アンドリュウ 「ムムム・・・・・厳しいおじょーさん。」 |
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アンドリュウ 「でしたら勝負でーすっ!! わたくしのスイーツ、食べ残せるものなら食べ残してごらんなさーい!」 |
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エディアン 「・・・・・!!」 |
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エディアン 「た、確かに疑わしい!素人ですものね!!!! それは私も審査しますよぉー!!・・・審査しないとですよッ!!」 |
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アンドリュウ 「かかってこいでーす! ・・・ともあれ材料集まんないとでーすねー!!」 |
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ロジエッタ 「大した自信ですね。私の舌を満足させるのは難しいですわよ。 何せ私の家で出されるデザートといえば――」 |
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エディアン 「皆さん急務ですよこれは!急務ですッ!! ハザマはスイーツ提供がやたらと期待できちゃいますねぇ!!」 |
3人の様子を遠目に眺める白南海。
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白南海 「まぁ甘いもんの話ばっか、飽きないっすねぇ。 ・・・そもそも毎時強制のわりに、案内することなんてそんな無ぇっつぅ・・・な。」 |
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白南海 「・・・・・物騒な情報はノーセンキューですがね。ほんと。」 |
チャットが閉じられる――