――『奥屋敷』。
それは言い方を変えただけで、詰まるところ座敷牢を意味する部屋。
それが、二人の――
凛音と楔奈が幼少期の半ばまで生活をしていた部屋。
少なくとも部屋の作りは悪いとは言える場所だ。
季節が訪れても、凍える事も、熱にやられる事もない。
一定に保たれた、それだけの場所。
最も、調度品などは殆ど置かれておらず、
幼い少女達の部屋と言う割には、少々殺風景が過ぎていた。
在ると言えば、身嗜みを整えるものや、箪笥。
座学の道具に、幾つかの難しい本。
後は寝具くらい。
あくまでも、鍛錬と勉学以外の時に使う為の部屋であり、
寝て、食事を取り、自主的に座学を行う為の部屋であった。
「ちぃ、ちぃちぃちぃ。ほら、こっちおいで、ご飯あげるから」
休息の日というものは大抵暇である。
それは良い事ではあるのだが、
この部屋では格子の合間から空を眺めるとかその程度だ。
勉学に勤しむというのも手ではあったが、早々にやる事を終わらせてしまうと、
如何しても手持ち無沙汰になってしまう。
本も、あるものはみんな読み終えてしまってるいるし、
だからと言ってやれる遊びはあるわけではない。
……だとすると、やれる事はこうして野生の動物を相手に戯れるだけ。
「……よしよし。良い子だね。ほら、ゆっくりとお食べ」
格子の間から伸ばした手へと降り立った二匹の雀は、
跳ねるように動いて、掌に乗った餌を啄ばむ。
小さな爪が確りと手の打ているという主張をし
柔らかな鳥の腹の毛はふわふわと感触が気持ちよい。
時折、移動して位置を変え、偶には喧嘩をしながらも、
餌を食べる姿は、やはり愛らしさがあった。
「ふふふ、まだあるから喧嘩しないで仲良くね」
その言葉が通じるのか、ちらりと雀の視線が此方へと向く。
ちょんちょこと尾を振りながら餌を啄ばむ姿は、
日頃の生活を少しでも忘れさせる瞬間となっていた。
「……りんちゃん、ほら。りんちゃんもやってごらん。今日は平気かもしれないからさ」
傍らで、少し離れていた妹へと楔奈は声をかける。
顔を見れば、眉間に皺を寄せて、両の手を胸の前で固く握りしめ
何か堪える様に難しい表情をしていた。
「え、で、でも……」
狼狽た声が小さく響く。
当然、自分もやりたい。やりたいのだが、
それをしてしまえば結果がわかっているからこそ我慢をしていたのだ。
「……大丈夫だよ。ほら、餌を手にのっけて――」
我慢はしていても、やりたいという欲求は抑えられない。
その証拠に、リンネはじりじりと距離を詰めていた。
その様子がおかしくて、けれど、可哀想で。
思わず苦笑を零してしまう。
手が取れる距離まで寄ってきた凛音の手を引いて、
その白い小さな手に餌を乗せる。
「……お、おいで。ごはん、美味しいご飯あげるから、ね?」
カタカタと小さく震える手が、楔奈の手の近くへと寄っていく。
途中までは、楔奈の手に在った餌に夢中だった二匹の雀の視線は
新たに差し出された手へと注がれて――
ばさり、と慌てた様に翼を打って、
逃げる様に空へと飛んでいってしまった。
「あ、あっ……!まって……!!いかないで!」
伸ばされた手の気配に怯え、
二匹の雀は慌てて飛び逃げたのだ。
か細い声を上げて、リンネはそう願ったが、怯えた雀たちに届くはずも無い。
――これがリンネの持つ〝異能〟の力の上澄みの部分。
そんな異能を持ったが故の余波だ。
その異能は〝死〟を齎すもの。
明確な死。概念すらも悉く死せる、破壊の手。
だから命があれば、それが当然で、正しい反応なのだ
姉である楔奈の手は、例え動物であろうと、
惹きつけられ様に寄って、手におさまろうとする。
それは何かとの〝紲〟を繋ぎ止める為に差し出される優しい手でもあって。
けれど、妹のリンネの手は、みんなが避ける。
怖いものから逃げる様に、みんな恐れてしまう。
だって、それは誰もが恐れる、恐れるべきものなのだから。
手を比べて見ても、形も色も同じだというのに
齎される結果は大きく違い、対照的であった。
「……仕方ない、仕方ない。
前より傍に寄れただけ、少しずつよくなってるよ。
また、来た時にやってみよう。次は餌も変えてさ」
実際の所、そんな風に逃げてしまった子たちは、二度と戻ってくる事はない。
味わった恐怖は命の危険と同義なのだから、当然である。
それでも、楔奈は宥めるようにリンネの頭を撫で叩く。
結果はわかっていても、諦めたくなかった。
自分の妹が大好きで、大切な姉の願いは、ずっと変わらない
ティーナ
もしかしたら、私や、あの子の様に、
この力を見て……知って……理解した上で。
――それを認めて。けれど、優しく否定してくれて。
そうして、妹が差し出した手を受け取ってくれたときには、きっと――

[822 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[375 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[396 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[117 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[185 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
アンドリュウ
紫の瞳、金髪ドレッドヘア。
体格の良い気さくなお兄さん。
料理好き、エプロン姿が何か似合っている。
ロジエッタ
水色の瞳、菫色の長髪。
大人しそうな小さな女の子。
黒いドレスを身につけ、男の子の人形を大事そうに抱えている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
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アンドリュウ 「ヘーイ!皆さんオゲンキですかー!!」 |
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ロジエッタ 「チャット・・・・・できた。・・・ん、あれ・・・?」 |
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エディアン 「あらあら賑やかですねぇ!!」 |
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白南海 「・・・ンだこりゃ。既に退室してぇんだが、おい。」 |
チャット画面に映る、4人の姿。
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ロジエッタ 「ぁ・・・ぅ・・・・・初めまして。」 |
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アンドリュウ 「はーじめまして!!アンドウリュウいいまーすっ!!」 |
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エディアン 「はーじめまして!エディアンカーグいいまーすっ!!」 |
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白南海 「ロストのおふたりですか。いきなり何用です?」 |
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アンドリュウ 「用・・・用・・・・・そうですねー・・・」 |
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アンドリュウ 「・・・特にないでーす!!」 |
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ロジエッタ 「私も別に・・・・・ ・・・ ・・・暇だったから。」 |
少しの間、無音となる。
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エディアン 「えぇえぇ!暇ですよねー!!いいんですよーそれでー。」 |
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ロジエッタ 「・・・・・なんか、いい匂いする。」 |
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エディアン 「ん・・・?そういえばほんのりと甘い香りがしますねぇ。」 |
くんくんと匂いを嗅ぐふたり。
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アンドリュウ 「それはわたくしでございますなぁ! さっきまで少しCookingしていたのです!」 |
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エディアン 「・・・!!もしかして甘いものですかーっ!!?」 |
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アンドリュウ 「Yes!ほおぼねとろけるスイーツ!!」 |
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ロジエッタ 「貴方が・・・?美味しく作れるのかしら。」 |
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アンドリュウ 「自信はございまーす!お店、出したいくらいですよー?」 |
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ロジエッタ 「プロじゃないのね・・・素人の作るものなんて自己満足レベルでしょう?」 |
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アンドリュウ 「ムムム・・・・・厳しいおじょーさん。」 |
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アンドリュウ 「でしたら勝負でーすっ!! わたくしのスイーツ、食べ残せるものなら食べ残してごらんなさーい!」 |
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エディアン 「・・・・・!!」 |
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エディアン 「た、確かに疑わしい!素人ですものね!!!! それは私も審査しますよぉー!!・・・審査しないとですよッ!!」 |
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アンドリュウ 「かかってこいでーす! ・・・ともあれ材料集まんないとでーすねー!!」 |
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ロジエッタ 「大した自信ですね。私の舌を満足させるのは難しいですわよ。 何せ私の家で出されるデザートといえば――」 |
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エディアン 「皆さん急務ですよこれは!急務ですッ!! ハザマはスイーツ提供がやたらと期待できちゃいますねぇ!!」 |
3人の様子を遠目に眺める白南海。
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白南海 「まぁ甘いもんの話ばっか、飽きないっすねぇ。 ・・・そもそも毎時強制のわりに、案内することなんてそんな無ぇっつぅ・・・な。」 |
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白南海 「・・・・・物騒な情報はノーセンキューですがね。ほんと。」 |
チャットが閉じられる――