
人が死ぬ、とはどういうことだろう。
怯えて後退る後輩……ブランブル女学院初等部の
制服を着た女の子を前にしながら考える。
例えば誰かに殺されたり、事故で死んだ場合。
車に轢かれる、高い場所から落ちる、溺れる。
感電する、火に巻かれる、刺される、首を絞められる。
そんな場合は、どうだろう。
無駄な抵抗だと分かっていても試みずにはいられない。
私の手に噛み付き、引っ掻いて逃れようとする後輩の
顔から手を離そうと力を込める。
数秒後、骨が砕ける音と共に彼女の頭蓋がぐしゃりと潰れた。
生暖かい血が手を濡らし、脳漿がぼたぼたと零れ落ちる。
潰れかけの眼球が地面で跳ねて私の靴にぶつかった。
致命の傷を負えば、人はその場で死ぬ。
そう、こんな風に。
砕けたのは彼女の骨だけではない。
指先の痛みがそう教えてくれる。
酷使しすぎた私の指も砕けてしまったようだ。
例えば、病気や老衰で死ぬ場合はどうだろう。
小さい頃お医者さんに教えてもらったことを思い出す。
よくあるイメージ、心臓が止まってご臨終、なんて
簡単なものではなくて、人の身体は少しずつ死んでいく。
臓器が機能しなくなるとか、手足が動かなくなるとか。
あれは身体が部分的に死んでいるのだと聞いた。
そうやって、身体の一部が死んで、また別の部位が死んで。
途中、致命的な部位が死んだら一緒に全身が死ぬ。
おかしな方向に曲がって動かなくなった指を見下す。
今ので私の手は『死んでしまった』みたいだ。
実感は、あるというべきか、ないというべきか。
痛みがあるのは『花』が私を苦しめるために感覚を
励起させているからであって、それを除いた自分自身の
感覚としては本当に何もなくなってしまっている。
命に関わる部分……心臓とか、脳とか。
そういう場所だけは生かしてくれているけれど、
それ以外の『私の一部』は『花』にとって本当に
どうでも良い、ということだろう。
強いて言うなら、動かなくなれば私を絶望させるための
材料が減ることに繋がる……のかもしれない。
みしみしと私の身体の中身が裂ける音がする。
生きて、正気を保っているのが不思議なほどの苦痛。
血と吐瀉物が混じって口から、鼻から滴り落ちる。
『花』は骨の代わり、筋肉の代わり、神経の代わりに
根を伸ばして私を操るようになった。
もう『私』として残っているのは、心だけかもしれない。
皮膚を突き抜けて身体の外に出た根は、私が殺した
大切な人たちの屍を引きずって運んでいる。
ご丁寧に、私が直視できない死体……殺したくなかった
相手の身体を選んでくれている。
諦めるな、と励まされた声がこんなにも遠い。
早く死にたい、早く死ぬべきだという気持ちを
妨げる呪いの言葉。
ああ、でも。
みんな、わたしを、しんじてくれたから。
まだ、まだ、がんばらなくちゃ。
なにを?
そう、いきないと、いけなくて。
どうして?
どうしてだったっけ。

[822 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[375 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[396 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[117 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[185 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
アンドリュウ
紫の瞳、金髪ドレッドヘア。
体格の良い気さくなお兄さん。
料理好き、エプロン姿が何か似合っている。
ロジエッタ
水色の瞳、菫色の長髪。
大人しそうな小さな女の子。
黒いドレスを身につけ、男の子の人形を大事そうに抱えている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
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アンドリュウ 「ヘーイ!皆さんオゲンキですかー!!」 |
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ロジエッタ 「チャット・・・・・できた。・・・ん、あれ・・・?」 |
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エディアン 「あらあら賑やかですねぇ!!」 |
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白南海 「・・・ンだこりゃ。既に退室してぇんだが、おい。」 |
チャット画面に映る、4人の姿。
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ロジエッタ 「ぁ・・・ぅ・・・・・初めまして。」 |
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アンドリュウ 「はーじめまして!!アンドウリュウいいまーすっ!!」 |
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エディアン 「はーじめまして!エディアンカーグいいまーすっ!!」 |
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白南海 「ロストのおふたりですか。いきなり何用です?」 |
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アンドリュウ 「用・・・用・・・・・そうですねー・・・」 |
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アンドリュウ 「・・・特にないでーす!!」 |
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ロジエッタ 「私も別に・・・・・ ・・・ ・・・暇だったから。」 |
少しの間、無音となる。
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エディアン 「えぇえぇ!暇ですよねー!!いいんですよーそれでー。」 |
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ロジエッタ 「・・・・・なんか、いい匂いする。」 |
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エディアン 「ん・・・?そういえばほんのりと甘い香りがしますねぇ。」 |
くんくんと匂いを嗅ぐふたり。
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アンドリュウ 「それはわたくしでございますなぁ! さっきまで少しCookingしていたのです!」 |
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エディアン 「・・・!!もしかして甘いものですかーっ!!?」 |
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アンドリュウ 「Yes!ほおぼねとろけるスイーツ!!」 |
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ロジエッタ 「貴方が・・・?美味しく作れるのかしら。」 |
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アンドリュウ 「自信はございまーす!お店、出したいくらいですよー?」 |
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ロジエッタ 「プロじゃないのね・・・素人の作るものなんて自己満足レベルでしょう?」 |
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アンドリュウ 「ムムム・・・・・厳しいおじょーさん。」 |
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アンドリュウ 「でしたら勝負でーすっ!! わたくしのスイーツ、食べ残せるものなら食べ残してごらんなさーい!」 |
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エディアン 「・・・・・!!」 |
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エディアン 「た、確かに疑わしい!素人ですものね!!!! それは私も審査しますよぉー!!・・・審査しないとですよッ!!」 |
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アンドリュウ 「かかってこいでーす! ・・・ともあれ材料集まんないとでーすねー!!」 |
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ロジエッタ 「大した自信ですね。私の舌を満足させるのは難しいですわよ。 何せ私の家で出されるデザートといえば――」 |
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エディアン 「皆さん急務ですよこれは!急務ですッ!! ハザマはスイーツ提供がやたらと期待できちゃいますねぇ!!」 |
3人の様子を遠目に眺める白南海。
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白南海 「まぁ甘いもんの話ばっか、飽きないっすねぇ。 ・・・そもそも毎時強制のわりに、案内することなんてそんな無ぇっつぅ・・・な。」 |
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白南海 「・・・・・物騒な情報はノーセンキューですがね。ほんと。」 |
チャットが閉じられる――