
…剣道は、好きだった。
それは確かな思い出。
この体に流れる血が本能的に闘争を求めていたのだとしても、それでも、紛れもなく自分から好きになった掛け替えのない行為だ。
結局、真剣に取り組んだのは中学の三年だけだったけれど…。
なにが好きだったかって?
…"神宮 シエル"は単純に負けず嫌いだったから。それで熱が入っちゃったんだろうね。
少し、私にも感染った気がするけど…。
それでも、やっぱり、彼女は彼女なりに誰かと競い合うのが好きだったのだと思う。
私は…。
私は、向き合えたんだ。
人と、正面から。
だから、好きだった。
別に、剣道である必要はなかったけれど、それでも、面向かって挨拶なんてするスポーツはうちの中学には少なかったから。
…そんな日も、ある日からなくなった。
ある日だった。
部活終わりに、呼び出されて。
……。
………。
やめようか。この話は。
まあ…その…汚されたって話だから。
ショックだったよ。
その日から学校も行かなくなったし。
だから、かな。
気付いたら、『何もなかった』んだ。
私のやることに意味が発生しなくなった。
勇気を出して学校にいっても、誰も私の目を見ない。
変わった髪色だと、注意を引くこともない。声もただ作業的な返事しか返ってこない。
私から見れば、世界という全てが機械的に映るように思えた。
けども、違う。
私が世界に融けていた。
誰にとっても普遍的で、ただ名字という名前だけが刻まれた。
誰も彼もが私に価値を見いださない。
それに私は、最初は耐えきれなかった。ただ、泣いて、叫んだこともあった。
けれど…"街の中"であってもそれは誰も届かなくて。
どんどん、心が擦り切れていくのを感じた。
純粋に精神が弱ったのもあったのかもしれない。
しかし、ソレ以上に自分自身が世界となるということはそれだけ自我というものも薄れて消えていく。
そう…私がこの街に来たのも、なんとか…なるかもしれないと思ったから。
あの街じゃどうにもならなかったけど、異能の街と呼ばれたこの街なら…きっと。
そう、願ったけど…ダメだった。
この異能はどの世界においてもそうあり続けた。
私は世界を漂う、名だけが移ろう幽霊のような存在に成り下がったのだ。
…この、侵略戦争が始まるまでは。
…聞いても、つまらない話だったでしょう?
私が結局、何かを大切に…誰かを大切に思えていたのならこうはならなかっただろうに。
私の心と愚かさが招いた結果。
それを、更に愚かな決断を積み重ねて。
…私は、誰かに裁かれたい。
そう、今は願い続けている。

[822 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[375 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[396 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[117 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[185 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
アンドリュウ
紫の瞳、金髪ドレッドヘア。
体格の良い気さくなお兄さん。
料理好き、エプロン姿が何か似合っている。
ロジエッタ
水色の瞳、菫色の長髪。
大人しそうな小さな女の子。
黒いドレスを身につけ、男の子の人形を大事そうに抱えている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
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アンドリュウ 「ヘーイ!皆さんオゲンキですかー!!」 |
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ロジエッタ 「チャット・・・・・できた。・・・ん、あれ・・・?」 |
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エディアン 「あらあら賑やかですねぇ!!」 |
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白南海 「・・・ンだこりゃ。既に退室してぇんだが、おい。」 |
チャット画面に映る、4人の姿。
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ロジエッタ 「ぁ・・・ぅ・・・・・初めまして。」 |
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アンドリュウ 「はーじめまして!!アンドウリュウいいまーすっ!!」 |
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エディアン 「はーじめまして!エディアンカーグいいまーすっ!!」 |
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白南海 「ロストのおふたりですか。いきなり何用です?」 |
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アンドリュウ 「用・・・用・・・・・そうですねー・・・」 |
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アンドリュウ 「・・・特にないでーす!!」 |
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ロジエッタ 「私も別に・・・・・ ・・・ ・・・暇だったから。」 |
少しの間、無音となる。
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エディアン 「えぇえぇ!暇ですよねー!!いいんですよーそれでー。」 |
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ロジエッタ 「・・・・・なんか、いい匂いする。」 |
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エディアン 「ん・・・?そういえばほんのりと甘い香りがしますねぇ。」 |
くんくんと匂いを嗅ぐふたり。
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アンドリュウ 「それはわたくしでございますなぁ! さっきまで少しCookingしていたのです!」 |
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エディアン 「・・・!!もしかして甘いものですかーっ!!?」 |
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アンドリュウ 「Yes!ほおぼねとろけるスイーツ!!」 |
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ロジエッタ 「貴方が・・・?美味しく作れるのかしら。」 |
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アンドリュウ 「自信はございまーす!お店、出したいくらいですよー?」 |
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ロジエッタ 「プロじゃないのね・・・素人の作るものなんて自己満足レベルでしょう?」 |
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アンドリュウ 「ムムム・・・・・厳しいおじょーさん。」 |
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アンドリュウ 「でしたら勝負でーすっ!! わたくしのスイーツ、食べ残せるものなら食べ残してごらんなさーい!」 |
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エディアン 「・・・・・!!」 |
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エディアン 「た、確かに疑わしい!素人ですものね!!!! それは私も審査しますよぉー!!・・・審査しないとですよッ!!」 |
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アンドリュウ 「かかってこいでーす! ・・・ともあれ材料集まんないとでーすねー!!」 |
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ロジエッタ 「大した自信ですね。私の舌を満足させるのは難しいですわよ。 何せ私の家で出されるデザートといえば――」 |
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エディアン 「皆さん急務ですよこれは!急務ですッ!! ハザマはスイーツ提供がやたらと期待できちゃいますねぇ!!」 |
3人の様子を遠目に眺める白南海。
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白南海 「まぁ甘いもんの話ばっか、飽きないっすねぇ。 ・・・そもそも毎時強制のわりに、案内することなんてそんな無ぇっつぅ・・・な。」 |
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白南海 「・・・・・物騒な情報はノーセンキューですがね。ほんと。」 |
チャットが閉じられる――