「あ…っ、
ああぁぁぁああああああ……ッッ!!!」
蘇る、ここ数日間の記憶……
ワールドスワップが始まってからこれまでの記憶が、この時になって初めて夜道の中に流れ込んでくる。
「そんな、私はなに……を?なにをしていたの?
なんで……嘘……嘘よ、こんな。こんなの何かの間違い……」
信じることなんて出来るはずがなかった。
この数日間、"私"は心からその騒乱の日々を楽しんでいたのだから。
元気に遊んで、無邪気に笑って、楽しみながら怒って、その全てにドキドキして。
輝くような世界。眩しい光。そんな、そんなもの……
平安京。
その建物は記憶の通り、変わらずそこに佇んでいた。
横に長い常識知らずみたいな変な建築物
記憶を辿って一部屋一部屋、表札を見ながら歩いて行く。
やがて自分の部屋だと主張する表札が見えてくる。
何かを書き足したような跡と、消した痕。
記憶にあるそれと寸分違わぬ情景は、
それが事実であったことへの確かな証明だった。
「こんな……ひどい……なんでこんな……」
存在しないはずの、降雪夜道ではなく"私"が過ごした日常。
そんな、そんなもの。
これ以上、一秒だって見ていたくはなかった。
だから。
私はその日の内に住居を撤去した。
全てを棄てて、後にはもう空き部屋しか残らない。
その場所を出ても私に行く当てなんてなかった。
もともとこの異能は生命を保障するもの。
私には身に着けるものも。食べるものも。住む場所だって必要ない。
異能だけで十分で、それ以上はもう、何も必要がなかった。
今回のは、恐らくあの時と同じ……
異能の成長
生命が危ぶまれると判断されたのだろう。
なんとなくだが記憶に残っている。
思い返せば不審なことだらけの雑な洗脳。
私に誰かを愛することなんて出来るはずもないのに。
異能の成長に伴って、生きる為にあんなことをさせたのだと直感的に理解する。
事実、連日感じていた締め付けられるような苦しみはすっかり霧散していた。
……その苦しみさえ、恋だと誤認して。
「
あんな……ッ!好き勝手ッッ!人の頭の中を掻き回してッ!」
洗脳の異能。その忌々しさに、地面に立てた爪が割れ、緑の液体が染みていく。
同じだ。あの時と。
だからこそ心の底から憎らしい。
『夜道は、死なないでね』
あの日の母の言葉が蘇る。
胸が張り裂け、視界が真っ赤に染まっていく。
……いい。……もういい。……もう、どうでもいい。
今さら私がどうなろうと。心底どうでもいい。
洗脳でもなんでも勝手にしたらいい。
どうせ、私は──死なないのだから。
父の愛と母の愛が私を生かし続けてくれている
「……アハハっ」
──だから私には
lˈʌvが何か、理解らないんだ──
夜道にはソレの読み方が分からない。
理解できないものは怖く、恐ろしい。
肉親の情さえわからないのに。
赤の他人のことなど、どうして信じることができるのか。
赤の他人のことなど、どうして愛することができようか。
渦巻く情念が業火と成って身を焦がす。
受けた愛情が理解できない故に愛を求め、愛に狂う。それは最早生き地獄に相違なく。
『例え、どんなに苦しくて。悲しくて。辛くて。耐えられなくて。もう嫌で。助けを請うて。殺してって。生きたくない。死にたいって。殺してくださいって』
どれほど死にたいと願っても。
決して死ねない生き地獄。
それが夜道にとっての愛であり、
私にとっての≪理解不能な音≫だった。
今日も父の呪いと母の呪いが私を生かし続けてくれている。
えぇ、僕も愛しておりますわ。お父様、お母様──
お嬢様の仮面を被り直し。
降雪夜道は"私"を捨て、僕として今まで通りにイバラシティでの生活を繰り返す。
今まで通りが本当なのかどうか。分からなくとも、関係なく。

[822 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[375 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[396 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[117 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[185 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
アンドリュウ
紫の瞳、金髪ドレッドヘア。
体格の良い気さくなお兄さん。
料理好き、エプロン姿が何か似合っている。
ロジエッタ
水色の瞳、菫色の長髪。
大人しそうな小さな女の子。
黒いドレスを身につけ、男の子の人形を大事そうに抱えている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
 |
アンドリュウ 「ヘーイ!皆さんオゲンキですかー!!」 |
 |
ロジエッタ 「チャット・・・・・できた。・・・ん、あれ・・・?」 |
 |
エディアン 「あらあら賑やかですねぇ!!」 |
 |
白南海 「・・・ンだこりゃ。既に退室してぇんだが、おい。」 |
チャット画面に映る、4人の姿。
 |
ロジエッタ 「ぁ・・・ぅ・・・・・初めまして。」 |
 |
アンドリュウ 「はーじめまして!!アンドウリュウいいまーすっ!!」 |
 |
エディアン 「はーじめまして!エディアンカーグいいまーすっ!!」 |
 |
白南海 「ロストのおふたりですか。いきなり何用です?」 |
 |
アンドリュウ 「用・・・用・・・・・そうですねー・・・」 |
 |
アンドリュウ 「・・・特にないでーす!!」 |
 |
ロジエッタ 「私も別に・・・・・ ・・・ ・・・暇だったから。」 |
少しの間、無音となる。
 |
エディアン 「えぇえぇ!暇ですよねー!!いいんですよーそれでー。」 |
 |
ロジエッタ 「・・・・・なんか、いい匂いする。」 |
 |
エディアン 「ん・・・?そういえばほんのりと甘い香りがしますねぇ。」 |
くんくんと匂いを嗅ぐふたり。
 |
アンドリュウ 「それはわたくしでございますなぁ! さっきまで少しCookingしていたのです!」 |
 |
エディアン 「・・・!!もしかして甘いものですかーっ!!?」 |
 |
アンドリュウ 「Yes!ほおぼねとろけるスイーツ!!」 |
 |
ロジエッタ 「貴方が・・・?美味しく作れるのかしら。」 |
 |
アンドリュウ 「自信はございまーす!お店、出したいくらいですよー?」 |
 |
ロジエッタ 「プロじゃないのね・・・素人の作るものなんて自己満足レベルでしょう?」 |
 |
アンドリュウ 「ムムム・・・・・厳しいおじょーさん。」 |
 |
アンドリュウ 「でしたら勝負でーすっ!! わたくしのスイーツ、食べ残せるものなら食べ残してごらんなさーい!」 |
 |
エディアン 「・・・・・!!」 |
 |
エディアン 「た、確かに疑わしい!素人ですものね!!!! それは私も審査しますよぉー!!・・・審査しないとですよッ!!」 |
 |
アンドリュウ 「かかってこいでーす! ・・・ともあれ材料集まんないとでーすねー!!」 |
 |
ロジエッタ 「大した自信ですね。私の舌を満足させるのは難しいですわよ。 何せ私の家で出されるデザートといえば――」 |
 |
エディアン 「皆さん急務ですよこれは!急務ですッ!! ハザマはスイーツ提供がやたらと期待できちゃいますねぇ!!」 |
3人の様子を遠目に眺める白南海。
 |
白南海 「まぁ甘いもんの話ばっか、飽きないっすねぇ。 ・・・そもそも毎時強制のわりに、案内することなんてそんな無ぇっつぅ・・・な。」 |
 |
白南海 「・・・・・物騒な情報はノーセンキューですがね。ほんと。」 |
チャットが閉じられる――