
「マジ!?チホ、永城第一のスカウトが来たの!?やったじゃん!」
「永城って、あの全国3連覇のあの永城!?」
「すごい!皆藤先輩、おめでとうございます!」
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チホ 「にひひ…もう皆知ってたんだ?ありがと!」 |
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皆藤 千穂 当時15歳。 弱小だった金井西中女子バスケットボール部をキャプテンとして全国ベスト4へ導いた。 |
一体どこから情報が出回ったのか。
自宅へスカウトマンが訪れた次の日には、皆藤の推薦の話は学校中に広まっていた。
教室に来て早々、自分の席の周りに集まっていた同級生やチームメイト、下級生に囲まれ称賛や激励、そして質問攻めを受ける皆藤。
「皆藤さん、本気でプロ目指してるって言ってたよね。このまま行けば、きっとなれるよ!
頑張って!」
バスケ部ではない友人から、そんな言葉を投げかけられる。
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チホ 「うん、頑張る。ウチ絶対、プロになるから!」 |
そう言ってニッと笑い、声を掛けた誰かに向かってVサインを送る。
そんな事をしていると、ふと時計が目に入る。
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チホ 「……あっヤバっ!次、理科室じゃん!そんじゃーね、皆!」 |
1時限目の授業が行われる場所を思い出し、教科書と筆記用具が入ったポーチを抱えていそいそと教室を後にする。
残った生徒達も、それぞれの教室へとバラバラと戻っていく。
……そんな中で、誰かの口から、ポツリと声が漏れた。
「……なんでスカウト貰えたの、皆藤だけなんだろうね。」
始業前の騒めきにその言葉は掻き消される。
しかし微かに、確かにそれは.
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チホ 「………」 |
皆藤の背中に突き刺さっていた。
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チホ 「…………ハッ!?」 |
がばっ、と起き上がる皆藤。
目に映ったのは中学校の理科室ではなく、壊滅し、赤く染まったイバラシティだった。
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チホ 「……やっべ、寝ちゃってた?」 |
獣将へ覚悟を見せた代償に受けたダメージと道中の疲労で、ベースキャンプに戻るなり気絶する様に眠ってしまっていたようだ。

[770 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[336 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[145 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[31 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
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白南海 「うんうん、順調じゃねーっすか。 あとやっぱうるせーのは居ねぇほうが断然いいっすね。」 |
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白南海 「いいから早くこれ終わって若に会いたいっすねぇまったく。 もう世界がどうなろうと一緒に歩んでいきやしょうワカァァ――」 |
カオリ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、橙色の着物の少女。
カグハと瓜二つの顔をしている。
カグハ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、桃色の着物の少女。
カオリと瓜二つの顔をしている。
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カグハ 「・・・わ、変なひとだ。」 |
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カオリ 「ちぃーっす!!」 |
チャット画面に映し出されるふたり。
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白南海 「――ん、んんッ・・・・・ ・・・なんすか。 お前らは・・・あぁ、梅楽園の団子むすめっこか。」 |
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カオリ 「チャットにいたからお邪魔してみようかなって!ごあいさつ!!」 |
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カグハ 「ちぃーっす。」 |
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白南海 「勝手に人の部屋に入るもんじゃねぇぞ、ガキンチョ。」 |
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カオリ 「勝手って、みんなに発信してるじゃんこのチャット。」 |
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カグハ 「・・・寂しがりや?」 |
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白南海 「・・・そ、操作ミスってたのか。クソ。・・・クソ。」 |
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白南海 「そういや、お前らは・・・・・ロストじゃねぇんよなぁ?」 |
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カグハ 「違うよー。」 |
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カオリ 「私はイバラシティ生まれのイバラシティ育ち!」 |
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白南海 「・・・・・は?なんだこっち側かよ。 だったらアンジニティ側に団子渡すなっての。イバラシティがどうなってもいいのか?」 |
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カオリ 「あ、・・・・・んー、・・・それがそれが。カグハちゃんは、アンジニティ側なの。」 |
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カグハ 「・・・・・」 |
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白南海 「なんだそりゃ。ガキのくせに、破滅願望でもあんのか?」 |
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カグハ 「・・・・・その・・・」 |
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カオリ 「うーあーやめやめ!帰ろうカグハちゃん!!」 |
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カオリ 「とにかく私たちは能力を使ってお団子を作ることにしたの! ロストのことは偶然そうなっただけだしっ!!」 |
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カグハ 「・・・カオリちゃん、やっぱり私――」 |
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カオリ 「そ、それじゃーね!バイビーン!!」 |
チャットから消えるふたり。
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白南海 「・・・・・ま、別にいいんすけどね。事情はそれぞれ、あるわな。」 |
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白南海 「でも何も、あんな子供を巻き込むことぁねぇだろ。なぁ主催者さんよ・・・」 |
チャットが閉じられる――