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うるさい、耳障り、騒々しい。

黙ってほしかった。

私は助かるべきじゃなかったなんて、
そんなの自分が一番わかってた。

父さんは医者だった。
生きていたら、もっと沢山の命を救っていた筈だ。

姉さんも将来を期待されてた。
頭も良くて、優しくて、色んな人から頼られて。
生きていたら、きっと父さんと同じく医者になってた。

私には、何もなかった。
何もないことを悲観してはいなかったけど。
それでも、自分より他の家族が助かるべきだったのはわかっていた。

価値がないから、価値があるものにならなければいけなかった。
そうでないと、家族のためにならないと言われたから。

姉さんにがっかりされるのだけは嫌だった。

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私が助かってしまったから。
姉は死んでしまった。
家族が皆いなくなった。

ずっとそう思って生きてきた。生きている。生きなければならない。
早くすべて終わってほしいと願っていた。

なのに、


「────私も、先生に『生きてほしい』です、笑っていてほしいです」



私なんかのために涙を零しながら、そう言ってくれる人がいた。
心を砕く価値なんか、私にはないのに。

でも、あの言葉でまた救われてしまったんだと思う。


「私、がんばりました」

「三久間センセには、その…感謝しているんです」

「――いつもそう在ればいいのに」

「今先生のお言葉聞いて更に勇気出ました。
　俺は俺のできることを精一杯やりたいです」


ずっとずっと、与えられてばかりだ。
私はあの子たちに、何を返せたのだろう。返せるのだろう。

そっと、枯れ朽ちたゼラニウムを胸に抱いた。





────まだ、鼓動は止まらない

▲	シェリル 「………………」 あなたの言葉が終われば──理由もあり繋いでいなかった映像を、繋ぐ。 ぼうっとしたような……それでいて、何かを思案しているような様子。 言葉を発さず、沈黙。しかししばらくの間の後に、これは口を開いた。

	シェリル 「──そうですか」 その言葉とともに変えられた表情は、どこか不敵な様子であった。 「あなたの陣営も、その思いも……とても良くわかりました。 　その上で"わたし"に対して信頼を置いていらっしゃるとは、嬉しい限りですねぇ」 「まずは誤解を生まないために、はっきりとさせておきましょうか。 　わたくしはあなたと同じく、イバラシティを守る立場です。 　あなたと相見える立場ではない。──そこは、保証します」

	シェリル 「しかしね、三久間先生。わたくしは気になるのですよ。 　あなたがイバラシティを守る理由。生徒を守る理由。 　それがどうにも、"義務"のように聞こえてならない」 「信頼を置いてくださっているのでしたら、ぜひご教示いただきたいものですねぇ。 　なぜ"守りたい"ではなく、"守らなくてはいけない"なのでしょうか？」

	シェリル 「──なんて、少々意地の悪い質問でしょうかねぇ。 ですがね、三久間先生。あなたが信頼をおいてくださったシェリル・ウィステリアという人間は、このように"面倒くさい"所で一杯なのですよ」 「それは私が一番良く分かっている。だから普段はあまり見せないようにしていたのですが……あなたが私という人間を信頼してくださっているのです。ならば私はそれに応えたい。そして、私自身もあなたという方を信頼しているからこそ──"面倒くさい私"で、接してみようと思いました」

	シェリル 「ですので、繰り返しになりますが…… 　面倒くさい私に信頼を置いてくださっているのでしたら、ぜひ、 　先程の私の質問に、お答えいただきたく」

▲	新 「……先生……？」 都合の良い言葉を、 耳障りのいい言葉を、 そんなこの場所には存在しないものを、 無意識のうちに求めていた犬は、実に惚けた声をあげる。

	ただ、無言でその場に立ち尽くす。 目を泳がせて、口を何度も開閉させて。 「お、れは……」 やっと声が出たと思えば、 その後に言葉が続くことはなく。 長い、長い沈黙が、その場を埋め尽くし、 どれほどの時間が経った頃か。 垂れっ放しだった尻尾が、僅かに揺れて。

	新 「……“奪わ、れたく、ない”」 聞こえた言葉のなか、 確かに自身が嘆願したものが、ぽつり、と しかし、確固たる意志のもとで、呟かれる。 「やっと出来た友達も、 　俺の人間としての姿も、 　……違う、そうじゃない、勝手に喋んじゃねえ！」 突然、大きく“何かに”怒鳴りつけて。」

	何かを哀願している、青年。 困り眉が、悲痛そうな表情を強調している。 「……俺はッ……！」 嗚咽を噛み殺した深呼吸を、一つ。 「俺の居場所を、奪われたくないッ！ 　住む場所がなくったってどうだっていい、 　この顔が、姿が、奪われて、 　誰にも認めてもらえなくなるのが、嫌だ……！」 極論、否定の世界に落とされてもいい。 ただ。 “もう、一人は嫌だ” そんなちっぽけな願いを、叫んだ。

▲	貴登子 「……少なくとも10人は来てるのか……無事ならいいけど……ともあれ了解です。 はい。気をつけます。 お互い、無事に帰りましょう……ホントに。」

▲	ヨナ 「他のみんなも無事でいるんですね、良かった…。 いつもありがとうございます、先生…優しく話を聞いてくれて。 一人じゃないから何とかなっているけれど、不安なこともたくさんで…何かあったら、その時は相談させて下さい。」

▲	「………？」 　血の鎧を纏うあなたに首を傾げた。

	しかし、見知った顔を目にすれば 　笑ってみせようとするだろう。

	「ご迷惑お掛けします… 　……でも、心強いです…」 「よろしくおねがいします、せんせい」

▲	レイジ 「中間報告です。 　こちらはそろそろ第一中継地点に到達します。 　該当座標の原生生物を駆逐し、橋頭保とする予定です。」 レイジ 「相良伊橋高校を目指されている件について、承知しました。 　こちらも、マシカ神宮への道の途中に母校に立ち寄る計画でしたので、継続した協力も可能だと思います。 　報告は以上です。先生もご無理をなさらぬよう」

▲	環？ 「センセーは優しいなぁ…。 ここの場所はまだ把握しきれてませんが、会えるといいですね。 それまでお互い…生き延びましょうね♡」

▲	誘うように、りん、と鈴の音が響いた。

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