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「ほら黒衣~。玩具で遊びましょうね~」
「おもちゃ、おもちゃ」
「あら~!ちゃんと”も”って言えるようになってるわ貴方!」
「はっはっは、███、はしゃぎ過ぎだぞ。」
「だってもう、嬉しくて嬉しくて……
本当に可愛い子よ。███様が私達に贈り物をしてくださったに違いないわ。」
「あぁ、本当に。きちんと信徒の事を見ていてくれる、素晴らしい神だよ。」
「お、もちゃ!おもちゃー。」
「あら!ふふ、ごめんね黒衣。ちゃんと渡しますよ~」
ピンポーン……
「あら?誰かしら?こんな時間に……」
「あぁ、僕が出るよ。君は黒衣と遊んであげてくれ。
はーい、今行きまーす。」
「ありがとう貴方。ふふ、黒衣~。お写真撮りますからね~」
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「お~可愛い坊主だね~。ちょっとこっち来な。」
「ぱぱ、ぱぱ………」
「お願いやめて!!子供には手を出さないで……」
「だったらさぁ奥さん、言う事聞いてくんない?
ちょ~っと服脱ぐだけでしょ。すぐ終わるじゃんね。」
「は、伴侶以外の前で妄りに肌は晒すなって、███様の教えが……」
「パパぁ……おきて、おきて……」
「ゴタゴタ抜かすんじゃねぇ!!!
ガキをてめぇの旦那と同じようにされてぇのか!?」
「ひぅ………うえぇぇぇぇえええええん!!!」
「ちっ!うっせぇガキだな!やっぱまずこいつから…」
「待って!!!
分かった……分かったから……貴方の言う通りにするから……」
「お、子供の為に健気だね~。
んじゃ、一緒に愉しんじゃおっか。」
「うえぇぇぇぇええ!!うえぇぇぇええぇ…………」
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「ほら見てみな黒衣くん~。
これが君のパパの腸だよ~。」
ズルッ…ズルルル…
「あぅ………うぇ…………」
「で、これが君のママの子宮。
こっから君が生まれてきたんだよ、神秘的~。」
ピチャ……ピチャン
「子供の作り方知ってるかな~?さっき沢山見ただろ?
女のここに思いっきりブチ込んで、ぐっちゃぐちゃにして……」
「こぷ………おえぇぇ………」
「うわきったねぇ!吐きやがった!
最悪だくそ、服についたし……タオルタオル……」
グチャッグチリ…
「うわ~変なの踏んじゃったきっもち悪~。
……ん?うわやべ、誰かくるじゃん。
じゃあ俺そろそろ行くから、黒衣くんはあの世で家族一緒にね~」
ザクッ
「ぁ…………!」
ビチャッ!ポタタタタ……
「ま、神様もあの世もありゃしねぇけどな。」
ばさり。
跳び起きた。ベッドが派手に軋む音が耳に痛い。
酷く濡れた衣服が気持ち悪くて、脱ぎ捨てる。
呼吸が乱れてる。苦しい。
時計を見れば、まだ深夜1時だ。
「……変な感覚ですね………」
毎日毎日同じ夢を見ては、起きる度に同じ感覚に襲われる。
心がざわついて、何だか痛みすら覚える様な、不思議な感覚。
でもそれは数瞬後には消えてしまって、心はいつも通り凪になる。
心の防衛本能だ
眠気も失せてしまったので、ベッドから立ち上がり。
机の引き出し、鍵のかかるそこに入れてある、一枚の写真を手に取る。
「……父さん、母さん………」
幼い頃に亡くなった両親が生きていた頃に、最後に撮った写真。
幼い自分と父と母と、楽しげに笑って横に並ぶ写真。
幸せそうだ。幸せだった。そんな記憶が仄かにある。
「……神、様……………」
夢の最後に聞いた言葉を思い出す。
神様はいない。
反芻するように呟いて、緩く首を振った。
「…………いますよ、いるんです………」
憔悴した目が、写真の中の両親を見る。
「だって、だって、二人とも信じてたから。
神様が居なかったら………馬鹿みたいじゃないですか………」
とある一家殺害事件の後、全国的に神を信じる人の割合が減ったらしい。
それはその一家が、敬虔な神の信徒であったから。
そしてその殺され方が、まるで悪魔が遊んでいったかのような悲惨なものだったから。
『神を信仰しても助からない』
そんな印象を抱く人が多かったと聞いた。
「います………いるんです…………」
再び呟く。
両親の事がとても好きだった。
一緒にいた時間は少なかったけれど、暖かい家庭だった。
そんな大好きな両親の、信じ仰いでいたものが。
事もあろうに、両親の最期のせいで否定されるのが嫌で。
だから神がいることを証明したかった。
神様はいる。
でも、人の事はほとんど見ていない。
だから助からない人もいる。
でも、神はちゃんと存在するから。
人の手の及ばない、どうしようもない悪が現れたときに。
きちんと罰を与え、その威光を知らしめてくれるのだ。
だから。
幸せで、神を信じてる人を狙う必要がある。
―――そういう人達を傷つけた方が、神の怒りに触れるだろうから。
出来るだけ慎重に、完全犯罪を心掛ける必要がある。
―――簡単に人の手で罰せられては意味がないから。
出来るだけたくさんの人を手に掛ける必要がある。
―――より多く被害者が居た方が、事件が大々的に発表されるだろうから。
最後に全ての記憶を奪う必要がある。
―――僕が死んだ時に、僕が奪ったすべての記憶は元の所持者に戻るから。
きっとそれが、神の奇跡によって記憶が戻ったかのように思えるだろうから。
自分自身が、どうしようもない悪になる必要がある。
―――そうして僕が罰を受ければ、それが神がいる証明になるから。
「…今日も頑張りましょうね。」
鏡の前で、いつも通りの微笑みを作り呟いた。
また長い一日が始まる。
これは
誰よりも神を毛嫌いしながら
誰よりも神を信じた
とある少年の物語。