薄暗い兵舎を行く。
あの子、レーネフィアはあれで自己完結しているから考える事もないようだけど、エンブリオのこの身では暇潰し紛れに思考を遊ばせる事もある。

この一揆はなにかがおかしい。
それは賞金首などのシステムのおかしさだとか、裏側への疑念だとか、そういう根本的な観念ではない、もっと概念的な物だ。

民を挙げての反乱は、いつの間にか異世界の民を巻き込んでの馬鹿騒ぎへと変わっている。
誰も彼もが熱狂し、酔い、熱を持った、そう、祭り、と言ってもいいかもしれない。
けれどその熱は表面的な物で、中身はもっとどす黒い何かが煮えたぎっている。
こうやって兵舎の奥へと進むだけでも、それは身を以て理解できる。

城の奥底から溢れ出てくる負の想念、欲望を帯びたエンブリオ。
立ち塞がる異形の者達。

華々しくに装飾された上面、それを引き剥がした底のグロテスクな異物。この事象の負の面が其処にはある。
最早これは一揆ではなく、別の何かに変わっているのではないか。
上っ面の熱と、底にある悪意は、この事象をとんでもない方向へ連れていくのではないか。

この兵舎の先に、其への答えがあればいいのだが。

目の前に立ちふさがる貴方に気づき少女は視線を向ける
その少女に貴方は名乗りを上げ、名を確認した

少女は不敵に笑みを浮かべながらも貴方に言葉を返す

水辺の攻略を無事に終え、感謝の意を示す青年である。
と、そこで「そういえば……」と小首を傾げた。

しみじみとそんな呟きをこぼすのである。