「お、いたいた」

　黒髪の童子が朱塗りの大柱に寄りかかって笛を吹いていた赤い髪の童子を見つけ、駆け寄っていきます。

「なんや？　お館様になんぞ用か？　」

　吹いていた横笛から唇を離し、赤い髪の童子が顔を上げ、黒髪の童子を見上げます。

「いや、鹿狩りに行くからお前を誘ってやろうと思ってな」

　見れば、黒髪の童子の背後には長い金の髪から大きな耳を覗かせた童子たちの姿が幾人か見えます。
　童子たちは皆弓矢を手にしています。

「鹿かぁ……うちは鹿より猪のほうがええな」

　赤い髪の童子がごくりと唾を飲み込みます。

「げー……猪なんて今の季節は特に臭くてまっずいじゃん」

「それを味噌と酒で頂くんが乙なんや……ま、今日は踊りの稽古もあるさかいに、ちょっとよう付き合えんわ」

　赤い髪の童子の言葉に、黒髪の童子は不服そうに……

「ちぇー……お前武人を目指してるのに、笛やら踊りやら、色々メンドクサイよなー」

「元々は巫女やしな……あんたはあんたでええとこのボンボンなんやし、もうちょっと文学やら、雅楽やらを学んでもええのと違うか？　」


「いいんだよ！　この山にいる間はしっかり武芸を学んで来いって言うのが父上からの命令なんだからさ！！　」

　赤い髪の童子の軽く揶揄の混じった言葉に、黒髪の童子はぷいと背を向けると、金の髪の童子に持たせていた弓を受け取り、森へと向かっていきました。

　赤い髪の童子はと言えば、その背中を見送った後、また、笛を吹くのを再開したのでした……。




シェイドを連れてきてもらう為に、ソルトと落ち合う約束をしていたらいちだが……

朱色の瞳に朱色の短髪、白髪交じり。
素肌にオーバーオール一丁の大男が、ガーデンテーブルを挟んでソルトと向かい合って座っている。

差し出されたらいちの左手に、ミラは自身の左手を差し出して握手に応える。

手を繋いだまま、ミラはきょとんと首を傾げてらいちの顔を覗きこんで尋ねた。

静静と丁寧にお辞儀を返したかと思うとパッと笑顔になりました。

　　　　　　　気合と共に目を見開き

　　　　　　　三人を見て

　　　　　　　背負った竹を肩越しに抜いた