遠い遠い、昔の話。
周りの大人達は、ついこの間の出来事だ、なんて言うかもしれないけれど。
それでも、私にとってはずっと昔の話。



――あの日。私は、家で独りきりだった。
お母さんは遺跡の探索に行ってしまって、お父さんはその日の数日前から別の街へ出かけてしまっていて。
夕方になったら帰ってくる――そう言い残したお母さんは日が沈んでも戻ってこなかった。
前にお母さん達が持ってきてくれた『機械』。
分解と組み立てをひと通り終えて。それを弄るのにも飽きてしまった私は、ベッドの上で、澄んだ夜空に浮かぶ三日月を見上げていた。

今頃、お母さんは遺跡に潜っているんだろう。
大丈夫かな、怪我してないかな、もしかして、家に帰れないようなことになってないかな。
幼心ながらにそんなことを脳裏に思い浮かべて、私は枕をぎゅっと握りしめていた。

それから、どれくらいの時間が経ってたんだろう。
気付けば、私は家の外に出ていた。
暗闇に、冷たい夜風が吹き荒んで、髪を撫でていく。
それが幽霊か何かの手に思えて、思わず身震いなんかして。
それでも、我慢して歩を進めてたっけ。

お母さんが探索に向かった遺跡の場所はちゃんと頭にあった。
その時、発掘されたばかりだった新しい遺跡。
森を抜けて、丘を越えた、その先。
大人の足なら、数時間。子供の足なら、きっともっとかかる。
それくらいは小さな私でも分かっていたけど、どうしても不安になって、待つことが出来なかったんだ。
ただ、それだけじゃなかった。
それまで、お母さんの言いつけはきちんと守っていたし、少し帰りが遅くなっても、ちゃんと一人で待っていた。
ただ、その日は「好奇心」が勝ってしまっていたんだ。
お母さんに早く会いたい気持ちもあった。でもそれと同じくらいに、新しい機械を早くこの目で見てみたい、
いつもお母さん達が行ってる遺跡ってどんな所なんだろう、そんな気持ちが先走っていたからそんな、一人抜け出すような行動に出たんだと思う。

それまで、あまり家から離れた場所まで、一人で行ったことなんてなかった。
況してや、あんなに暗い夜更けに出歩くだなんて、一度だって無かったんだ。
森に足を踏み入れて少し経ってから、家を出てきたことを凄く後悔して、後戻りしようって思い立ったことを覚えてる。
それでも、ここまで来てそのまま帰ってしまうのは何だか勿体無い気がして、私は歩を進めた。
「冒険者の血」に逆らえなかったのかもしれない。子供だからこその、見知らぬ地への純粋な探究心。
あと、ここまで一人で来たんだよ、とお母さんに報告して、褒めてもらいたかったのかもしれない。
今では、その辺りの記憶は朧げだけれど。
風が木々の葉を擦る音にびくびくしながら、闇のその先へ私は向かっていった。



-続く-

ちょっと首を傾げて、尋ねます。

アムルは、実は産まれて一年近くは、胸に布を巻いてかぼちゃパンツでうろうろしていた子でした。
晒していけない部分は分かっていても、肌を晒すぐらいなら別に、という感覚なのです。

照れてもぞもぞフードを直して。

今まで考えてなかった事に困惑しながら言葉を続ける。

頭で理解できてても感情で納得できない……そんな悲しい表情をしている。

それにネクターを独占しようとした影響か植物も元気が無いと話す。
静かではあったが日々は華やかしかったらしい。

過去の魔法大会なんかは凄かったらしいと語る。

この説明でエンブリオと分かるかは疑問だが意識を注意すればシャーベットの背後からは不思議と視線を感じる。

過去にそういった経験があるのか、何かのフリの如く念を押しつつ両手を広げた。

耳をピクピクと震わせながら

何やら残念そうだ。

手に取って見せるのは、薄い液晶タブレット。画面には色々と鮮やかな映像や文字が浮かび上がっている。

結構長いタブレットの解説。

シュガーは怨霊と会話をしています…