ルーアハ：
カミユの天使。<エンジェル>に区分されるエンブリオで、アルームで一人生き残ったカミユに自ら契約を持ちかけた。
視認はできるがその存在は曖昧で、実体として捉えることのできるのは、翼に沿って音も無く流れるごく緩やかな風のみである。
また、自身の契約者であるカミユには未だその姿を見せた事がない。
自分より弱いエンブリオの霊性を高め、天使の次元へと引き上げることができる。
カミユの契約するエンブリオは厳密にはルーアハそれきりであり、その他のエンブリオはルーアハの支配下にある。

「そう思って接してあげるのが、お互いに良いんじゃないかしら？」

いつものようにどこか暢気な笑みを浮かべて、そう彼女なりの答えを提示してくれた。

…

「なんだかカミユ君には遠回りになっちゃうけれど、ごめんなさいね。」

そう言って、今度は困った様な表情で頬を掻いた。

小さく、隣の人に聞えるかどうか、といったそんな声。
震える手をぎゅ、と握り締めれば獲物を構え。
不安げな表情を無理やり内へと押し込めれば、顔を上げた。

刃を構えるのをやめれば、はああ、と深く息を吐いた。
自分が無事なことに、仲間にも致命傷がないことに心底安堵をする。

倒れた相手に近寄れば、傷の度合いを知るために声をかけようとして――
問いかけは、途中で止めた。

ふるり。首を横に振る。
そのまま、結局何も言わずにその場を去った。

銀色のコインを手の中で弄ぶ。