小柄すぎる獣耳がよくわからない生き物を探しにきた様子だ。

　すこしだけ興味は持っているようだが、無理には踏み込んでこない。

一方そのころ。

義足に興味があるようで、ほうっておけばスカートの中によじ登っているかもしれない。

林檎を抱えた人形が、調理場へ向かうシルマリィの後を追い。

到底迷子とは思えないテンションで返事をしてしまったが気にした様子はない。
相手の目をしっかり観察する余裕もなくなっていた。

七輪からは魚の脂がパチパチと弾ける音。
煙と焼けた醤油の匂いが手招いているよう。

空腹と匂いとで理性が若干怪しい。
胡乱な目つきに見えるかもしれない。

ダメ押しとばかりに、理性に鞭打って竹串を通した照り焼きを一切れ女の目の前に差し出した。

無言で巨大な中華包丁を握っている……。

薄く血の付いた包丁を振り払う。

　　　（四人の男女が武器を持ち、現れる。
　　　　その顔ぶれには――賞金首の張り紙をチェックしているアレジッタなどなら、見覚えがあるかも知れない）

　　　　（そのうちの一人、一番背の高い男がおもむろにラァギットを指差し、声を上げた）

　

　　（男はあわてて自身の仲間の前にとびでる。両手を広げて振り回し、何かを止めているようだ）

フライバイの言葉に、ただ笑顔のまま巨大な中華包丁を構える。

焦る二人と戸惑う一人を見やり、対峙する四人に向き合う。
いい機会だ、そう思ったが戸惑う一人の様子がおかしいことに気づく。

ラァの様子に、ケチェは眉根を寄せる。

――目の前に現れたツギハギ顔の人物は、賞金首ではないのか？
――その賞金首と、知り合いなのか？

ツギハギの賞金首はラァの事を友達と呼んで、
仲間の賞金首たちに何かを訴えている。

賞金首たちが目の前に現れた時に、彼らに向けたようなうろんげな眼差しを、
ケチェはラァにも無言で向ける。



だが、またすぐに視線は、より警戒すべき四人の賞金首たちの方へと戻る。



問うよりも、優先度の高いことが今はたくさんある。

――ザッ……

羽を広げて、ラァに並んで隊列の前に出る。
前衛で仲間の一番の盾を担うのは、常であればラァの仕事だが……
今の様子を見るに、その役目を任せきるのに不安を感じたのだろう。

隊列の指示は、これも常ならアジがしてくれており
ケチェもそれに従うが、今は、その指示を仰ぐ暇もなさそうだ。

なので、独断で、前に出る。


野生の直感で、嫌なものを感じる。
ツギハギは仲間の賞金首を止めるようなことを言っていた気もするが…
どうにも、アレの存在は気持ち悪く感じる。

安心は、できない。