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その日は、朝早くから起きて荷ほどきをしていた。
“常月の世界”から持ち込んだ品はそう多くないが、とにかく嵩張る品が多い。

この人形たちもそうだった。
趣味である人形劇を自分で行う為の小道具なのだが、やはり腰までの身長とはいえ、そこそこの大きさのある人形を複数持ち運ぶのは厳しい。
次に世界を渡る時は何か手段を考えた方がいいだろう。(持ち運ばない、という選択肢は元から無かった)

荷ほどきを続ける。
荷袋から出てくる品を整理し、部屋の中へと配置していく。
最後に、空っぽの煤けた額を部屋の壁に飾り付けて終わった。

「……えぇ、中々の見栄えになりましたわね」

一揆が終わるまでは、この部屋で過ごす事になるのだ。
できるだけ部屋は快適な方がいい。

居心地の良くなった部屋で、今後の予定について確認する。
まずは、『この世界についてちゃんと知る事』。
何がこの世界にとって正しく、どうすれば民を導く事ができるのか。
そして最後に。『異世界からやってきた人間にできるだけ接触する事』。
これは……何だったっけ？
……まぁ、するべきだ、と認識しているのだからそうするべきなのだろう。


……それにしても。
こんな額、城から持ち出して来たっけ？

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例の額は、中に絵を飾らない限りは火事を起こさないらしい。
まぁ、これで機嫌を損ねる様なら我儘が過ぎるが。

『パガダマの焦げた額縁』。
飾られた絵と、飾った家を巻き込んで焼き尽くす“我儘な額縁”。
これを購入した場所については秘密にするが――購入した理由は、単なる好奇心からではない。

“この額縁なら、あの城館とこの身を焼いてくれるのではないか”と期待したからだ。
……この額縁がその期待に沿うかどうかは、元の世界に戻らないとわからないが。

レーネに命じている『異世界の人間への接触』も、全てその為だ。
何処かの世界には、私を完全に抹殺しうる術があるのかもしれない。

私は待っている。

――呪われたこの魂に、安息をもたらす日を。

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エンブリオの主として、自分の下につく者を誇る気持ち。
それは上に立つ者としては、持っているべき心なのだろう。

掛け値なしにそう思う。彼女に誇ってもらえるのであれば。
――『持ち主』に誇られるのは、『道具』の幸せだから。

言い淀む。彼女に誇れるようなモノは持っていないから。

レーネの話を聞くと、ぴくりと耳を動かして

とりあえず危機は去ったと理解したようだ。
とても安心した顔をしている。

急に大声で答えだした！

呼び止められる声に、再び首を向ける。

首を捻り、思案しつつ僅かな沈黙。