賞金首。

一揆軍において、不埒にも味方を襲った輩をそう呼ぶ。
貼り紙などで広く告知され、捕まえれば文字通り賞金が出る。
軍から提示される情報を見逃さなければ知らない筈の無いこと。

そのはず、である。

「それにしては、解せませんねぇ」

独りごちる男。
手元には賞金首情報の貼り紙。
ボロボロになって落ちていた1枚を拝借したものだ。
番号には14と65が記されている。

「濃い肌の方は判りますが、14番の女はどう考えても……」

そもそも男に賞金首に近づく予定は無かった。
利害が一致するならば密かに、程度。
それも力を蓄えてから。
それが1通の妙な手紙によって大幅修正を強いられている。

「あの時の名前、まさか全員同じ集団で賞金首とは思いもよりませんでしたよ」

受諾した後に調べて頭を抱えたものだ。
もっとも賞金首そのものに抵抗はない。
問題は周囲に知られることである。
そのため、過剰な接触は避けて自然な接近を心がけた。
焼き魚作戦を"自然"と見るかは人それぞれであろうが。

「それなのに、あの女……」

言語が全く通じないとは予定外もいいところである。
情報収集が甘かったと言われれば反論は出来ない。
しかし賞金首相手だと大っぴらに聞くわけにもいかない。


「……長引きそうですねェ」

5人全員の情報は頭にいれているものの、どうにも取っ掛かりが掴めない。機会を待つ他無さそうであった。

冗談めかして言うが口元に笑みが浮かんでいる。
どうやら、ちょっと好感度は上がったようだ。

横の少女を見つつ。流石に酷いことは出来ないので説教コースであった。