※すいません今回ほぼメッセ全滅です！！！
申し訳ないです！！！！













白ばむ山がだんだんと赤く染まっていく。
薄っすらとかかる紫の雲の、なんて美しさ。





暗くて、けれど明るい世界。
夜と、朝の、混ざり目。

あれは、何て例えればいいのだろう。

響く声は、――誘うようで。導くようで。











夢から、覚めた。

目を、開ける。
見上げればいつもの部屋の、天井が見える。

いつもの。
そう思える程度には、マァムブ内での生活に慣れてきたんだな、なんてしみじみしちゃう。
眠い目を擦りながら、欠伸をかみ殺した。


見ていた夢は、以前にも覚えがある。
私が最初にこの部屋で目がさめたときに見た夢、だけれど。

でも実は、これが”夢”でないことは何となくわかってる。

まず、声。
普段は全然理解できない言葉で話しているから最初はわからなかったけれど、あの声、あの言葉は、多分グリゴリさんだ。

そして、多分、この世界に来て最初の日。変な男の人に追われてたとき、だと思う。
医学的？な知識は全然ないから、完全に予想なんだけど、すごく怖かったし、パニック状態だったし、交通事故の前後の記憶が飛ぶ、みたいな、そんな感じで意識朦朧としてた私を、グリゴリさんは助けてくれたんじゃないかなって……そう、思ってる。

普段は怖いし、何かちょっと偉そうだな、とか……痛い事されたら嫌だな、なんて思うけど、……こーんな何の取り柄のない女の子を助けてくれるなら、ああいう風に怖くしてるのは、何か理由があっての事なのかも、しれない。
リーダーさんだから、強く在らなきゃ、みたいな。

とはいえ、まさかそんなグリゴリさんの夢を2回も見るなんて思ってもなかったから、正直ちょっと驚いてはいるんだけど。
何か妙な意識とかしちゃってるのかなー……私。
たしかに、まあ、うん、格好いいけどね。

他にも気になってる事はある。
どうして、あの言葉だけ、私が理解できてるんだろう、っていう事で。
もしかしたら、オウ君みたいに、実は私の言葉を知ってるけど黙ってる、とか……。

王様になるつもりがないとか何のことだろ。
正義は、正しい事を行うというその信念は。心は。持っていたら、駄目なの？

今度、直接聞いてみようかなあ、なんて考えながら、身支度をはじめる。

ああ、今日の朝ごはんは何にしようかなあ。
ここのところ天気も不安定なせいで、洗濯物も少したまってる。
リレッタさんやリセナちゃん、色々頼りになる人はいるけど、やっぱり10人を超すような大所帯だと大変だ。

前にテレビでみた、大家族一家、みたいなかんじ。

でも、今日はできるだけぱぱっと終わらせないといけない。




何せ、クリス君とのデートが、この後に控えているんだから！





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……デート、なんて大袈裟に言ってみたものの、実際のところはただの買い出しの連れ添いだ。
最近、少しだけ金銭面に余裕が出てきた、気がする。
雑貨ぐらいなら買えるぐらいの余裕が出来て、自分の手元にはいくらかのパワーストーンがある。

新しい本、1、2冊ぐらいなら買えるだろうかとクリスに付き添いをお願いしたのだが、一緒に買い物に行ってほしいとお願い、したのだけど。

……本当は。
言葉を学ぶ為の買い物だから、カミユ君に頼むのが良かったのかもしれないけど。
何だか、貴方の言ってる事がわかりたいんです！ってアレコレしてるの、知られるのちょっと恥ずかしい気がして。

いや、もちろん、うん、カミユ君だけが理由じゃないんだけど。



まあ、とりあえず。贅沢にも昼ごはんは二人で外食で済ませ。
目的の店に直で向かうのも芸がなく。だから、二人で街中を散歩の途中。

話しかけられてもやはりまだスムーズに会話をするにはぎこちなく、片言ですらまだまだわからない言葉の方が多い今、やはり無言の時間の方がどうしても多くなってしまう。
気に、かけてもらっているんだろう。街で目に付いたものの名前を教えてくれる、のはとっても嬉しいんだけど。

『パフェ』
『ケーキ』
『シュークリーム』

……私が目についているもの、何故か全部食べ物みたいで。
食い意地がはってるの現実を突きつけられるみたいで恥ずかしいったらない。
待って、なんて訴えても、ちっとも止めてくれないし。
クリス君は、ちょっとスパルタ傾向あるのはわかってるけど。
今は、覚えるのが苦なわけじゃないんだけど、ああ、もう、恥ずかしい。

そりゃ、まあ、食べたいけど。甘いもの、好きだし。
だけど、……食べたい気持ちと、食べたいって人に思われているというのは全く別で。
ああ、――こういう微妙な乙女心は、クリス君みたいな　男の人　に伝われ、なんて無理な話って、わかってはいるんだけどね……。

とはいえ、恥ずかしい、とはいっても。楽しいには楽しい。
ウィンドウショッピング、って世界が違っても、目が楽しい。やっぱりテンションだってあがる。
一人じゃない、というのも心強くて、ついついはしゃいでしまう私に、クリス君は付き合ってくれる。

私があんまりテンションあげちゃったせいかな。
通行人の目が、時折、痛かったり。……敵意、なんて大袈裟だと思うけど、冷たい眼差しを向けられたりしたのは、ちょっと、反省するべきかなあ、なんて、……ため息をつきながら、曲がり角を曲がって―――――――


『ジュリ……ッ！！　あぶない！！』

クリス君の、叫ぶ声がする。
あぶない。そう、たしか、少し、前にリレッタさんに教わった”危険”を訴える為の言葉。

けれど、何が？
そう、言いかけて、横を向こうとして。

振り向いた逆側。
今、正面を向けている頬に、サッ、と縦に熱が走った。

クリス君の表情が歪むのが見える。
頬が、熱く……ううん、痛い。
なんで？そう思って頬に手を伸ばそうとして――、……ぐいっと引っ張られる。クリス君側に倒れこみそうになるのを、何とか踏みとどまる。

つい、先ほど私がいた場所に。

大きな刃が、振り下ろされた。


『＊＊＊＊＊＊＊＊＊！！！』
『＊＊＊＊＊＊！』


武器を持つ、……2人の男。
早口で、何かをまくし立てて、此方に怒鳴りつけてくる。

言ってる意味は全然聞き取れないけど、あきらかに一つ、わかる事がある。

私たち、二人に。強い敵意を、向けられているという事だ。

ついさっきまでの、どこか白けたような目線に似てる気もして、痛いとか怖いとかいうより先に、どうして、という疑問だけが頭を巡る。

頬から、ぽた、ぽた、と血が垂れる。
マトモに着れるただ一着の服だけど、流石に自分の身が危うい時に服の心配なんてしてられない。

今まで、多分どこかの兵士さんや、忍者のコスプレしたお姉さん、……つまり、人間、と戦った事はあるけれど。
こんなに不意を突かれる形で、それもこんな街中で襲われた事なんてない。
一体どうして、何故、という混乱がどうしても先に来てしまう。

『ジュリ……！　＊＊＊！！』

クリス君が叫んでるのが聞える。
早口で聞き取れないけど、でも、その仕草で伝わる。

”逃げろ”とか、そんな風に言ってるのは、わかる。
私を庇って、2人組の前に出てくれるのも嬉しいけど、でも、こんな街中でしっかりと戦う準備なんて出来てないのは、……クリス君だって同じだ。
そんな人を置いて、一人で逃げるなんて私には出来ない。

一緒に逃げよう、と訴える為に服をぐい、っと引っ張るその間、襲ってきた二人組は、何か、チラシ？紙？のような束を確認し。
何かの、3桁ぐらいのパワーストーンの値段とかを口にしてるのだけはかろうじて聞き取れたけど、私と、クリス君を見つめる、何処かギラギラした、目線が、……怖い。すごく、怖い。

刃を持った男はクリスへと、剣ではなく、棍を武器とするもう片側の男が、再び武器を振りかざし此方へと襲い掛かるのが見えたが――、逃げる事も忘れ、呆然とその場に立ち竦む。
普段は、生き物か人かすらよくわからない何かに対してあんなにスムーズに立ち振る舞えていたのに、もう、棍の先は目の前まで近づいているのに――

『――……ッ！！！』

……痛みはない。
当然だ。……私の前に割ってはいった、クリス君が代わりに受けてくれた、から。

「クリスくん……ッ？！」
『ジュリ！＊＊＊、＊＊＊！！！』
「ごめ、ごめんなさい、私…っ、ああ…ッ！！」

下手をすれば骨だって折れてるかもしれない。
どうしよう。私が動けなかったばっかりに大怪我させた。
……どうしようどうしよう……ッ！！

『……っ…！』

舌打ちが、聞えた。
姿勢を低くしたクリス君が、相手に体当たりをして。
もう一人の男と共に姿勢を崩し、二人、派手にその場に倒れる。
急にふいた風も手伝って、相手が先ほど持っていた紙の束が、辺りに舞い上がった。

有無を言わさずに、舞い上がる紙の間をぬい、または払いのけて此方へと戻ってくれば、クリス君は私の手を取る。

『＊＊＊＊！』

逃げよう！
多分、そう言ってるんだと思う。実際に此方の返事も待たずにクリス君は走り出す。私も、それにつられて走ろうとして――……、ふわり、一際舞い上がった、その数枚に、一瞬視界が奪われる。

「ジュリ！！」

動かない私を叱咤するかのように叫ぶクリス君の声に、はっ、と我に返り走り出した。
路地を曲がり、わざわざ人気の多い場所に出て、先ほど殴られた怪我なんて何もなかったかのように、クリス君の手は力強くて。

顔に傷をうけ、血を流す女は、やっぱりちょっとこの世界の街中でも奇異の目で見られ、だから、私は俯いて出来るだけ顔を見られないようにして走る。



色んなショックで、喋る事が出来ない。声を出す事が今はまだ出来ない。

わけもわからないまま、一見私たちと同じような、人に襲われた。
クリス君に怪我をさせた。

それも、勿論あるけれど。

先ほど目に入った、舞い上がった紙に書かれていたものが、何だか酷く私の胸を締め付ける。
全部を見れたわけではないけれど、たまたま視界に入ったものが見えただけだけど。

アレは、あの書き方は、きっと、そう、指名手配の紙だ。
過去が舞台のドラマや映画、漫画とかで、見た事ある。

そして、その指名手配書に書かれていた人物は――……、
他ならぬ、私の手を引いて走る、――クリス君、そして以前、私を助けてくれたはずのグリゴリさん、だったから――。

ぴくんと反応すると、大きな体でのしのしと振り返る。

うさぎ、うさぎと言いながら、地面にうさぎの顔を大きく描く真似をし始めた。

レグルスが去っていったとおぼしき方向を指差し。
そのあと一呼吸おいて自分を指し示す。

アトと通して聞いた樹里の言葉に、サイネルは眉をひそめた。
樹里の緊張感のなさに加え、自分のやっていることを”お手伝い”と表現したこと。
サイネルの脳裏には、一つの考えが駆け巡る。

”恩人”を嘲るような言葉。
それを堂々と言い放つサイネル。対照的に、翻訳してるアトは冷や汗をかいている。

”いい事”を一つ言うたびに、樹里に向けて指を差す。
圧迫感を感じさせられるような、強い口調で放たれる言葉。

頭を下げる身振りをしてみせる。
伝わるかどうかは微妙なところだろうが、折角の暇つぶしの逸材をここで失うのは惜しいと考えて素直に自分の非は認めていく。

珍しくも言葉を濁しつつ自分の未熟さを恥じるように男は照れ笑う。
そう言い終えるとジュリの発した言葉をどこからか出した手帳に書き込んで解読の鍵とすることにした。
未だ、彼女がなんと言っているのかを解ってはいないが
故に楽しさを感じている。

　あれをこうして、これがこうなって、と考えながら喋っている為、少々会話がもどかしい。
　しかし、これは本当に日本語なのだろうか。どうも自分の知っている言葉とは違う気がする。
　自分も日本語を操らなくなって久しいから、忘れているだけなのかもしれないが。

　さきほどの反応からみて、この少女は妖術の知識に明るいわけでは無さそうだ。
　一般人であるなら、会話を掘り下げることに意味はなかろうと考える。

　とりあえず、彼女が此処へ辿りついた経緯を聞こうと思う、が、

　ツッコミどころが多すぎる彼女の呟きに、応対翻訳が間に合わない。
　いけない。このままでは自分が、色物好きの狐と誤解されてしまう！

　最後少々言葉が乱れてしまったが、真意は伝わっているはずだ。きっと。たぶん。
　これで「このセーラー服は日本の何県のもの」という説明が帰って来るならば、同郷確定である。
　――彼女が望むならば、帰還方法を教えることも出来るだろう。

メモとして書き込まれた文字。
それを読むことはできないが、言葉として読み上げられたのならば小さく頷く。
合っていると。

拙くも、発せられた言葉。
『おしえる　ください』
少し驚きつつも、軽く笑顔を返す。

すぐに真顔に戻り、そんなことを言った。
その後、指をさす物があればそれらについて、名前と用法についてを教えただろう。

突然、何かが舞う。
和やかに話していたはずなのに。
見れば、いつの間にやら、魔女の顔には狂気が宿っていて。

そこには、禍々しい形をした獲物が浮かんでいた。
死神を彷彿とさせる鎌。
ぼろぼろの赤い刃。ごつごつとした細かい装飾はよく見ると、びっしり並んだ人の顔。
大凡まともな人間の武器とは思えないそれが、空を切って飛んでくる。

唐突に笑いが止まり、言う。

遠くを見るような眼で樹里を見つめてから、朔は無言でコインを弾く。が、手元に返ってくると、横から鷲掴みにして浚ってしまう。樹里の怒りなどどこ吹く風だ。

ここからどう展開するべきか迷っている。
言葉が通じない場合の計画などない。
…つまり一回お休みのようだ。

　(→次週へ続く　　返信不要)

店に来るまでの道中、多少の会話を行って分かったこと。
それは『ジュリは多用されている単語は覚えているらしい』という点。
その意味まで正しく理解できているかは甚だ怪しいが、そこは単語を用いるシチュエーションと関連付けて補っているのだろう。
…そう、トガノは考えた。

ふと、ジュリの手を握る力が強くなっていることに気付く。
緊張か…それとも苛立ちの類か。

振り返り、ジュリの肩をポンポンと叩く。
トガノは普段の丁寧口調からはかけ離れた言葉を発していた。
意識して行っているのかは定かではないが、そのままジュリの顔を覗き込み。

ハハハと笑いながら言う。
普通ならば、これら一連の言葉で彼自身が本能のまま好き勝手に生きるタイプの人間だと気付けるのかもしれない。
しかし大半の言葉が通じないジュリに、トガノの姿はどのように見えているのだろうか。

ジュリと商品とに目を行き来させながら、ひょいひょいと気になったものを手に取っていく。
更には「余計なことは気にするな」と言わんばかりに幾らかの商品をジュリにも持たせた。

「欲しいものはどれ？」というニュアンスを伝えるためか、
ジュリの肩に手を乗せながら、もう一方の手で商品1つ1つをゆっくり指差して首を傾げて見せ、ジュリの反応を伺っている。

微笑みながら、

んー、とちょっと考えて。
しっぽを指差しながら。

自分を指差して。

助詞部分を強調しながら。

助詞とか形容詞伝えるの難しいなあと呟き。

どさくさまぎれに。

小さく、隣の人に聞えるかどうか、といったそんな声。
震える手をぎゅ、と握り締めれば獲物を構え。
不安げな表情を無理やり内へと押し込めれば、顔を上げた。

刃を構えるのをやめれば、はああ、と深く息を吐いた。
自分が無事なことに、仲間にも致命傷がないことに心底安堵をする。

倒れた相手に近寄れば、傷の度合いを知るために声をかけようとして――
問いかけは、途中で止めた。

ふるり。首を横に振る。
そのまま、結局何も言わずにその場を去った。

不安げな表情で、しばらくは意味不明な言葉を呟いたりしていたが。
ようやく相手に向き直れば、喋りなれない、かのような片言の言葉と共に、深々と頭を下げた。

コインが弾き上げられた。