昔から、何かを作るってことは苦手だった。

他人のやり方を真似てみても、まったく同じのものはできない。
本物以下か、自分でも感慨を持てないゴミにしかならない。


"創る"の方になると、さらに壊滅的だ。

だから、欲しいものがあるなら、完成品を横から掠め取る方が早い。早かった。昔は。






けれど何も作れないというのは、極論を言えば何も残せないのと同じだ。

固体が死ねばそれきりだ　他人の記憶は風化するし、
所詮、別人の色ガラスを通して見たもので俺そのものじゃない。

死ねばそれきり、全てがなくなる。精神も、肉も全てが。


焦りと苛立ちはそこが根だろう。理解はできても苛立たしいことに変わりはない。
何も残せないまま、"不運"で死ぬのは酷く癪な話だった。




そして、だから、何かを作れる才能がある奴は、総じて俺を苛立たせる。



"芸術家"って奴が俺は嫌いだ。

デキない、についてはそれ以上言及することもなく。
猫を撫でながら、新たに火のつけられた煙草の先端を眺めている。

そう零し、しばらく黙って中空をじっと見つめていたが、
黒猫の鼻の鳴る音に、ふと表情をやわらげ。

クリストファーの後ろから40cm程の人形がひょっこりと顔を出し。

小さく、隣の人に聞えるかどうか、といったそんな声。
震える手をぎゅ、と握り締めれば獲物を構え。
不安げな表情を無理やり内へと押し込めれば、顔を上げた。

刃を構えるのをやめれば、はああ、と深く息を吐いた。
自分が無事なことに、仲間にも致命傷がないことに心底安堵をする。

倒れた相手に近寄れば、傷の度合いを知るために声をかけようとして――
問いかけは、途中で止めた。

ふるり。首を横に振る。
そのまま、結局何も言わずにその場を去った。

不安げな表情で、しばらくは意味不明な言葉を呟いたりしていたが。
ようやく相手に向き直れば、喋りなれない、かのような片言の言葉と共に、深々と頭を下げた。

コインが弾き上げられた。