ぐ　ぐ　うぐぐっ！　うぐぐぐっ！

負けた！？負けたのか！？俺様が！？あんな雑魚共に！？あんな豚共にっ！？

ゆ　夢かこれは…！そんな…！どうして…！？なぜ…！！？

ふざけるな…！ふざけるなよ…！こんな骨になる前は一揆鎮圧科中隊長として百の荒くれ共を従えていたんだ…！

俺は強い…！何百人と殺したし…！幾つもの町村をぶち壊してきたんだ…！

認めるか…！認めるものか…！！俺は負けちゃいねぇ！！ただ　ほんのちょいとばかし運が悪かっただけだ！！！

そうだ　そうだとも　俺は負けちゃいねえ…！俺の運が悪くて　彼奴等の運が良かった

それだけだ　こんなもん勝ち負けの内に入らねぇ…！そうだ！そうだとも！俺は負けてねぇ！

あぁ…　それでもあの連中　俺をこんな所にぶち込んで　喜んでいるんだろう　金もたんまり入っただろう

ああ　腹が立つ　腹が立つ　俺がここで燻っているというのに　あの連中は……

糞っ…！糞っ！糞糞糞糞糞糞糞糞っ！！！ふざけやがって！！！舐めやがって！！

あの野郎共…！絶対に！絶対に絶対に！ぶち殺してやるぞ！！！絶対にぃぃぃ！！！


―――――ばすん


う゛ぅ゛ぅ゛…　痛　痛　痛　左目が…糞…　ああ怨めしい　怨めしい

呪いの小僧に　糞阿婆擦の鋸女　それと加えてあの一揆勢　　ぶち殺してぇ連中がどんどん増えやがる

早くここからでなくちゃあな…　"王"も "連中" も "此奴等" も　早く血祭りにあげなくちゃあな…


ここにぶち込まれてすぐ　農民共に　『黒丸を押さえられたのが一番の失敗だった』

今の俺は農民共の操り人形だ　ちょいとでも逆らえば　糸を斬られて俺は死ぬ

糞忌々しい　黒丸さえ戻れば　こんな所すぐに　血の池に変えて出て行ってやるのによ

「アラビアンナイツ……其の………聞い……？」

何か策は無ぇ……物……

「弱肉強……………、…………行きたい……声を……」

……ああ？

「お前たちに醒めない夢をみせてやるぜ」


"アラビアンナイツ"　　だぁ？

……新しい首領は小娘だと聞いていたが　まさか　あれが　そうなのか？


………けっ　何がアラビアンナイツだ　彼奴も所詮農場落ちの屑じゃあねぇか

間抜けが　こんな屑の掃き溜めで　どんな勇ましく吠えようが　そいつは負け犬の遠吠えにしか聞こえねぇよ…！

負け犬に　好んでついて行く阿呆はここにゃいねぇ　頭がお花畑の一揆の豚共なら別だがな　こんな呼びかけ無駄だ　無駄無駄

んなもんちょいと考えりゃ分かるだろうが　糞馬鹿が　手前ぇはそうやってきゃんきゃん吠えながら芋掘ってるのがお似合いだぜ









………………




…………ちょいと考えりゃあわかるはずだ　"同じ負け犬について行く阿呆はいねぇって事は"

彼奴はそんな考えも浮かばない程脳足りんなのか？

いや違う　小娘とは言えちったぁ名の知れた盗賊団の首領だ　ただの馬鹿にゃあ務まらねぇ

ならば何故此奴はあそこまで　自信たっぷりに　格好つけて　演説をぶちかましてやがるんだ？

そもそも盗賊団の首領が　"何故一人でこんな所にいるんだ？"


臭ぇ！　ああ　臭ぇ！　きな臭ぇ匂いがぷんぷんしてきやがる…！


今確信した…！　此奴は…！　この女は…！　何か大きな策の上で動いている…！

あの演説も！　この屑の掃溜めにいることも！　全て策略だ！　間違いねぇ…！

そうと分かれば俺がやる事ぁ一つ！　その策に　噛んで絡んで俺の都合の良いように利用する…！

うひゃひゃひゃひゃ…！　最近怪事ばかり付いていたがぁぁ！　ようやく俺様に運が向いてきたと言う事か！


小便散らして待っていろよ！？　俺を虚仮にしやがった糞っ垂れ共！！！

直ぐに舞い戻って手前ぇ等全員息の根を止めてやるぜぇぇぇ！！！

狂骨を蹴り飛ばし、アンナは一息つく。
その後、あたりを見回し、狂骨が動かなくなるのを確認した。

狂骨の、動かない頭骨を持ち上げ、言い放つ。

言い終えると、頭骨を放り捨て、去っていった。

狂骨の熱気で薔薇の花びらが散り、ひらひらと舞い上がる。

ひらひらと。花びらが降る中。

じ、っと迫り来そうな狂骨を見て。

少し、うなずき。

こらえきれず。笑いがこぼれた。

笑い声に振り返り、少女は小さく首をかしげる

男は数秒思案するように相手の赤目を眺め、

男が離れたところに停まっていた馬車を振り返ると、赤い髪の娘がふらりと立ち上がり、近寄ってきた。

娘は骸骨のような男の赤目を大きな眼でまじまじと見つめて、

スカートの端を摘まみ、軽く膝を曲げて会釈をした。

一瞬眉を顰めた男は、とぼけるように両肩を竦めて見せた。