人　　格　　再　　構　　成　　措　　置　　を　　施　　す








エレンが部屋の扉を開けると、その部屋は一面真っ赤に染まっていた。
床に広がる血溜りの中には、金髪の少女が1人、仰向けに倒れている。
少女のそばには、血に塗れた小ぶりのナイフが1本落ちている。
血はまだ乾ききっておらず、鉄の臭いが部屋を包み込んでいる。
その血が、横たわっている少女から溢れ出したものであることは明らかだった。

エレンは部屋の様子をざっと確認すると、ふぅ、と溜め息を1つつき、こう言った。

呼びかけられて、倒れていた少女が口を開く。

トゥルテ、と呼ばれた少女は顔を赤らめて、体を震わせている。
彼女の体の動きにつられて、ピチャリ、と血飛沫が跳ねた。

トゥルテは異常性癖者である。
彼女は自らの死すら快楽に変換してしまうほどの、極度のマゾヒストなのだ。
いや、それは最早「マゾヒスト」という範疇に収まらないかもしれなかった。

はぁはぁと息を荒くしながら、トゥルテは自分が何を行ったかをエレンに告げる。
目はとろんとしており、その焦点は合っていないようだ。
自らの行動を告白することで、より詳細に感覚を思い出そうとしているのかもしれなかった。

トゥルテが悦びにビクビクと体を震わせた。
トゥルテは一日に一度は快楽を貪るために自殺するが、どうやら今回は特別満足のいく出来だったらしい。

その部屋は床、壁面、果ては天井に至るまで血でべっとりとコーティングされていた。
部屋にこびりついた死の臭いも相当なものだ。
下手に泥棒などが踏み込もうものなら、嘔吐だけでは済まないに違いなかった。
もっとも、ここはエレンの許可なく立ち入ることが出来ない領域ではあるのだが。

その言葉に嘘はないのだろう、トゥルテは血でべっとりと汚れた左手をくんくんと嗅ぎながらうっとりとしている。
意識が戻っているのに寝転がったままなのも、少しでも長い間血に塗れていたいからなのかもしれなかった。

トゥルテはエレンの力で、いくら死んでも生き返ることができる。
快楽を貪るためだけに、トゥルテが見境なく自分の体を傷つけることができるのはこのせいだ。

エレンがそう言うか早いか、ヒュンという音と共にトゥルテの喉がぱっくりと切り裂かれた。

エレンはトゥルテの切り開かれた喉に近寄ると、傷口に手を突っ込んだ。
魔法によって最早凶器と化したとも言ってよいその手で、わざと乱暴にザクザクと切り進んでいく。

トゥルテは言葉にすらなっていない声を上げ続ける。
それは痛みによるものもあるだろうが、間違いなく、快楽によるものが大半を占めていた。
ズボリ、と血肉に汚れた両手をいったん引き抜き、エレンはトゥルテに問いかける。

喉を裂かれ、満足に声も出せないような状態の中、トゥルテは必死に声を絞り出した。
声と共に向けられた潤んだトゥルテの眼差しに、エレンはくすりと笑みをこぼすと、再び手を喉の中に突き入れた。

トゥルテの体がビクン、と跳ねた。












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Embryo No.1 "Tulte"

元々はメルンテーゼに多く存在する「ドール」という種の1人でしたが、
エレンによって精神を壊され、人格等を作り変えられてしまいました。
今の彼女は苦痛を愛する重度のマゾヒストであり、エレンの良き被験者です。
彼女もまた、エレンの被験者でいられることに悦びを感じています。

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少し寂しそうな表情を浮かべるが、すぐにイリスはエレンが自分の世界に興味を示したことに目を丸くした。

続いてみせたのは意外だ、というよりどこかホッとした表情だ。

こうしてイリスが口にする現状に対する懸念は、恐らく科学者であるエレンにも容易に想像がつくものだろう。その上で、一つも渋い顔を見せないところに、どこか安堵を感じたのかもしれない。

『それだと話が終わるより、キミが死ぬほうが先になってしまう』
そんな言葉を聞くと、じっと真面目な顔でエレンさんを見ます。

疲れたように、一つ溜息をついて。

こいつもあぶなかった

クマのぬいぐるみが、セツナを引き止めるかのようにぎゅっと掴む。
だいぶ揺らいでいるらしい。

自己主張するように、腕をぱたぱた振り回すクマのぬいぐるみ。

　怒っているというよりは感想を述べている感じ。目をぱちぱちさせて。

　明らかに小さな相手に対しても、おねえさん呼び。
今更ぴりぴりを自覚して手をひらひらさせながら、もう片方の手で水筒を取り出しました。
だばぁ。惜しげもなく手洗いにぶちまけて。

　意趣返し、と言う訳でもないでしょうが両手を合わせてピシュッと水弾を明後日の方に飛ばします。
大した威力はなさそうですが、小さな身体に受ければのけぞりそうな勢いでした。シャワー代わりにはならなそうです。

　おそらく、こんな悪戯妖精と対峙したことはないのでしょう。
それでもなんとかかんとかコミュニケーションを取ろうと、また無防備に果実を受け取りました。