思えばあれは、俺が小学の頃だったか…。
小遣いを持って友人たちと木材を買いに行って、買った木材で武器を作ったのが全ての始まり。
それを手にしてはちゃんばらしたり、何かイメージするものになりきったり、いかにも中二くさい台詞を口にしてみたり…、今思えば普通に子供の遊びや悪ふざけに思えるけ

れど…友人たちとの楽しかったあの頃。
そんな日々を過ごしていた自分はある日の夜…、弟や妹が寝ている間に一冊のノートに絵を描いていた。それには、その時の自分が夢見る空想上の自分自身を描いていた。
一本の長い剣を手に、悪い魔物を懲らしめるという子供らしい夢物語…、その夢物語の中の自分をイメージし、友人たちと遊ぶ時はその自分になりきっていたものである。
今思えば恐ろしく恥ずかしい台詞も口にしていたものである…、思い出すと頭が痛い。
友人たちとは当時、隣町の森の中へと冒険に行ったもんだ。森に行った日は帰りも遅くなって、母さんにはえらく怒られたのは今でも覚えている。
その時、俺の作った木材の剣も処分されてしまった。…まぁ、隠れてまた新しいのを作っていたんだけれども。
新しく作った剣は以前のものよりも長く、自分の身長を超える程度の長さはある。
剣には名前をつけた…、図書館で色々なファンタジー関連の本を集めては目に通して、気に入った名前を剣に名づけた。その名前が、コールブランドである。
木材で作った剣である分、不恰好ではあるけれど…それは己のイメージでかき消してしまえばいいと思っていた。
長い剣をこっそり持っていって友人たちと次の冒険へ…、今度はまた見知らぬ隣町を目指した。
偶然にもその隣町で偶然にも逃げてきた泥棒に遭遇し、俺たちは己の勇気を振り絞っては泥棒に立ち向かった。
正直怖かったのは確かだけれども、これまで経験したことのないそれは…俺たちにとっても大きな思い出となった。
泥棒も無事捕まり、お手柄だった俺達は隣町でも名前や顔を伏せられて話題になったりもした。
警察からもらった感謝状は今でも部屋に飾ってある。…代わりに、新しい剣も母さんに処分されたし、もちろん怒られた。
それ以来母さんがしばらくの間は俺の小遣いを厳しく管理していたが、それがなくとも森の中で拾った木の枝で変わりにしてしまえば早い。もちろん見た目はひどく不恰好だ

けど。
だけど幼い頃の俺は思い描いていた。いつか自分が本当に想像通りの自分になれたら、本当の剣を手に悪い魔物をこらしめる英雄になりたいと…。
かつて麗入茄町を異型の獣の脅威から救った、親父のように……。

その日の俺は元いた世界に一度戻り、昼食を食べながら俺の幼い頃について話していた。
ルーディが何やら俺の幼い頃について興味があるらしく、詳しい話を聞かせろとうるさかったためである。
まぁ…、別に相手に聞かせてもそれほど面白い話かどうかと言われると微妙ではあるが。

ぶっちゃけこいつ以外の相手にもあまり教えたくないことだけどなっ…、思い出すだけでも頭が痛い。
まぁ…そんな幼い頃もまた今の俺の糧になってるんだよなぁ…、皮肉なことに。
何気にコールブランドという名前は、ネトゲで作製した武器の名前によくつけている。
何故かぱっとすぐ浮かんでしまうほど、幼い頃によく口にしたその名前が染み付いてしまったのだろうかねぇ…。

確かに俺たちはその声を聞いた…、そして俺はその声を聞いた覚えがある。
間違いない…、この声はあいつの声だっ。
けど何故ここであいつの声が…、ここは確かに現実の世界であって夢の中ではないはずだっ。
それにルーディの様子からみても、その声はルーディにも聞こえていた。
どういうことなんだよ、これは……。

実体化…、以前夢の中で言っていたあれか。
イメージして名前を呼べとかなんか言ってたっけかなぁ…。
そういえばあの後、まだ全然それを実行していなかった、なんっつーかあの後も起きてからはリフィといちゃいちゃしてたし、その後もまぁ色々あったし。

その言葉を最後に、あいつの言葉はふっと聞こえなくなった。
ぐっすり眠りにでもいったかのように静かになったものである。
まさか現実世界でも声を聞くことになろうとは…、けれどルーディもこれで俺の話していた存在が確かなものであると判断した。
あの声を聞かされれば嫌でも信じざるを得ないだろう…、耳に入ってくる声とは確かにそれは違うものだったのだから。

けど正直な話、またぶっ倒れるのは簡便というのが本音ではある。
思えば初めてあの光が発現した時は見事に体力奪われたものだ。
…まぁおかげであの時は、リフィと二人っきりになるきっかけが出来たり、宿の一部屋でお互いの気持ちを知り合って愛し合うことが出来た訳だけれども。

期待、していなかったといえば嘘になる。
それは彼の言葉を聞いて見せる表情によって、とてもわかりやすくあらわれた。
つまりは、まあ、しょんぼりとしてしまったわけだが。

表情も感情も、すぐに切り替えるべく、軽く頬を叩き。1度だけ。

いくら誤魔化そうとしても、嘘が、つけない。
むにむにと頬を掌で押しながら、何とかガッカリとした表情を誤魔化そうとするものの、もういっそばらしてしまえと開き直り。頭を、相手に、下げた。

下世話なゴシップモードである。

レティは幸せそうにルーディを撫でている

アクスをぶんぶん振り回しつつ